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【出演者インタビュー】点と点が集合し、形作るものは【吉祥寺ダンスLAB. vol.6】

 ダンスの未知なる可能性を探求する吉祥寺シアターのオリジナル企画、「吉祥寺ダンスLAB.」。第六弾となる今回は、舞台芸術の新たな領域を開拓し続ける気鋭のコレクティブ・小野彩加 中澤陽 スペースノットブランクによる新作公演!上演を前に、出演者の皆さまにインタビューを行いました。その模様をお届けします!

写真左より、青田亜香里さん、黒澤多生さん、加賀田玲さん、大石英史さん、上山史華さん

────『言葉とシェイクスピアの鳥』はどんな作品ですか?
黒澤)とりあえず自分が何をするかは知っているみたいな感じです。
大石)それをしてはいるけど、それが作品にどうなるのか分からないですね。
黒澤)何になるのか分からない。点ばっかりあります。いずれこの線が一つの円になるのか、それとも全然違う謎の模様になるのかはまだ分からないですね。
大石)各々パーツを持っているけれど、それが作品にどういう作用を及ぼすのかは全然、全貌がつかめていないですよね。
黒澤)これやってくださいってことの1個1個のパーツははっきりしています。

上山)それこそシェイクスピアの時代みたいじゃないですか。自分の役のやることはわかってるけど相手のセリフは知らないみたいな。
大石)そうだったんですか。
上山)そうだったんですよ。シェイクスピアの時代、自分のセリフは貰えるけれど、相手のセリフは知らない状態でやっていたらしいです。
黒澤)それで言うと、数十羽で飛んでいる鳥も、先頭がいないんですって。誰が先頭になるのか決まっていない。それが今の稽古と似ているなって思う。
大石)確かに。誰が影響を受けて何をしているのかわからないけど、自分のすることは決まっていくみたいな不思議な感覚です。

青田)一部のメンバーは夏に城崎国際アートセンターで三週間レジデンスをして、一回クリエーションをしました。そこでやったことが必ずしも今回の上演に反映されるわけでもない。でも目に見える形じゃなくても、何かしらの影響としては現れているなというのをすごく感じています。情報量に差があるという話がありましたが、そういう差があるというのがポジティブに出ていると思います。

────稽古の様子について教えて下さい。
加賀田)レジデンス以外で、僕は今日初めて稽古に来ました。他の人にもタスクがあると思うんですけど僕には特になくて、僕は普通に稽古の様子は楽しいな、くらいに思っています。
大石)スペースノットブランクの二人から与えられたことをするというより、与えられたものを使ってみんなでクリエーションをやっていくという感じです。何に動かされて何を喋って、どう動いているのかわからないんだけど、コミュニケーションを取るために喋るし、動きを作る、ということをやっている。人とたまたま会って喋って、その人から思いもよらぬ情報を得て、じゃあそこに行ってみようとかっていう日常にある偶然みたいなものがクリエーションの場でも起きているような気がします。
青田)稽古をしている時間はいろんなことを考えるし、楽しいとか何かしらの感情があります。それがどういう感じでまとまるのか、大きい視点を持ちながら自分のタスクをこなすみたいな感じです。それが面白い所でもあるんですけど、難しいなあって思っています。
上山)色々タスクがあるからこその不自由さっていうのはあるんですけど、その中でお互いのアイデアが出会う感じがあって、それがすごい楽しいなって思います。

写真左より、深澤しほさん、青本柚紀さん、永山由里恵さん、中尾幸志郎さん、髙橋慧丞さん

────城崎国際アートセンターでのレジデンスについて教えてください。
永山)クリエーションに集中できる、めちゃくちゃいい環境だったと思います。周りに何もないじゃないですか。自然があって、温泉があって、おいしいごはんもあって。東京っていろんな雑念があるじゃないですか。
青本)あんなに目の前のことに集中できる環境ってないですよね。
永山)東京だと日々の生活とか、いろんな連絡が入ったりとか、気づかないうちに色々引っ張られているなっていうのを感じました。シャットダウンできている感じがしました。

────吉祥寺シアターや吉祥寺の街のイメージを教えてください。
中尾)井の頭公園の前に、ケーニッヒというソーセージ屋さんとドイツのパンが売っていて、そこでホットドッグとおいしいビールを買えるんですけど、それを公園で食べるのがすごい好き。
青本)私は三鷹と吉祥寺に時々行く古本屋さんがあって、三鷹の「水中書店」と、吉祥寺の「古書防破堤」。三鷹から歩いて、二つに寄って帰る。ついでの井の頭公園も散歩して帰るみたいなのはあります。
中尾)すごい文化的ですよね。
髙橋)結構歩きますよね。
青本)結構歩きます。のどかな感じで、歩いていて気持ちいいというか。
永山)中央線って駅によって全然カラーが違って面白いですよね。

永山)吉祥寺シアターでの公演に参加ってしたことあります?
深澤)私は初めてです。見に行ったりはします。
永山)私は青年団の『東京ノート』で吉祥寺シアターに来たことがあって、今回は久しぶりです。すごい良い劇場ですよね。外観もすごい奇麗だし、客席もちょうど見やすい。
青本)傾斜がしっかりあるから、前の人の頭が見えないのがありがたい。

中尾)地点の『グッド・バイ』を見たのを覚えています。
永山)私は青年団の『ソウル市民』を見たのが最初ですね。
青本)印象深かったのが、青年団の『日本文学盛衰史』。
深澤)青年団もそうですし、ダンスLAB.も。
中尾)吉祥寺ダンスLAB. vol.5の田上碧(ヴォーカリスト)さんと涌田悠(短歌を詠むダンサー/振付家)さんの『千年とハッ』という作品を見ました。田上さんの歌声がすごくて、声量も大きくて、劇場が声で揺れていた記憶があります。
青本)『千年とハッ』は吉祥寺が舞台ですよね。
中尾)そうそう、吉祥寺を二人で散歩して、言葉を集めたりしていました。
青本)だからちょっと似ていますね。スペノの「聞き取り」(注)に私たちが答えて、みたいな。
注)「聞き取り」=スペースノットブランクによる独自のテキスト生成手法。喋った言葉をすべて文章に起こし、テキストを構成している。
中尾)作家が一人で書くというより、話したことが素材になる感じとかは確かに似ていますね。

写真左より、奈良悠加さん、古賀友樹さん、野間共喜さん、吉田卓央さん、土田高太朗さん

────どんな方におすすめの作品だと思いますか。
古賀)スペースノットブランクの作品は、舞台をはじめて観る方と、舞台に飽き始めた方におすすめです。僕たちは創作する上で、おもしろいもの、見ていて楽しいと思えるものを作っていますが、普通のアプローチとは違うことをやったり、純粋にパワーが強かったりしているので、舞台に飽きてきた人にお勧めできます。初めて見る人にも、舞台って自由なんだ、何やってもいいんだって誤解していただけたら嬉しいです。でも普通に、舞台が好きな人も見に来て欲しいです。

野間)年齢とか性別とか人種とか関係なく見ていただきたいなとは思っています。僕が初めてスペースノットブランクを見た時、なんかかっこよくていいなって思いました。なんかかっこいいものが好きな人は、絶対に来てください。

吉田)プログラマーと、生活に余裕がありすぎて困っちゃった人におすすめです。スペースノットブランクの舞台、現象はプログラマーの考え方とか価値観に一致するところがあるような印象があります。かつ、そこの範疇を超えることが体験として得られる可能性がある。それから、最近、知り合いが「生活に余裕があってあんまり最近楽しくない」「何か始めたいな」と言っていて、そういった人が見たら新しい経験になると思います。

────初めてスペースノットブランクの作品を見たときの感想を教えてください。
土田)はじめて観たのは、『すべては原子で満満ちている』で、酸素が薄かった気がします。寝ているのか起きているのか分からない、すごくぼやけている、っていう感じでした。
古賀)重力がかかっていた気がします。普段感じないような圧力みたいなものが、上からズンとかかっているような舞台だったと思うので、酸素が薄いという表現はあながち間違っていないと思います。

奈良)最初に私がスペースノットブランクを観たのは、吉祥寺シアターで『バランス』(注)をやっているのを見た時です。その時にスポーツみたいだなって思ったので、爽快な気分になりたい人、気分転換したい人、新しいものに触れてみたい人におすすめです。
(注)吉祥寺ダンスリライトvol.2 参加作品

────皆さまへのメッセージをお願いします。
野間)これを見て下されば2024年は、たぶん素晴らしい幕開けを迎えることができると思うので、頑張ってここに来てください!お願いします。
吉田)見たことない人は、1度は見たらいいと思いますし、見たことある人も、見たらいいと思います。
古賀)15人の出演者と言うことで、もしかしたら出演者じゃない人も出てくるかもしれないけど、とても賑やかな舞台になると思います。気軽な気持ちでぜひ見に来て欲しいです。
土田)一緒に作っている方々が、素敵にクリエーションをされているので、ぜひそのピースみたいなものを見に来ていただければと思います。
奈良)人がたくさん出て、お祭り気分のようなものを味わえるかと思いますので、なるべく頭をからっぽにしてみて貰えれば楽しめるんじゃないかなと思います。

吉祥寺ダンスLAB. vol.6 小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク『言葉とシェイクスピアの鳥』
1月9日(火)19:00
1月10日(水)19:00
1月11日(木)19:00
1月12日(金)19:00
1月13日(土)13:00/17:00
1月14日(日)13:00
公演詳細:
https://www.musashino.or.jp/k_theatre/1002050/1003231/1005446.html
ご予約:(公財)武蔵野文化生涯学習事業団
https://yyk1.ka-ruku.com/musashino-s/sameShowList?en=378


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