wada fumiya

禍話リライトを執筆したり収集したり編集したり出版したりしています。

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  • 禍ジン

    禍話リライトと不思議な体験談をまとめました。

最近の記事

禍話⑪地蔵マンション(後)

「まあ、という話があったのがもう10年以上前だね。まだ語り伝えられているのか忘れられているのかは分からないよ。個人的には10年って長いように思うけどどうだろうね。そのマンション、車で15分ぐらいのところにあるんだけど、行ってみない?」  私は先輩が昔から心霊スポットに興味があることは知っていたが、好奇心で「行ってみよう」と言い出すとは思わなかった。 「面白半分で行くのはどうでしょうね。10年前の出来事だとはいえ」 「なあ、10年は長いか短いか、どっちだと思う?」  先輩は「部

    • 禍話⑩地蔵マンション(前)

      「あるマンションの部屋の中にお地蔵さんがあるって話があってね」 「部屋の中に?不思議だね」 「10年以上前の話になるんだけど。両親と一人息子仮にA君としておこう、核家族ってやつだね、それとお父さんとその息子こっちをB君としておいて、父子家庭だね。二つの家族があったんだけど、双方の息子が同級生だったんだけど、B君がA君を階段で突き飛ばしたかなにかして、打ちどころが悪かった、頭を強く打ったんじゃないかな、病院に運ばれて意識が戻らないくらい大きな怪我を負ってね」 「そりゃ大変だね」

      • 禍話⑨カモフラージュの首

         あまり親しくない人の家に呼ばれる、ということを経験したことはありますか。多くの人があるのではないかと思いますが、その時、照れ隠しに引き出しを開けたり、押し入れをを開けたりする人がいますね。開けない人の方が多いと思いますが、私は冷蔵庫を躊躇なく開けて怒られたことがあります。  それは、さておき、この話は東京在住の大人しい感じのシステムエンジニアのマンションの一室で飲み会をした時の話です。その部屋は立地が良いわりには家賃がびっくりするほど安く、近所に踏切があったので、これは巷で

        • 禍話リライト バミってた話

           短い話なので聞いて下さい。住んでいたマンションが事故物件じゃないのに事故物件になった話というか。  私はそのマンションの6階に住んでいました。セキュリティもいい加減な安いところです。交通量の多い道路に面していました。  ある夜、11時くらいですか、自動販売機に飲み物買いに行って、普段はそんなことはないんですが、ちょっとのどが渇いたなと思って、もう一回自動販売機に飲み物を買いに行ったんです。1時間後ぐらいでしたか。  交通量の多い道路の側ですし、自動販売機の明かりもあるので

        禍話⑪地蔵マンション(後)

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        • 禍ジン
          11本

        記事

          禍話リライト 黒いバンの話

           これは大きな駅の中にある居酒屋でたまたま隣席した若いサラリーマン風の男から聞いた話です。 「今はこうやって会社員生活を送っていますけど、若い頃は不良というかヤンキーというか、どうしようもないやつだったんです。俺。その時代の話なんですけど」  彼は急に語り始めた。だいぶ酔っているらしい。 「まあ、俺も不良グループの一員でしょっちゅう他の連中と集会してたんですよ。集会ってちょっとダサいですけど。で、俺の属しているグループと別の不良グループが最近集会場所を変えたって話を誰かが言

          禍話リライト 黒いバンの話

          停電(体験談)

           私の体験した話をします。不思議なというかよくわからない短い話です。  大阪の北部で大きな地震があった後、各地で震度1、2程度の小さな地震が頻発していた時期のことです。  いつものように夜の11時過ぎのことでした。晩ごはんを食べ、風呂に入って、本を読みながら、「さて寝ようかな」と布団に潜り込む直亜鉛のことでした。突然耳元で「停電」と囁かれたのです。中年男の声でした。私は「えっ」と思いあたりを見回しました。周囲を見回してみると、窓越しに見えるアパート既に明かりを落としており、

          停電(体験談)

          禍話リライト こいのぼりのうち

           ある廃団地にホームレスが住み着いているという噂がまことしやかに囁かれていました。廃団地は団地と言っても、鉄筋コンクリート造りの四階建てが四棟あるだけの小規模ななものです。ホームレスが侵入する姿を目撃した人はいないのですが、部屋のどこからか中年の男の声で童謡「こいのぼり」が聞こえてくるというのです。しかも冒頭部の「屋根より高いこいのぼり」の部分を繰り返し小さな声で口ずさんでおり、それが時々風に乗って聞こえてくる。その歌声がどの棟の何階から聞こえてくるかは、その時々で違っていた

          禍話リライト こいのぼりのうち

          禍話リライト サラマンダーの家

           サークルの先輩から聞いた話です。「サラマンダーの家ってのがあってだな」酔っ払った先輩がニヤニヤしながら語りだしました。「これが出るんだよ」「何が出るんですか」  サラマンダー?私には意味が分かりませんでした。後輩が口を開きました。「僕も噂だけは聞いたことはありますね。詳しくは知りませんけど。」「何だお前も知っているのか」「有名は有名みたいですよ」  サラマンダーの家。半信半疑というより馬鹿馬鹿しいという気持ちが上回っていました。「あんまり怖くなさそうですね、それ」「だったら

          禍話リライト サラマンダーの家

          禍話リライト 覗かれた家

           近所に夫婦が心中した一軒家がありました。今は誰も住んでいませんが、なぜか取り壊されません。解体するのにも金がかかるから放置しているという噂もあれば、心中した夫婦の霊が出るから取り壊せないのだとか、噂はいろいろありましたが、家の中を通らないと庭に出ることができないという奇妙な間取りをしているという噂もありました。誰か中に侵入した不届き者がいるのでしょう。  僕も興味本位で侵入してみようと思い立ちました。昼間だったら何事もないだろうけど、一人で行くのは気が乗らなかったので、友人

          禍話リライト 覗かれた家

          禍話②Wさんの部屋

           僕たち四人はいつも喫茶店でいつものように心霊スポットや都市伝説の話題で盛り上がっていました。僕らは「お化けはいる」という信念で結びついていたのでした。しかし、霊感を持っていたり心霊体験をしたことがある仲間は一人もいませんでした。だからこそ心霊スポットで恐怖体験を経験し、信念を内実を兼ね備えた確信へと変えたいという願望を共有していました。 「あそこの公団の14階の一番奥の部屋がWさんの部屋って呼ばれているのか?Wさんってお前、渡辺さんか和田さんかに決まってるじゃないか。セコ

          禍話②Wさんの部屋

          禍話①山主往生

          ある高校に事務員として働いていた女性から知人が聞いた話です。 その高校の裏山に一人のホームレスが住み着いていました。当時は学校のセキュリティもそこまで厳しくありませんでした。ホームレスは購買部が廃棄する食料が目当てで校舎をたびたび訪れていました。学校側も警戒をしていて何度も警察に相談しましたが、そのホームレスは警察の上層部の親族だかなにかで、取り締まりに消極的でした。ホームレスの行動は徐々にエスカレートし、廃棄された食料を漁るだけではなく、校舎に侵入して便所で用を足した

          禍話①山主往生