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「『組織のネコ』という働き方」を読んで

昨日、面白い本が発売されました。その名も『「組織のネコ」という働き方』。一気に読み終えてしまったのでまだ興奮さめやらぬうちに感想をシェアしたいと思います。

はじめにお断わりしておくと、僕はイヌよりネコが好きです。

今までイヌを飼ったことがないのが恐らくその一番の理由だとは思うのですが、飼い主に媚びるのではなく勝手気ままに自由にふるまうところや、お腹が空いている時にはむやみやたらとすり寄ってくるくせに「おおよしよし、そんなに僕のことが好きか」とエサをやっても満腹になったらプイ。あとは名前を呼んでも後ろ姿のまま面倒くさそうにしっぽだけ振っているだけ。でもそんなところもなぜか憎めなかったり。

ただ残念ながら、この本は好きなペットについての話では全くありません。

組織にはライオン、トラ、イヌ、そしてネコがいる

本書の著者である仲山さん(通称「がくちょ」)はとても変わった経歴の持ち主です。

まだご本人を知らないという方には、巻末の著者紹介の1ページ前にある「著者の歩み」をぜひ読んでみてください。一般的には楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を立ち上げ、出店者コミュニティを作った功労者として知られていますが、彼自身の楽天での経験や、楽天の出店者の方々との関わり合いから、次第にチームを作り上げていくプロセス、特に「組織の成長痛」を自身でも経験した原体験から、どうしたら成功するチームを作り上げることができるのかに興味を持たれるようになります。

そんなチームビルディングをご本職として「最高のパフォーマンスをあげるチームの秘訣」について日々研究されている仲山さん。そんな彼が以前から関心を持っている「新しい働き方」について、ビジネス系ウェブメディア「Biz/Zine」で連載されていた対談シリーズ「トラリーマンに学ぶ『働き方』」をベースに、さまざまな組織の中で働く人たちに対して「こんな働き方も良いんじゃない?」と提唱したのがこの本になります。

曰く、組織には4つの動物になぞらえたタイプの人がいる、とのこと。

組織に君臨するボス型のリーダーシップスタイルの「ライオン」。
そのライオンに畏怖を感じながらも組織に従順で自分の意思よりも社命を最優先して行動する「イヌ」。
群れることなく「メインではないところ」の現場に身を置き組織の際(きわ)のあたりをウロウロしながら、カオスの中で皆をかき混ぜバラバラになっていた人やコトをつないでいき再編集する、時には属する組織にとって重要なチェンジエージェントとなる「トラ」。
そして、そんなトラにはまだなれないものの、イヌのようにただ半ば盲目的に組織の論理になびくことには抵抗を感じ、自分の意思がしっかりあり会社にとって大事だと思うことを独自の目線で行おうとする、自由気ままな「ネコ」。

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組織のトラ

タイトルこそ「組織のネコ」とネコ推し感満載ですが、実はこの本の主役は「組織のトラ」です。簡単に一言で定義しづらいのですが、引用しつつ整理するとこんな感じ。

会社員でありながら会社の枠にとらわれずに自由に自己実現している人。会社の資産を活かしながら突出した成果を上げ、社命ではなく自分自身の使命に従って仕事をしていく。
メインストリームのライオンとは違いトラにはあまりボス感はなく、組織の中央にどっしり構えることはせず、現場が大好き。フラットな関係性を好み、組織の際あたりをウロウロしている。「際」は、いろいろなものが交わるカオス。そこで見つけたり、思いついたりした案件を持ち帰り、立ち上げる。ライオンみたいに「みんなをうまくまとめる」というよりは「みんなをかき混ぜる」感じ。凝り固まった組織がニガテで、そこにくずしを入れたりゆるめたりすることで、バラバラになっていた人やコトをつないでいくリーダーシップスタイルをとる。

実際の事例についてはぜひ本を読んでいただきたいのですが、会社に属するのではなく、会社と対等な立場で、役職にこだわらず、仕事を通じて接する相手のメリットを考えながら組織の際で動き、頭に浮かんだ絵を現実に変え新しいものを生み出していく。まさにチェンジエージェントそのものです。

印象的なのが、このトラを紹介するインタビュー。いずれも「〇〇という会社のXXさん」ではなく、あえてカタカナで「XXさんは」で始まります。その後、実はXXさんという人が今はとても有名な会社の要職に就いている人だったり、自治体の首長だったりすることがわかります。

前述の「組織のトラ」の定義の通り、外向けの肩書きはご本人のアイデンティティとしては必ずしも重要ではなく、流れの結果そうなったというような体で、読者もそうした「後付けの」肩書き抜きにその人となりを理解できることによって、何のバイアスもなくその方々の魅力を知ることができるようになっています。

組織のネコ

ところがこうした「組織のトラ」の人たちの働き方は突き抜けすぎていて、一見すぐには真似できそうもない。であれば、トラにならずとも、「組織のネコ」ならなれるのでは?

モヤモヤしながら働いているネコ体質の人「イヌの皮をかぶったネコ」の人たちに対して「まずは組織のネコとしてカミングアウトしてもいいんじゃない?」と仲山さんは提案します。

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この組織の「ネコ」から「トラ」へと進化することもできます。この本の中では、ネコの人がどうやったらトラになれるのか「ネコからトラへの道のり」をイメージしやすくするための考え方「加減乗除」による成長の4ステージのコンセプトにも触れています。

例えば「加」のステージ。選り好みをせずに量稽古のようにたくさんの仕事を手がける中で、スイッチが入り、仕事が面白くなって次の仕事が欲しくなる(仕事の報酬は次の仕事)。ところがここで仕事の量が不足していたり、お客さんが不在の中で仕事をしていたりすると、なかなか次のステージに行けない。大事なのは「上司に評価される」ことではなく「お客さんに評価される」こと。そんな加減乗除の最終ステージ「除」の結果、仕事の報酬として得られるのは「自由」です。

加減乗除

(出典:仲山進也さん著「組織にいながら、自由に働く。」)

自由とは

この本の中で、とても印象的なのが「自由な働き方」の定義。自らが「兼業自由・勤怠自由・仕事内容自由の正社員」というナゾの立ち位置で働かれている仲山さん。前書「組織にいながら、自由に働く」の中では岡本太郎著「自分の中に毒を持て」の中にある「人生は積み重ねだと誰でも思っているようだ。ぼくは逆に、積みへらすべきだと思う。」というくだりに共感し「やりたくて、得意で、喜んでもらえる仕事」だけに集中すべき」それ以外は捨てて自由になる方法を全力で考えることを勧めています。

一方で、その「自由な働き方」の前提となる自由とは「好き勝手にやれること」では決してありません。自由というのは自らが「やりたい」とか「意味がある」と思いながら働く、すなわち「自分に理由がある(自由)」状態であって、その対義語は、通常連想される「不自由・束縛・統制・強制」ではなく、他人がやれというからやる(他人に理由があって働いている状態=「他由」)であるというのです。
いまやっている仕事。そのきっかけを作ったのはたとえ他人であったとしてもそれに自分自身が取り組むべき理由を見出せるのであれば、それは「他由」を「自由」に転換できている状態だ、と。

この本とは直接関係ありませんが以前、別の方から聞いたことばで、

「自由には3つある。「お金」からの自由、「時間」からの自由、そして「組織」からの自由。これらの自由が満たされた後に、本当に自分に向き合って、今自分がしなければいけないことは何なのかを考える余裕ができる」

というような話を聞いたことがあります。最初の二つは、正直誰もが手にすることのできる自由ではないかもしれません。でも3つ目の「組織からの自由」は実は知らずのうちに皆その切符を持っている。ただ、多くの人がそれに気づいていないのだと思うのです。

最後に

仲山さんを知っている人であれば誰もがうなずくと思いますが、彼こそがこの本で語られている「組織のトラ」の代表格です。トラは孤独を好むところはありますが、必ずしも孤立することを望んでいるわけではなく、単に自分に似たような存在にあまり出会えずにいることが多いと彼はいいます。そんな彼が考えている「ネコ・トラのつながりをつくりたい」という考え、私もとても共感します。

前職の楽天時代からの盟友である仲山さんには、きびだんごの設立前から色々と相談に乗っていただき、彼のインプットなしには今のきびだんごは無かった、と言えるくらいお世話になりました。

そんなご縁もあり、本書に登場するたくさんの素晴らしい「組織のトラ」の中には以前直接お会いしてお話を伺ったことのある方々もいて(都竹淳也さん、伊藤大輔さん、竹林一さん)、当時のことを思い出しながら楽しく読ませていただきました。

ちなみに私たちが運営する「Kibidango」のインスピレーションの源泉である「桃太郎」の話の中には残念ながらライオンもトラも出てきませんが、なぜかKibidangoのイメージストーリーの中には「ネコ」が登場します。

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そのためかどうかはわかりませんが、私たちの会社(きびだんご株式会社)の中にもなぜか「トラ」「ネコ」気質の人たちが普通よりも多い気がします。いや、これはむしろ確信ですが、ほとんどトラとネコなんじゃないかと思うのです。文中で「組織の変人」と揶揄される組織のトラ・ネコですが、そんな人だらけの会社は一見カオス。側から見るとまるで動物園のように見えるかもしれません。

ただ、自分がネコ好きだから、ということとは全く関係なく、そんな組織がとても良いと思っています。少なくともチェンジエージェント「候補」のネコたちがたくさん生息する組織であれば、変革を起こしつつも、自律して成長できる組織を作れるポテンシャルは普通の会社よりもあるのではないかと思うのです。

まつざき

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