コーヒーに合うと言われると油断する
やってしまった、と思った。
おいしい和菓子をいただいた。「コーヒーに合います」と言われて。
コーヒーに合う和菓子なんて、珍しいな。緑茶よりもコーヒーなんだ、と思った。
疑いもせずに、いつものコーヒーを淹れてから、和菓子にかぶりつく。
そして、やってしまったと思った。
私は、嗜好品にうるさいほうだと思う。身体に余分なものだからこそ、その素材を一番おいしい形で味わいたい。
食べものも、飲みものも、どちらもだ。
コーヒー豆も、茶葉も、店頭に置かれているすべての香りを嗅いで選んでいる。香りを何往復も嗅いでいると、何人ものお客さんが「先にいいですか」と商品を決めて帰っていく。自分が変態だという自覚はある。
コーヒー、紅茶は3種類以上、緑茶は2種類以上、ほうじ茶は厳選したものをストックしているし、今は金銭的に無理だけど、欲を言えばハーブティーもいくつか置いておきたい。
そのときの気分や、食べものに最適なものを合わせたい。食との出会いは、いつも突然だ。だから、受け入れ態勢は万全にしておかなければならない。
いつもであれば、お菓子をひとくち味見してから、飲みものは何を合わせるか決める。
このときは、コーヒーならば何でも合うと油断してしまった。
完全に和菓子とコーヒーの香ばしさがキャラかぶりしてしまい、もったいないことをした。このとき、手持ちの最適解は、やはり緑茶だった。
コーヒーの中でも緑茶の香りに近い、さっぱりとしたものであれば、相性がよかったのだろう。深煎りのがっつり苦めなコーヒーを選んだのが、さらに失敗だった。
豆から挽いて液体になってしまった後。そこから方向転換するのも面倒で、そのときはそのまま味わった。和菓子もコーヒーもおいしいものだったからこそ、悔しい。
もう2週間ほど前の話なのだけど、未だに引きずっている。
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