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高田明典「『私』のための現代思想」を読んでみての感想

こんにちは、カオマンガイコダイラです。

自殺とは、悪なのでしょうか?
不思議な新書を読んだので、感想を書いてみました。光文社新書の高田明典著「『私』のための現代思想」です。

この本は、ヴィトゲンシュタイン、レヴィナス、アガンベン、ハイデガーなど数多くの思想家の考えを用いながら、論理的に正しい自殺と正しくない自殺を考えていく不思議な本です。まず作者の経歴が不思議です(文学修士→工学博士単位取得)。考え方も自分に似すぎていて不思議でした。

結論としては、「楽になるための自殺」は論理的に正しくないとなります。一方で、「私」を正しい場所(自分が希望し、正しいと思える場所)に置くための試みは数多くすることができるため、自分が自分であるために行う「正しい自殺」は最後の手段とできます。

作中では、正しい場所は自分の存在を引き受けてくれる他者と創り出していくものあります。その意味では、他者を「モノ」としか見ていない人がはびこるこの世の中で、正しい場所を見つけられない人が多いのも納得できると感じました(相手に自分の存在を引き受けてもらえないのだから)。ゆえに生きづらい人は増えつつあるのでしょう。

また、何が正しいかはやってみる前に判断するのは難しいという記述がありまして、自分の過去(就職や転職時などなど)と重なりました。その時は「正しい」と思い込んでしまうのですよね。なお、作者が用いる「正しい」は、「論理的に」という条件が付く場合を除き、「私にとって」正しいという意味で用いられています。決して「社会にとって」正しいという意味ではありません。

社会的には「自殺は(無条件に)悪である」とされていますが、その根拠は誰も教えてくれません。この本は決して安易な自殺を推奨する本ではなく、その点で自殺とは何かを考えたい人、私とはなにか知りたい人、生きづらさを感じている人に読んでいただきたい本です。

ただ、今人生がうまくいっていて、幸せでもある人は読まない方がいいでしょう。今いる自分の場所や生き方を見失ってしまうかもしれませんから。

#散文 #書評 #新書 #自殺 #社会

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