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KH、素直になる

 昼間の曇天から雨を恐れて、結局この連休の最終日、一歩も外に出なかった。悔しかった。祝日という天からの贈り物に対して、僕はただ有意義さをもって応えたかっただけ。というのに、なぜ天は我々に試練を課すのであろうか。
 どうも、濡れない男KHです。雨は嫌いです。

 昔の話、まだ僕がサンタクロース爺の訪問を心待ちにしていた頃である。とはいえ小学三年の時分、いまにして思えば仲の良い友人たちは「サンタ」=「〇◯」真実に辿り着いており、ただ僕だけが「サンタ」=「サンタ」の幻想に惑わされていたようだった。
 とにかく、KH宅に訪れるサンタはまったく御節介も甚だしい爺であり、新発売のゲームを置いて即帰ってくれればよいものの、合わせて算数ドリル・漢字ドリルを数冊セットでおまけしてくれるのだ。
「あら、勉強しなさいってことやねぇ」
 目元に笑みを浮かべながら、母は頷く。
「いや、これは他所の贈り物を忘れて行ったんやと思う。僕が手を付ける訳にはいかへんよ」
 
苦笑しながら、僕は首を横に振る。
「そのゲームを忘れて行きはったんやない? ほら、あんた二学期の成績も悪かってんから、欲しい物がそのまま貰える訳ないわ……」
 
目元に笑みを浮かべながら、母は腕を組む。
「だからと言って、それで全然欲しくないモノを貰っても困るわ。親切の押し売りやわ」
 
苦笑しながら、僕は額の汗を拭く。
「あんた、ええ加減にしときや」
 母は、まだ笑みを浮かべているのだろうか。苦笑した表情のまま、恐怖で身体が固まってしまった僕には、頭に平手打ちの衝撃が襲いかかってもなお、その答えが分からなかった……。

 まぁ、他人にとっては下らない話だろうが、雨の祝日になると、いつだって僕は当時のことを思い出してしまうのである。
 なぜ、良い物を素直に与えてくれないのだ。なぜ、感情の帳尻を合わせようなどとする? あぁ、理不尽な世界よ……。僕は、嘆いた。
 「雨降って、喜ぶ人もおるんやで」
 
目尻の皺を伸ばしつつ、母は横槍を入れる。
 苦笑しながら、僕は素直に納得する。
 ──たしかにそうだ、と感心する。

 
 時の流れに逆らうこと約十年、三十歳を前にして「Facebook」「Instagram」を登録した。多分、使いこなすことは困難だと思いますが、仲間が欲しいと、素直に思える老化に乾杯!

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