【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
73. 令嬢、独断 ② (挿絵あり)
一気に二十九階層の最奥、スロープの前まで辿り着いた一行を振り返ったエマ。
因みにここまでの道中、声を掛けて来たダンジョン抑制組の面々には、全員で声を合わせて『独断っ! 』とだけ答えて駆け下りてきた集団であった、便利な言葉を覚えた物だ、暫く流行るのでは無いかと思えた。
「『フルヒール』、では行くのですわ! 皆覚悟は良いですか? 死なないで下さいませ! さて…… 独断んんんっ~! 」
『独断っ~! 』
ドドドドドドッ!
勢いよくスロープを降りる一団の中で、走りながらイーサンがエマに言った。
「エマお嬢様、一足先に参ります、ドロン」
「「「「「ドロン! 」」」」」
無音瞬殺隊の面々もイーサンと同時に姿を消すのである。
デビットは後に従ったアプリコット村の面々に指示を出していた。
「騎士団の者は先頭で盾を重ねて敵を左右に分け道を作れ! それ以外の者は普段の練習通り前の者の足を抱いて押し出すのだ! 恐れるな、護りを主とせよ! 騎士の戦いを見せよ! 」
『はいっ! 』
マリアも馴染み深い武闘家たちに声を掛ける。
「いい? 皆! 焦っては駄目です! 状況を確認してから動きましょう、騎士たちの隙間を補うように動くのですわ! 決して無理をせずサポートに徹するのです! いいですか、殲滅よりもヒットアンドアウェイ、ダメージの蓄積を狙うのですわ! 冷静に冷酷に、破壊を実践いたしますわよ! オッケイ? 破壊(デストロイ)?」
『破壊(デストロイ)! 』
スロープの終点が見えた所でデニーが全員に聞こえるように大声で叫ぶ、これ程の大声であれば、先発したイーサン達やレッド、ホワイトにも聞こえた事だろう。
「最初に僕が特大の一撃を飛ばしてやる! 皆、身体を低くしてよぉ! 」
全員に緊張が走った瞬間、先頭を走っていたエマを追い越したデニーが渾身の一撃を飛ばすのであった。
「『飛刃(リエピダ)』!! 」
一撃で切り裂かれた最上級モンスター、全身を銀色の鎧で覆った異形は十体を越えた。
すかさず盾を前に押し出して左右に分けた騎士団にデビットの鼓舞が飛んだ。
「押せ押せ、押し捲れぇ! 押し付けて圧し潰してしまえ! 騎士の誇りを示すのだぁ! 」
『押!! 』
放射状に押し広げられた道を進みながら、マリアが大きな声で言った。
「皆、武闘家の矜持を示して! ほらそこから出て来たモンスター! 倒してちょうだい! 只々目の前の敵を滅してね! 破壊(デストロイ)、それだけを求めて! 頼んだわよぉ! 」
『破壊(デストロイ)! 』
左右に広がる死、その中を歩みながらレッド、そしてホワイトの元に辿り着いたエマが、大きな目に涙を湛えながら言うのであった。
「お師匠様、こんなにボロボロになってしまって…… 『フルヒール』!! ここよりは徒弟エマが代わって敵を殲滅いたします! どうかお休み下さいませぇ! 」
「え、エマ、来ちゃったのか…… ははは、本当にどうしようもない…… 」
「エマ! 気を付けろ…… アイツ、どうやら格別の魔人らしい、し、死ぬなよ? な! 」
「面目無いのであーる…… 」
キックスを守ったのだろう、エマはボロボロ死に掛けから僅かに回復したレッドとホワイトに向けて大きな声で言ったのである。
「拝命いたしましたわ! お師匠様! 徒弟エマ! 死にません事でしてよ! これより我等、修羅に入る! そう言う事でしてよ! 」
全身を朱色のオーラに包まれたエマ、アメリア・バーミリオンが、フロアに溢れた最上級モンスターの群れに足を踏み出すたびに、一歩一歩数体のモンスター、銀色の魔人たちが姿を消していくのであった。
シュウーシュウー!
そんな、滅魔の音を響かせながら進む、エマの耳に黄金に輝いている敵の首魁が口にした言葉が微かに届くのであった。
「えっと、ここで言えば良いのかな? クルムズ? 」
答える声が一つ。
魔人の右に控えた真っ赤な装束に身を包んだモンスターが答えた。
「はい、今ですよ! 早く言ってくださいませ! 」
「うん、えっと! ぐふん、『銀鱗の微笑み』を求めてここに来た勇者アレンよ、其方の求める鱗は水の底、この大海にこそ隠されているのである! 今より其方らは大いなる海に挑み────」
言葉を聞いた魔人の左に立つ真っ青な装束の女性っぽいモンスターが慌てた様子で言った。
「ち、違いますわ! そのセリフは来週の分でしてよ! ほら、今週はここ、この部分を言って下されないとぉ! 」
「あ? ああ、そっかそっかそっちだったか、ぐふんぐふん、えーっと、あー、我こそは魔王ザトゥヴィロの副官たるオーロ・ラン・ダハブ、である! 聖女に率いられし冒険者たちよ! 貴様たちの旅はここで終わりを告げるのだぁーぁ! 」
何やら可笑しなことを口走っていたダンジョンマスターだろう個体は、キンキラキンに輝きながら、左右の赤と青のモンスターに対して申し訳なさそうに頭を下げ続けているのである。
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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