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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
552.存在の絆

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 在来線、山陽新幹線、東海道新幹線、再びの在来線と乗り継いで、幸福寺に帰りついたコユキであった。

 時刻は既に夜十時を回ってしまっていたが、幸福寺は庫裏くりや本堂だけでなく、最近設置されたばかりの境内の照明が煌々こうこうと灯されており、コユキの帰還を迎える思いやりの光に溢れている様だった。

 LED照明の街路灯は、善悪の商魂から来るこだわりで、かむろ頭の市松人形の見た目で光り輝いている。

 例の髪が伸びる奴、そう言えば分かって頂けるだろうか?

 まあ、他人が見たら悲鳴を上げて逃げ出す位には怖い見た目であった。

 庫裏の玄関を開けたコユキはいつもより控え目に内部に声を掛けた、トシ子を起さない為の配慮である。

「ただいまぁ」

「お邪魔します」

 フューチャーの声もコユキに倣ってやや控えめである。

 ドタドタドタドタ!

 居間にでも集まっていたのか、一斉に足音が近づいて来て併せて善悪の声が響いた。

「お帰りぃーでござる! 遅くまで大変だったのでござるなぁ! チミがフューチャー君でござるか、ささっ! お疲れでござろ、上がって上がって! まずはゆっくりと休むのでござるよ!」

「コユキお帰り、大丈夫だったか?」

「姉様無事帰って来てくれて安心したよ! 途中から存在の絆が繋がらなかったでしょ? 何か有ったんじゃないかってアスタもわらわも心配してたんだよ?」

 コユキがやや気まずそうにしながら答える。

「あーそれね…… 善悪にだけは言ったんだけどねぇ…… これからしばらくって言うか、アタシ達が消えちゃう日まではね、皆との存在の絆とか、えっと、切った方が良いのかな? って思っちゃったんだよね、ほら、アタシと善悪って消えてなくなる訳じゃない? 今時点で存在の絆が繋がってる皆には、消えちゃったら喪失感を与えちゃう訳でしょう? それって辛そうだなって思った訳よ、ね、善悪?」

 善悪がいつも通り優しい微笑みを湛えて言う。

「その通りでござるよ、拙者とコユキ殿は最早、消え去る運命の只中に居るのでござるっ! んだから、皆との絆を、そろそろ、遠慮させて頂くのでござるよ! でしょっ? 僕チン達がいない世界を皆に頼みたいのでござるよ、分かるでそ? んだから、これから消えちゃう拙者達は絆通信貰っても、んぐ、んぐ、既読スルー的にブッチ一択にしたのでござるよ! もうっ! 皆の言葉なんか聞かないのでござるっ! ねっ? コユキちゃんっ!」

「うん、そうね善悪…… アタシ達はこれ以上家族とも友達とも、アスタやバアルや仲間の魔王達との絆を使うつもりはないわ…… だってアタシ達二人が消え去った後、アンタ達、この寺に集った仲間達が新しい絆で乗り切って貰えなかったら、只の無駄死にでしょ? 後を託す面々は充分だわ! だから、予定調和で消えて行くアタシ達を除いたメンバーで新しい絆を構築して今後は頑張って頂戴よ! ここにいるフューチャー君も、皆の後ろで佇んでいるフェイトちゃんも含めた新たなパーティーでね! おけい? それだけがアタシと善悪の願いなのよ、分かって欲しい…… それだけなのよ!」

「姉様……」

「こ、コユキ……」

 バアルとアスタロトが揃って目尻に光る物を浮かべながら言葉を詰まらせてしまうのであった。

 陰鬱になりがちな空気を切り裂くようにコユキが言葉を発する。

「ああ、そう言えばありがとうねっ! アスタとバアルぅ! アンタ等配下の皆にも頼んでくれたんでしょ? えっとぉ、依頼を受託してくれたわよっ! ガミュギュン君、ワルファレちゃんのお兄ちゃんがね、アタシ達の復活を請負ってくれたわよぉ!」

「っ!」

「っっ! マジでか? コユキ?」

 自ら依頼したくせに、バアルもアスタロトも受け入れられた事が信じられない、そんな表情を浮かべている。 

 コユキは正直者だ、ここまで嘘は言っていない、天邪鬼あまのじゃくに別個の視点から評する以外、嘘は言っていないのである。

 故に正直に答えたのであった。

「うん、マジよマジ! アタシ達が消失した後でも復活の為に努力してくれるって言ってたわよ? 何なの? それってそんなに大事な事なのぉ? 所謂いわゆる気休めなんでしょう? ガミュギュン君本人も判らないって言ってたし」

 コユキの質問にはバアルもアスタロトも返事をせずに、気を張っていたのかいつもより上がり捲っていた肩を安堵の吐息と共に下げて声を揃えたのである。

「「認められたんだな、よ、良かったぁ」」

「むっ?」

「何でござる? アスタ! バアル! 何が良かったのでござるかぁ? ちゃんと説明してっ! で、ござるよぉっ!」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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