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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第二部 四章 メダカの王様
735.悪魔

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 ナッキが問い掛けたカーサは答えず、代わりと言う訳ではないだろうが、ここまでそっぽを向き続けて居たサムが、嫌味に満ちた声で答えるのである。

「ふんっ、貴方の武力が相手に圧迫、つまり言外げんがいの暴力として働くのだろうさっ! 満足だろうがっ! メダカの王よっ!」

「え? 何? 何なのぉ?」

 驚いて聞いたナッキにサムは自信満々に答えたのである。

「ふんっ! これまで小競り合いこそあれど、我々モロコと悪魔たちは一定の距離感を持って過ごしてきていたのだ…… しかし、貴方の来訪によってここまでの努力、その全ては水泡すいほうに帰した、そう言う事なのですよ! しくもそこに居る馬鹿、カーサがの悪魔たちに対して戦意を表してしまった…… 他ならぬ貴方様、ナッキ王を招く事によってね…… つまりっ! 貴方がここに来た事によって、ははは、我等がモロコは滅ぶ…… そう言う事なのですよ…… ケッ! 強者はいつだってそうなんだっ! 反吐へどが出るっ! む、虫唾むしずが走るぅ! ペッ! ペェッ!」

 ナッキは真剣な顔で言う、当然だろう。

「こ、小競り合いぃ? そ、それにペッだってぇ? ねえねえそれって君たち皆の子供たち、卵が食べられてしまった事を言っている訳じゃあないよね? ケッ? ペェッ? まさか…… そんな残酷な事だけは止めさせたい、そう思って来た僕に対して言ったの君? サムだっけか? さっきの唾棄だきって僕に対して言ったんだよねっ? 僕の事? なの? 卵は良いの? 子供たち、は良いのぉ? ナッキビックリなんだけどぉっ!」

 サムは明らかに馬鹿にした様な表情でナッキに返す。

「だから、言っているでしょう! 今までは子供たちの尊い犠牲の上とは言え、悪魔たちとこちらのバランスが取れていたんですよ! 今貴方の綺麗事に従って生贄となる子供たちを救うとしますよね? 相手はさぞかし憤慨する事でしょうね! 今まで決まって食べる事が出来ていたモロコの卵が食べられなくなるのですから、興奮して攻め込んでくるかも知れませんねぇー」

 カーサがサムに言う。

「そうならない為にナッキ王に来てもらったんじゃないかっ! この大きな体を見てみろ! ナッキ王一匹でもどれほど強いのだろう、そう悪魔達は思うだろうさ、さらにナッキ王には忠誠を誓うメダカの戦士が五百匹以上付き従っているんだぞ! 皆モロコの成体と同じ位の大きさだぞ? 我々モロコの四倍の勢力だ、ナッキ王の国、『メダカの王国』と同盟や条約、相互の安全保障を担保する取り決めを締結すれば、如何に凶暴な悪魔たちと言えど、我々に対して手を出す事など出来ないだろうさ!」

 サムも興奮しているようだ。

「それが悪魔を刺激する、こんな簡単な事がわからないのかっ! それにな、絶望的な状況は相手に絶望的な手段を取らせるんだぞ! 具体的に言わねば判らないだろうから説明してやるがな、ナッキ王と五百を超える悪鬼羅刹あっきらせつどもの存在を知った悪魔どもは、必ず同等かそれ以上の勢力に助けを求める事になるんだ! それがここ、上の池でぶつかり合ったらどうなる? 終わりだよ…… 悲しい事ではあるが今まで通りなら、犠牲は三十個の卵だけで済むんだ…… 仕方が無い犠牲なんだ……」

「悪鬼羅刹って……」

「サム、何故判ってくれないんだ! 忌むべき歴史に終止符を打つチャンスなんだぞ! お前だって悪魔たちの卵を食べるのを嫌がっていたじゃないか! そうだろう?」

「生臭いからな、だが昔からの慣習には必ず大切な意味が隠されているんだぞカーサ! 今まで通りで良いんだ…… 悪魔たちが我々の子供たちを食べ、我々が同じ数の悪魔たちの卵を食べる、これは先祖代々続けてきた、我々の大事な伝統じゃないか!」

「下らない伝統だ、あんな取り決めなんか!」

「しかし我々から破る訳にはいかんだろう!」

 ナッキは大きな声で叫んだ。

「ちょっと待ってよ! 何? 君たちも相手の卵を食べてるだってぇ! それに伝統、同じ数って…… 凶悪な悪魔が昔からの取り決めを守ってるなんておかしくないかな? 悪魔なんでしょ!」

「悪魔です」

ちなみに奴等も我々の事を悪魔と呼んでいる」


拙作をお読み頂きまして誠にありがとうございました。

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