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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
66.罪と罰 ②

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 慌てて、家族のポッケやバック等からスマホを集めたコユキは、悪い笑顔を浮かべながら、充電器に接続して一台一台電源を入れて行った。

 ……

 ……

 ガクッ……

 結果は、全員しっかりロックを掛けていたのだ。

 まるで、今日のこの日が訪れるであろうと予見していたかの如くごとく、九十を越えたばあちゃんトシ子に至るまで確りと、防犯意識が根付いていたのだ。

 まあ、オレオレみたいな捻った詐欺ならいざ知らず、同じ屋根の下にコソドロが暮らしているのだから、自然と高まった意識であろう。

 全てこれまでの自分の行いのせいであった……

 コユキはでっぷりと、いやがっくりと肩を落とし、冷蔵庫の前に向かった。

 せめてもの栄養補給にと願いを込めて、マヨネーズとウスターソース、味噌と卵七つを口に叩きこみ歯を磨き眠りに就くのであった。

 この日の眠りより目覚めて都合三日間、コユキと善悪の法的処置まで考慮に入れた鎬合いしのぎあいは、まさに熾烈しれつと表現する事が適切であった。

 結局、塩ご飯と塩スープ以外のメニューがコユキの食卓に並ぶ事は無く、要所要所でブー垂れてしまうコユキの発言を聞き逃さなかった善悪が、お代わり禁止の禁じ手を繰り出す所まで至り、事態は深刻の度を深めていったのだ。

 この一連の流れの中、自宅にストックされていた調味料の類を、一夜目には、ケチャップ、砂糖、塩、うまみ調味料まで喰らい尽くしたコユキは、二夜目、三夜目は家業の主力、緑茶の煎茶を大量に口に頬張り、むせび、必死に飲み込む事で糊口ここうしのいだのだった。


 そうして、回避訓練を開始してから五日目の午後、訓練場所の幸福寺境内で一人の戦士が誕生した。

 恐怖を克服し、自らの限界を超えたのみならず、世界の肥満に悩む人々に新たなる可能性を見出す希望の光り、超絶戦士が爆誕したのだ。

 お寺の境内にはコユキの姿は見当たらず、数百本まで増やされた蝋燭の滴り続けるロープの下で、休みなくその身を焦がす熱さに唸り声を上げ続ける、幸福寺檀家オールスターズの若手農家十人の苦しむ姿と、周囲に散らばる三千個に迫ろうかと言うピンポン球の数々、後は意識を失い倒れ込んだ善悪の背中や後頭部、臀部でんぶに積もり続ける色鮮やかな蝋のおぞましい塔だけであった。

 その空間に響き渡る只一つの音、それは、

「ススススススススススススススススススススススススススススススススススススス…………」

と蝋燭が燃え尽きるまで、姿も無く響き渡り続けるのであった。

 ススススススススススッスススっと……

 そして、その音も途絶えて数瞬の後、境内に焦った様な口調が聞こえた。

「あらら、皆、酷い有様じゃなーい。 えっ! 先生! しっかり! せんせ、よしおちゃぁーん!」

 虚空から突然顕現したかのように、何も無い空間から不意に姿を現したコユキが、ほぼ蝋に埋まった善悪へと駆け寄るのであった。

 この三日の間に、一体何が起こったと言うのだろうか?

 四日前の泥仕合に呆れかえり、ここの所飛ばし気味に観察していたせいで見逃してしまっていたようだ。

 取り敢えず、一時間程前に時間を遡って、改めて観察する事としよう。

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拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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