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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
119.クソ運営 ②

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 黙りこくって戦慄している善悪に代わって、同じくソシャゲ暦二十年を越えるコユキが口を開いた。

「あ──これって、あれね、所謂いわゆる『無理ゲ~』ってやつだねぇ? いやぁ、難易度からかんがみれば、むしろ『クソゲ』かな? 初撃で倒さないと破壊不可能な改変持ちと組んでるのが、鉄壁かぁ! うん、軍隊とかなら兎も角、丸腰の日本人じゃまず倒せないよね~。 現実社会だからねぇ? ゲームってより、運営がゴミなのかなぁ? そうだねぇ、アタシなんか家族全員意識無くて苦しんでるんだし…… ねぇ? 運営? 神様なのかな? ホント『クソ運営』よねぇ? マジムカつくんだけど? ロクでも無いネェ『運営神』様ってネェ~」

 この魂の慟哭どうこくには、善悪もオルクスも只々頷くしかすべを持たなかった、只一人モラクスを除いて……
 そして、モラクスはコユキに言った。

「お気持ちは分かります、ですが、神は越えられない試練は与えないと聞きます。 不肖ふしょう、私にも此度こたび顛末てんまつには、不明ながらも思う所も……」

「あ、そう! でも黙っていてね! モラクスっ! どうでもいいからっ! クソ運営の味方するなら出て行っていいからっ! 」

 モラクスはそれ以上言葉にする事が出来ずに、只俯くうつむくことしか出来なかった。
 コユキは善悪に向けて、いつに無く強い口調で言ったのだった。

「善悪! 心配しないで良いよ! 馬鹿な運営なんかに負けないからね! オルクス君もモラクス君も弟妹きょうだい連れて帰って来てあげるからね♪ 舐めんな! ここからコユキは本気で本気だ! 送っていって、善悪! あと、お金ちょうだい! 」

「う、うん! チョット待っててね」

 この観察を始めて以来、遂にコユキが運命に抗い、自らの意思で道を切り開く覚悟を決めた瞬間であった。
 と同時に、なろう小説等で良く見る悲劇、調子に乗って強い敵キャラを出し続けてしまい、物語の中版辺りで次なる相手のネタが尽き果てて(大体エンシェントドラゴン辺り)、ピタリと更新が止まり、そのまま永遠、所謂いわゆるエターナルな存在になってしまう現象、『エタる危機』を遂に迎えたに見える『運営神』も、このピンチを、どう回避していくのかが試されていたのである。

 現実社会の理不尽さに、脳内をアドレナリンでヒタヒタにさせたコユキは、その勢いのまま新幹線に乗って旅立って行った。
 喰いっぱぐれ無い様に、チェックイン前に大量の飲食物を買い込んだコユキは、早々にポイ活に向いている、くだんのホテルでベットの上に寝転んで考えた。

────鉄壁と改癒か…… 全く、強敵過ぎるわよ…… 対してアタシが上回っているのは? 攻撃? もそこそこだけど、やっぱり素早さよね…… 後は幸福寺に残した三人のサポ、か…… まあ、出来る事を出し惜しみ無くやるしかないわね! とにかく動き捲くって撹乱して、後は出たトコ勝負しかないか!

 ザックリと方針を固めた後は、体を起こし、買い込んできたお菓子類を食べながら、家族の事を考え、思わず独り言を呟いた。

「それにしても、今の所オルクス君の気配察知では、弟妹きょうだい達しか探知していないのよね、モラクス君は『馬鹿』状態でも魂集めする様子は見られなかったし、あの『消えちゃうズタ袋』も持っていなかったしなぁ、いつになったら黒幕に辿り着いて、家の人達を目覚めさせれるのかなぁ……」

 言っていて、少し淋しくなってしまったコユキは、誤魔化すようにテレビを付け、丁度やっていたホラー映画を、食い入るように見つめるのであった。

 映画を見終わったコユキは、シャワーを浴びている間中、何度も後ろを振り返っては周囲を確認し、眠る際には部屋中の照明を煌々こうこうと燈し、見た事も無いバラエティ番組を大きめの音量で流したまま、布団を頭から被ってガチブル状態で目を閉じたのであった。
 不慣れなホラー映画で恐くなってしまったからだろうか?

 その夜、コユキは不思議な夢を見た。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!


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