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【連載小説】堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第三章 苦痛の葬送曲(レクイエム)
563.再会

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今回の話には、『410.納骨堂の核シェルター』の内容が含まれております。読み返して頂くとより解り易く、楽しんで頂けると思います。
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 コユキの声に答えるイーチの声が納骨堂の方から聞こえ、程なくしてアセディア、イラ、グラに抱えられた神狼、口白が善悪のパパンとママンの思い出がたっぷり詰まったけいの紐でグルグル巻きにされながら登場したのであった。

「ぶつぶつぶつ…… ちくしょう俺を見るな…… 笑うな…… 皆が、お日様が…… ぶつぶつぶつ……」

 なるほど、朝食の時から今までの数時間、例の場所に監禁されていたと見える。

 順調に壊れ始めている様では有るが、この感じ位であれば恐らく回復可能だろう、流石は神狼、立派だ。

 小声でブツブツ言っている口白を指さしながらコユキがアルテミスに向けて言う。

「ほら、この紐ってけいの紐って言ってね、悪魔や神様なんかだと触れているだけでその身をむしばむんだってさ、逃げる所か虫の息でしょ♪ 無事再会できて良かったわね、どう嬉しい?」

「あ、アナタ!」

 コユキには返事もせずに口白に駆け寄ったアルテミスは慌てて巻かれていたけいの紐を解いて行くのであった。

 アルテミスの白い両手が見る見る内に赤く腫れあがって行ったが、激痛に怯む事なく解き切り、改めて口白に声を掛ける。

「アナタ、しっかりして! アナタ!」

 全身を襲っていた激痛から解放された口白は、薄らと目を開いて弱々しい声でアルテミスに答えた。

「あ…… ああ、お前か…… 皆は? お日様は? あいつら、あいつら笑いやがって、ちくしょう……」

 未だ錯乱から帰還し切っていない口白に肩を貸したアルテミスに、依り代のフィギュアに戻ったラマシュトゥが回復魔法を掛けている。

 ついでに治療された口白は正気に戻ったらしく、改めて妻であるアルテミスの顔を覗き込んで言うのであった。

「あ、アルテミス! き、来てたの? 久しぶり、あ、会えて、その、う、嬉しいよ……」

「そうでしょう、私も嬉しいわぁ! テフヌトを探して来るって言って出てったきり音沙汰無かったから心配していたのよ! 一体何が有ったの? あの娘は見つかったの?」

「あー、いや俺、捕まってたんだよ、そこにいるバアルにさぁー、連絡とか出来なかったんだよぉ、分かるだろ? それにバアルの隣にいるアスタロトの所にもテフヌトいなくてさぁー、多分アスタロトがレグバ達にとっちめられた時にどこかに避難したとかじゃないかなー! んで俺も一度口にした事だからさっ、お前と一緒に過ごしたい気持ちは山々なんだけど、ちょっとしたら、そうだな? 明日位になったらテフヌト探しに旅立とうと思っていてね? 判るだろう? 一緒に過ごすのはあの娘を見つけてからになる訳だよ! いやー寂しいけど仕方が無いなー、ほら、親、父親としての務めだからさっ! 残念だなー、こうして再会したんだけどなー、残念だ、残念無念」

「そうなの? 本当ですか、バアル様?」

 バアルが自らの部下でもあるアルテミスに答える。

「うん、捕まえた所までは本当だよ、だけど妾が付けた魔法具ってボシェット城から離れられないってだけで、存在の絆で通信するとかは全然自由だったよ、それに確か一度ベルゼブブに伝えとくねって言ったら、瞬時にヘソテンになって『言わないで、お願いだから黙っていて』とか言っていたからね、連絡しなかった理由は別にあるんじゃないかな?」

 アスタロトが続いた。

「だよな、大体な、我がレグバの不意打ちで魔核化した日と、ラーがバアルに捕まった日だって百年以上経っているからなー、その間一体どこで何をしていたんだろうな? 不思議だ…… あ、それからテフヌトだったらアメリカで元気にしているそうだぞ、気になってネヴィラスに調べさせておいたんだ、クーガーを依り代にしてるとかなんとか言っていたが…… 探しに行かなくても大丈夫だと思うが、何なら呼ぶ? 二日も有ればネヴィラスかサルガタナスが連れて来れると思うぞ」

 アルテミスが表情を消し去った美しい顔を引き攣らせながら答えた。

「いいえ、呼ばなくて結構です、あの娘も大人なんで…… 後は私と主人、夫婦の問題ですので、お構いなく…… ありがとうございました」

「「了解!」」

「誤解だっ! 頼む二人きりで説明させてくれ! なっ? なっ?」

 無表情のアルテミスに必死に懇願するラー、口白である。

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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