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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
63.ディナー

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆

  コユキを浴室へと見送った善悪は、冷蔵庫からある物を取り出していた。

 より美味しく調理する為に、常温に戻しておく為で、実際に調理を始めるのは、コユキが帰って来てから、食事の直前にする予定であった。

 他に準備する物はわずかであった。

 ニンニクをほんの一欠片ひとかけらスライスしてバター、塩、ブラックペッパー、サラダ油を用意すれば主菜は完了である。

 スープは市販のミネストローネ缶に、トマトペーストを足して一煮立ちさせ酸味を際立たせ、更にサワークリームを乗せる事とした。

 付け合わせのサラダは、レタスを適当な大きさにちぎり、油を引いたフライパンでカリカリに炒めたベーコンを刻んで置いたシンプルな物。

 そこに、マヨネーズとプレーンヨーグルトを混ぜたドレッシングを掛け、パルメザンチーズと黒胡椒をたっぷりと振り掛け、アクセントチェンジを期待して、細かく解したサラダ用チキンハーブ風味を脇に盛って完成とした。

 そうして置いて、改めて雪平に水を入れ、ガスレンジの火を入れて、少量のお湯を沸かしていく。

 お湯が沸騰すると同時に、コユキが着替えのスウェットに身を包み台所に戻って来た。

「お先にいただきましたー。 あぁ~気持ち良かったー! です」

「ああ、すぐに仕上げをするでござる。 座って待ってて欲しいでござる」

 そう言って善悪がコンロの前に立つと、直ぐすぐに台所中に肉を焼く濃厚な香りが漂い出した。

 善悪はフライパンに並べた肉を丁寧に両面に焼き色が付くまで焼いた後、分厚く切られた肉の側面も隙間無く火を通して行った。

 味付けはシンプルに塩とブラックペッパーだけである。

 肉が焼き上がると、オーブンの中で中温に温めていたステーキ皿へと肉を取り出し、アルミホイルを被せ余熱を行き渡らせた。

 フライパンに残った肉汁にバターとスライスしたニンニクを入れ、わずかばかり醤油を足して煮立たせ無いうちに火を止める。

 続いて、コユキ用のでかいドンブリと自分用のやや大きめのお茶碗に白米を盛って、それぞれのスープ椀にも汁物をよそった。

 昼食のメニューがメニューだっただけに、部屋に広がるいい香りにコユキの腹からはグ――――グ――――と音が漏れっぱなしであった。

 その前に置かれる、山盛りの白米と、透明なスープ? 具も入っていないし只のお湯に見えるが、フィンガーボウルの類だろうか?

 善悪は続けて自分の席の前にも白米とスープ椀を置いた。

 チラリと見えたスープは赤っぽい様に見えた。

 続いて出てきたのは粉チーズがたっぷり掛かったサラダであったが、何故か善悪の席に置かれただけで、コユキの前には置いてくれない。

 忘れてるよ! コユキが表情に出して善悪にアピールしているが、そもそも肉のせいで表情は殆どほとんど変わっていないのだ。

 気付かないのだろうか、善悪は台所に広がる芳香の正体であろう、ステーキ皿からアルミホイルを外し食卓へと置いた、自分の席だけに……

 ここにきて、我慢できなくなったコユキは、遂にウッカリさんの善悪への指摘を口にした。

「も~、先生ったらーっ! 私のオカズ忘れてますよ~! やだなぁー!」

 この言葉に対して、顔色一つ変えずに答える善悪。

「え? おかず? だったら乗っているでござるよ、ご飯の上に」

「は?」

 言われて目を凝らしたコユキの目には、やはり真っ白いシャリ以外は一切映っていなかった。

 もしかして高給食材『イイダコの卵』でも乗せてあるのか? とクンクンしてみたが米以外の匂いもしない。 

 唖然とするコユキの耳に淡々とした善悪の言葉が届く。

「今夜のコユキ殿の献立は『塩掛けご飯』でござるよ。 あ、あと『塩スープ』でござる」

 衝撃の発言であった……

 二十一世紀令和の御世みよいて、そんなディナーを好んで食している者等、捕虜か自虐のみに喜びを感じる変態位では無かろうか?

 事実、コユキはその発言を受け、言葉を失いつつ、善悪に対して『目を剥き』つつ黙り込むことしか出来なかったのだから……

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拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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