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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
64. 令嬢、快進撃 ③
エマ達の報告を聞いたギルドマスターのガンズは、国中のギルドに緊急連絡を入れるのに合わせて、以前もボス討伐を依頼したプラチナランクの冒険者、『光速剣のキックス』へと指名依頼の手続きを取ったのである。
遠くの街に居たキックスがルンザに辿り着くまで、凡そ一週間は掛かるそうだ。
その間、ダンジョンへの立ち入りは禁止されてしまい、止むを得ずエマ達は集落の人々の教育や鍛錬に集中する事としたのである。
エマの居場所は相変わらず怖い話、その読み聞かせの壇上である。
「浦島太郎は玉手箱を開けてしまいました、途端に襲い掛かった息苦しさ、のみならず急激に霞んで視界を奪った近視遠視の雨霰、歯茎は残らず歯周病に侵されグラグラと歯の根を揺らし、腰を襲ったヘルニアの痛みのみならず、ありとあらゆる関節が悲鳴のような軋みを上げて激痛を齎す中、どうにも抗いがたい神経自体を毒するような、全身のリンパをリウマチの痛みが猛烈な速度で走り捲ったのでした、聴覚も失われた浦島太郎は叫ぶのでした、
『ウギギギィィィ! 痛い痛い痛い痛いぃ! 』
酷く歪な化け物の如き叫びを残して、その命の灯を消した浦島太郎の表情は、この世の地獄を味わった者だけが知る、苦悶の果ての絶望、その物でしたとさ、沖合から見つめていたカメさんは静かに呟いたのでした、
『これで百二十人目、乙姫様の悲願に辿り着くまで後、八十人…… さて、またぞろ虐められて来るとするか、やれやれ』、と…… 諦めに似た嘆きだけを残して次の生贄探しに向かったそうな、カメさんが現れた浜辺では、その後も苦痛にもがき次々と命を奪われ死んで行く太郎が止むことは無かったとさ、めでたしめでたし、すっとん、おしまい」
話し終えたエマの前には、もう見慣れた光景となった、集落の人々が口々に感想を言い合う姿が広がっていた。
唯一、普段と違っていたのはここに集まった魔法適性の高い者たち全員が、右腕に淡いながらも赤みを帯びた布を巻いている事であった。
昨日迄には無かった事であった。
気になったエマが自分の前に立つハンスに聞く。
「ねえハンス、皆が手に巻いている布ですけれど、一体何なのですか? 」
エマが聞いてくれた事が心底嬉しかったのだろう、いつも大人し目な回復と支援魔法士、兼弓術士のハンスが、小躍りしながら返す。
「気付いてくれましたかエマ様♪ これはですねぇ、街で買って来た布を例の、黄色くなるまで食べちゃダメなプラム樹皮の煮汁で染めた物なんですよ! 少し薄目ですけどエマ様のドレスの色に近いから、皆さんへの感謝を込めて身に着ける事にしたんです! 今の所、我々魔法士と騎士団、従僕、武闘家、諜報部隊、あとは無音瞬殺隊が身に着けていて、他の人達からは『チームアプリコット』って呼ばれてるんです♪ 」
「まあ、私のドレスに似せて…… それは光栄ですわ! 私も嬉しくってよ! 」
「えへへ」
「どうだろうエマ、この集落を便宜上、アプリコット村と呼ぶ事にしたら良いんじゃないかな? 」
「なんて素敵なアイディアでしょう、素晴らしいわデニー! 正式な名付けは兎も角、私達の間ではそのように呼ぶのですわ! 」
「それいいですね、俺、ジャックに伝えてきます! 」
村の名前をデニーが付けてエマが認めてくれた。
その事が余程嬉しかったのか、ハンスは猛烈な速度で駆け去って行った。
「村が出来たら初代村長はエマがやるべきかな、ホワイト」
「そうだな、それが一番だな、レッド」
「お師匠様方、ごきげんよう、徒弟エマご挨拶いたしますわ! 」
「レッド師匠、ホワイト師匠、徒弟デニーもご挨拶いたします」
一か月の間にデニーもちゃっかり弟子入りを果たしのである、まあ、押し掛けではあったが……
「おいおい、その師匠ってのはそろそろ勘弁してくれよ、なあ、ホワイト」
「そうだよ、もうエマ達の方が随分強くなってる事だしなぁ、レッド」
エマが慌てて口を挟む。
「そういう問題では有りませんわ、お師匠様はいつまで経ってもお師匠様ですのよ」
「「参ったな! 」」
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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