【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
40. 令嬢、捌く ③
エマが小屋の中を覗き込むと、農奴たちにテキパキと指示を出していたジャックが目聡く見つけて声を掛けて来た。
「エマ様! ごきげんよう! 今日もお疲れ様でございました、お陰で登録者が六十人になりましたよ! 」
「ごきげんよう、ジャック! うふふ」
エマは笑顔で挨拶を返しながら思う。
────昨日は五十六人でしたから、四人も増えたのですわ♪ この様子でしたら当初の予定より随分早く皆を冒険者にして差し上げられますわ♪
一心不乱に働いている農奴たちの姿を見回すエマ。
加工を終えたモンスターの肉を隣接する倉庫に運び込んでいる面々もみんな笑顔である。
毒消し草の効果が現れるまで三日間は倉庫で寝かせる必要があるのだ。
小屋を出て倉庫の前に回ると三日前に加工した肉や、鞣した皮、牙や角、腱などの部位を背負子に積んだ一団がルンザの買取所に向けて出発する所であった。
再びごきげんようの合唱に返礼を返したエマの後ろからマリアが声を掛ける。
「ではお嬢様、私も納品に行ってまいります」
「ええ、マリア、気を付けてね」
「はい、野郎ども、出発するぜぇ! 」
「「「「「「おう! 」」」」」
身体強化を発動し、自分の倍はあろうかという巨大な背負子を軽々と担いだマリアに先導され、結構なスピードで走り出す納品隊。
彼らはここ一か月の間の訓練に於いて、運動能力に優れた者、身体強化魔法を身に着ける事が出来た者、その両者からマリア本人が選抜した武闘家候補のメンバーである。
勿論彼等だけでなく、身体強化の一枚掛けの状態で、王都の各党大会で優勝できたマリア自身も成長し、今の所、五枚掛けまで使用可能になっていた。
毎日大量の荷を背負ってのルンザ納品も又、トレーニングの一環なのである。
因みに農奴の中で最初に冒険者登録を済ませたメンバーもこの武闘家集団六人である。
武器や防具を買う必要が無く、石や木の枝だけでモンスターに飛び掛かって行く彼らの活躍は、当初の飢えから仲間達を救っただけでは無く、低級とは言え魔石の販売で得られる現金獲得によって加速度的な登録者増加の切欠でもあった。
「ごきげんよう、エマ様! イーサン様、我々もルンザに向かいます」
「ごきげんよう! チャーリー」
「抜かりなく頼みます、チャーリー」
「ははっ! 」
音も無く現れ音も無く立ち去る四人組はイーサンが従僕教育を施して来た十数人から選び抜かれた諜報部隊予備兵たちである。
街に向かった納品隊の交渉を一手に引き受けてくれる頼もしい仲間であった。
「ではお嬢様、私も自分の部隊の教育に赴かさせて頂きます、失礼いたします、ドロン! 」
そう言うとイーサン自身も姿を掻き消したのであった。
恐らく、虎の子の内諜部隊、いつぞや珍しくエールに酔った時に漏らしていた、『無音瞬殺部隊』の教育に向かったのであろう。
これでこの場に残っているのはエマを除けば、重装騎士であるデビットと、何となく付いて来ているストラスだけになってしまったのだが、肝心のエマは余裕の風情を隠す事も無く集落の人々と挨拶をかわしつつ、いつもの自分の定位置に進むのであった。
切り株の上に質素ながら筵状の座布団が何枚も置かれた席が、エマの午後から夕方にかけての居場所、魔法座学の講師席であった。
神妙な顔を見せながらストラスが受講生用の平たい石の上に腰を降ろした。
「では、ストラス! エマお嬢様をお願いいたします! 」
「ああ、この命に代えても守って見せるさっ! 」
そんなやり取りを交わしたデビットは、エマの元にストラスだけを残して、作業を終えた剥ぎ取り組や、加工組が整列している広場に向かって行った、騎士、いいや突出した能力を有していないその他大勢のメンバーに対して、盾、護り手のフォーメーションを反復訓練する為である。
デビットの声が雄々しく響いた。
「いいかあ! 我々が目指す高見とは、勝つことではない! 負けない事だ! 守り抜け! 其れこそが騎士の矜持と知れぇ! 」
『ははっ! 守ります! そして護ります! 守り抜く事こそ我らが役目! 怖じぬ、引かぬ、顧みぬ! 只々耐え忍ぶ、耐える強さをこの手にぃぃ!! 』
声に出さずにグッと自らの拳を握っているだけの者も一杯である、護りの担い手、騎士団も順調に形成されていたのであった。
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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