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高校生の頃見た不思議な夢のお話

高校生の時分、僕は不思議な夢を見ました。

僕はある男の人生を追体験しているかのような感じで、その男の名前は分からない、というよりは夢の中で何度か名前を呼ばれる事があったのですが、どうも不明瞭になって上手く聞き取ることが出来ませんでした。

男の服装から時代は相当昔。平安とかそのへんかもしれない。

男は、しがない百姓で村のはずれに一人で住んでいました。百姓の仕事は農に関することですが、その男は山へ薪を取りに行く最中のようでした。夏なのか冬なのかは覚えておりませんが、薪を取りに行くとなればきっと冬だったのでしょう。

男は、いつも通る山道を外れ、斧を持ち尋常であれば人など行かないであろう獣道に歩を進めました。

男は、2、3メートルほどの木を見つけると、力いっぱい斧を振るいました。どしーんと、木が倒れるとその場で加工を施します。とはいえ、現代のような綺麗なものではなく、不細工な仕上がりではありましたが男は気にする様子はありませんでした。

必要数を背負子に載せ、せっせと下山をする頃には日が傾き始め、辺りはほのかに薄暗くなってきました。

これは失敗だ。と男は内心で舌打ちをしながら歩みを早めました。

この山は、猪や熊などが出るため相当に危険な場所ではありますが、それ以上に村の者たちが口を揃えて「魑魅魍魎が巣食う山だ」と噂をする、いわくつきの山でした。

少しばかり息を切らしながら歩いていると男の視界に白い何かが蹲っている様子が映り込みました。

恐る恐る近づくとそれは白い狐でございました。

その体は見事なまでに白く、男に冬の平原に積もった雪景色を想起させました。もっとよく見るために、男は近付きました。

そこであることに気が付きました。

その狐は左前足の付け根を怪我をしており血を流しているではありませんか。どうも何かが貫いたような傷痕。罠にでも引っ掛かったのでしょうか。獣に襲われたのでしょうか。

なにはともあれ男は、人一倍優しい人間であったため、その狐を抱えて走り出しました。狐は意識朦朧といった感じで、どうも今の状況をわかっていない様子であります。

そう経たない内に、男は自分の家に着きました。家というよりは小屋と言った感じの質素な作りです。

男は、何をどうしたらといった感じでしたが、明日着る服を力いっぱい破いて、狐の怪我している部分に巻き付けました。

急いで男は火を熾し、狐の看病に勤しみました。

男の看病は、深夜にまで及び狐が安静になったところを確認すると、緊張の糸が切れたようで男は泥のように眠りに就きました。

翌日、男は大寝坊をしてしまいましたが、先に起きていた元気そう狐の元気そうな様子に安堵しました。

「感謝申し上げる」

男は耳を疑いました。何と狐が懇切丁寧に頭を下げ、言葉を発したではありませんか。

話を聞くと、狐は山の神様の娘であるようで、少しばかり無理をして怪我をしてしまったとのことでした。

山の神様の娘である貴女が何の為に、そこまでの怪我をしてまで何をしようとしていたのですか。と男は尋ねましたが狐は首を横に振るばかりで教えてくれません。

「些か込み入った事情がお有りのようで、これ以上〇〇(男の名前)は詮索いたしませんがどうぞ無理はなさらず」

狐は銀杏の色をした目を大きく見開き、その様子はどこか驚いているようでした。

何故、そのように驚いていらっしゃるのかと男は疑問符を頭に浮かべますが、曰く「仮にも神の一族の末席を担う私を心配する人間がおるとは思わなんだ」とのことでした。

狐は男を大変気に入り、今度改めてお礼をさせていただくと、狐は山へ帰っていきました。


数日経ったある日。男の家に大変綺麗な女性がやって参りました。頭髪は老人のような白ではなく雪のような白。透き通るような肌、銀杏の鮮やかな色の瞳はどこか人間離れした美しさを醸し出していた。

「お礼に来たぞ」

件の白狐が人間の姿でやってきた。彼女が言うには狐の嫁入りだと。

その日は晴れていたのに雨が降っていた。


男と彼女は幸せに暮らしました。やがて彼女は子を孕み、お腹が大きくなって来た頃に、村人が家にやってきました。

要件は化け物を匿っている裏切り者の粛清。

男はこの家に化け物はいないと訴えますが、彼らは聞く耳を持たず、男と彼女は逃げるようにして山へ向かいました。

男は山奥に小さな小屋を建て、細々と彼女と二人で暮らしていましたが、またもや来訪者が。

その相手は村人ではなく、山の神様。彼女の父親でした。

彼が言うには二人が結ばれるのは認めていないし、神と人間の間で子を成すなど前代未聞だ。娘は我が家へ戻り、子供を産んだらその子を殺す。お前(男)は疾く失せよ。とのことでした。

神様は去ると、二人の小屋は静寂に支配されていました。

ですが二人は永久に一緒に寄り添うと約束をして、何とかして神様も説得しようと、試みようと二人で決定しました。


夜中、どうも眠れない男と彼女は山を散歩することにしました。

男は山の神様が見ているんじゃないかと心配しましたが、彼女曰く「父上は夜が更ければ大概寝ている」とのことでしたので、それならと男は安堵しました。

男と彼女が家に戻ろうとしている頃に、自分たちの家の周りに多くの灯火が在ることに気が付きました。

なんだろうと様子を窺っていると、それらは村人たちでした。

中にはいないだの、火を放てだの、奴らを探せだのと罵詈雑言を喚いています。

このまま戻るとマズイと思いましたが、一人の村人がこちら側に気付き、農具を投げつけてきました、中には貴族の警護に当たるような武士が弓を放っているのが見受けられました。

とうに小屋には火が放たれ、二人は山道を疾走しますが、一本の矢が彼女の左肩を射抜きました。

血が滲み、苦しそうな声を上げながら男を見据えました。

「そなたをどこか遠くへ飛ばす、頼むから生きてくれ」

「そんな、僕たちは永久にいると約束したではないか」

「なに、また会える。私達が今世で会えたように。」

彼女は何やら唱えると、男は深い穴に落ちるような感覚とともにどこか見知らぬ土地に居ました。

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僕はここで目が覚めました。

何でか知らないけれど涙が溢れて止まらなくて、その日学校を体調不良で休みました。

あまりにリアルで、自分の今までの記憶にもこれに関する記憶はなかったし、謹直で類似した話を読んだ、聞いたということもありませんでした。

この夢を見た直後は前世の記憶なのでは?とか思ったりしてました・


このあと白狐がどうなったのかは分かりませんが、不思議だったのが、狐が怪我していた左前足の付け根と、彼女が射抜かれた左肩。

もしかしたら彼女はこの結末を何度も何度も体験しているのかもしれないですね。

永久にあると約束した二人ですが、、なんというかいたたまれない気持ちになったのを今でも覚えています。

うろ覚えなところは多少脚色していますが、99%間違いなくこの内容でした。

また彼の人生(それがただの夢の住人だったとしても)を追体験できる日は来るのだろうか。


それと、皆様にお尋ねしたいことが2つ。

①白狐に関する伝承や逸話を蒐集しています。皆さんが知っておられますお話を聞かせていただけると幸いです。

②皆さんが見た不思議な夢をどうぞお教えください。


それではおやすみなさい。


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