米国株決算マン2世(米国企業決算から見るビジネス最前線)

投資とビジネスに役立つ、決算データで見る注目企業動向。 2020年6月にStraine…

米国株決算マン2世(米国企業決算から見るビジネス最前線)

投資とビジネスに役立つ、決算データで見る注目企業動向。 2020年6月にStrainerファミリーに。2023年6月に初代決算マンから交代、ストレイナーの米国記事を掲載しています。

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記事一覧

Webマーケツール群で成長「Semrush」既存顧客へのアップセルなどで収益拡大中

今回取り上げるのは「Semrush」という会社だ。Webマーケティングの世界では知らない人はいないであろう、同名のツールを提供する企業である。 立ち上げたのは、今もCEOを…

鳴物入りのCEOが突如退任!デジタルフィットネス企業「Peloton」の現在

タブレット付きの高価なフィットネスバイクで一世を風靡した「Peloton」を覚えているだろうか。一年前に取り上げたときと同じ書き出しだが、そのくらい同社への注目度は薄…

当時ベジタリアンが創業した米国の鶏肉チェーン「Wingstop」異例の急成長中

米国の飲食チェーン、ウィングストップ(Wingstop)が目覚ましい成長を続けている。 「チキンウィング」といえば、米国のバーやレストランでは人気の前菜、あるいは酒のつ…

バークシャーも投資した「シリウスXM」再編で資本関係を整理。今後の成長性は?

米国企業のシリウスXMが、株式市場で低い評価を受けている。 と言っても、大抵の人は「どんな会社?」と疑問に思うに違いない。企業としての来歴は以前記事化したが、ざっ…

SBCメディカルグループHDがナスダック上場、その来歴と事業モデルを解説

「湘南美容クリニック」などで知られるSBCメディカルグループHDが、米国ナスダック市場への新規上場を果たした。 湘南美容外科クリニックは、2000年に開院した「藤沢院」…

Adobe 3Q決算、生成AIへの投資継続も業績堅調。動画生成AIを年内にベータ公開へ

Adobeが9月12日、2024年6〜8月期決算を発表。売上高は前年比11%増の54億ドル、営業利益は同じく17%増の20億ドルだった。 決算発表後の時間外株価は執筆時点で8.9%の下落と…

HPE、AIサーバー受注が続伸。ソブリンAIとエンタープライズ需要でさらなる成長へ?

株式市場ではイマイチ注目度が高まらないが、隠れた(?)AI関連銘柄となりつつあるのがHPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)だ。 HPEは2015年に旧ヒューレ…

NVIDIA2Q決算、売上・利益ともに続伸。新技術への引き合い強く粗利率も上昇中

NVIDIAが8月28日、2024年5〜7月期決算を発表。売上高は前年比122%増の300億ドルと、前回決算で掲げた会社予想を上回った。営業利益は同じく174%増の186億ドルだった。 こ…

動画会議ツールのZoom、株価低迷も現金積み上がり75億ドル。AI機能で打開なるか?

動画会議ツールを手がける米Zoomが8月21日、2024年5〜7月期決算を発表した。売上高は前年比2%増の11.6億ドル。営業利益は同じく14%増の2億ドルだった。 会社全体の成長率…

ブラジル成人の56%が利用するデジタル銀行「Nu」貸付拡大で利益も株価も上昇中

中南米を席巻する次世代デジタルバンク、Nu Holdingsが目覚ましい成長を続けている。2024年4〜6月の売上高は28.5億ドル(前年比52%増)、純利益は4.9億ドル(同117%増)へ…

ショピファイ、決算後株価急騰。オフライン、B2B、越境などテーマにさらなる成長へ

Shopifyが8月7日、2024年4〜6月期決算を発表。売上高は前年比21%増の20.5億ドル。営業利益は2.4億ドルだった。発表当日の株価は18%高と急騰した。 ハーレー・フィンケルス…

伝説的CEOが再興戦略を進めるウォルト・ディズニー、株式市場が悲観的な理由

ウォルト・ディズニーの株価が低迷している。 コロナ禍ではテーマパーク事業が大打撃を受け、前CEOの肝いりで動画配信サービス『ディズニープラス』を打ち出した。有料会…

ウーバー、需要堅調で増収増益。自動運転との提携期待も高まる

Uberが8月6日、2024年4〜6月期決算を発表。売上高は前年比16%増の107億ドル。営業利益は同じく144%増の8億ドルだった。 配車サービスとデリバリー事業がともに好調で、ト…

スーパーマイクロ決算、売上急伸も利益率低下、肥大化する「AI工場」の行く末やいかに

スーパーマイクロコンピュータが8月6日、2024年4〜6月期決算を発表。売上高は53億ドル(前年比143%増)と急伸したが、営業利益は3.4億ドル(同51%増)にとどまった。 スー…

パランティア、決算好調で時間外株価急騰。CEOの愛国心あふれるポジショントーク

ソフトウェア企業のパランティアが8月5日、2024年4〜6月期決算を発表。売上高は前年比27%増の6.8億ドル。営業利益は同じく十倍に増え、1億ドルを突破した。 株価はこの一…

Amazon 2Q決算:ジャシーCEOもAI戦略を熱弁、「一つの製品が牛耳る」未来はない?

Amazonが8月1日、2024年4〜6月期決算を発表。売上高は前年比10%増の1,480億ドル、営業利益は同じく91%増の147億ドルだった。 アンディー・ジャシーCEOは「いくつもの方面…

Webマーケツール群で成長「Semrush」既存顧客へのアップセルなどで収益拡大中

Webマーケツール群で成長「Semrush」既存顧客へのアップセルなどで収益拡大中

今回取り上げるのは「Semrush」という会社だ。Webマーケティングの世界では知らない人はいないであろう、同名のツールを提供する企業である。

立ち上げたのは、今もCEOを務めるオレグ・シュチェゴリフ(Oleg Shchegolev)。子供時代からの友人ドミトリー・メルニコフ(Dmitry Melnikov)との共同創業だ。メルニコフは同じくCOOを務めている。

ともにロシア出身で、シュチェゴ

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鳴物入りのCEOが突如退任!デジタルフィットネス企業「Peloton」の現在

鳴物入りのCEOが突如退任!デジタルフィットネス企業「Peloton」の現在

タブレット付きの高価なフィットネスバイクで一世を風靡した「Peloton」を覚えているだろうか。一年前に取り上げたときと同じ書き出しだが、そのくらい同社への注目度は薄まったように思える。

結局あれからも、同社の経営は万全とは言い難い。サブスク事業のスペシャリストとして期待されたバリー・マッカーシー氏は今年5月にCEOを退任。ボードメンバーの二名が共同で暫定CEOを務める非常事態に追い込まれた。

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当時ベジタリアンが創業した米国の鶏肉チェーン「Wingstop」異例の急成長中

当時ベジタリアンが創業した米国の鶏肉チェーン「Wingstop」異例の急成長中

米国の飲食チェーン、ウィングストップ(Wingstop)が目覚ましい成長を続けている。

「チキンウィング」といえば、米国のバーやレストランでは人気の前菜、あるいは酒のつまみだ。鶏の手羽先や手羽元を焼くなり揚げるなり、ソースに絡めて食べる「バッファローウィング」も人気だ。

そんな中で、チキンウィングに特化して急成長する飲食チェーンこそがウィングストップだ。2023年には売上4.6億ドル、営業利益

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バークシャーも投資した「シリウスXM」再編で資本関係を整理。今後の成長性は?

バークシャーも投資した「シリウスXM」再編で資本関係を整理。今後の成長性は?

米国企業のシリウスXMが、株式市場で低い評価を受けている。

と言っても、大抵の人は「どんな会社?」と疑問に思うに違いない。企業としての来歴は以前記事化したが、ざっくり言うと「世界有数の音声エンタメ企業」。衛星ラジオのシリウスとXMが統合して生まれた会社で、2019年には『パンドラ』を買収した。

業績自体は一見堅調だ。前年比では弱含んでいるものの、2023年の売上高は89.5億ドル。営業利益は1

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SBCメディカルグループHDがナスダック上場、その来歴と事業モデルを解説

SBCメディカルグループHDがナスダック上場、その来歴と事業モデルを解説

「湘南美容クリニック」などで知られるSBCメディカルグループHDが、米国ナスダック市場への新規上場を果たした。

湘南美容外科クリニックは、2000年に開院した「藤沢院」が始まり。立ち上げた当初から「日本で一番患者が来てくれる美容医療グループになる」と決め、積極的な拡大方針を実行に移した。

SBCメディカルグループはクリニックとFC契約を結び、経営コンサルティングやマーケティング支援を提供。かつ

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Adobe 3Q決算、生成AIへの投資継続も業績堅調。動画生成AIを年内にベータ公開へ

Adobe 3Q決算、生成AIへの投資継続も業績堅調。動画生成AIを年内にベータ公開へ

Adobeが9月12日、2024年6〜8月期決算を発表。売上高は前年比11%増の54億ドル、営業利益は同じく17%増の20億ドルだった。

決算発表後の時間外株価は執筆時点で8.9%の下落となったが、サンタヌ・ナラヤンCEOは依然として前向きだ。三か月間に稼いだフリーキャッシュフローが20億ドルを超えるなど、収益性の高さはテクノロジー企業の中でも折り紙つきだ。

クリエイティブクラウド、ドキュメン

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HPE、AIサーバー受注が続伸。ソブリンAIとエンタープライズ需要でさらなる成長へ?

HPE、AIサーバー受注が続伸。ソブリンAIとエンタープライズ需要でさらなる成長へ?

株式市場ではイマイチ注目度が高まらないが、隠れた(?)AI関連銘柄となりつつあるのがHPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)だ。

HPEは2015年に旧ヒューレット・パッカードの分社化で誕生。パソコンやプリンタに特化するHP Incに対し、HPEはサーバーやストレージ、ネットワーク製品を扱う。2021年のデータだが、サーバー市場シェアはDellに次いで二番目に大きい。

売上高は全体

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NVIDIA2Q決算、売上・利益ともに続伸。新技術への引き合い強く粗利率も上昇中

NVIDIA2Q決算、売上・利益ともに続伸。新技術への引き合い強く粗利率も上昇中

NVIDIAが8月28日、2024年5〜7月期決算を発表。売上高は前年比122%増の300億ドルと、前回決算で掲げた会社予想を上回った。営業利益は同じく174%増の186億ドルだった。

この半年間で株価は62%、直近一か月でも12%以上上昇した。時価総額は約3.1兆ドルにのぼり、株式市場の期待は高まり続けている。決算発表後の時間外株価は、執筆時点で6.7%の下落となった。

ジェンスン・フアンC

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動画会議ツールのZoom、株価低迷も現金積み上がり75億ドル。AI機能で打開なるか?

動画会議ツールのZoom、株価低迷も現金積み上がり75億ドル。AI機能で打開なるか?

動画会議ツールを手がける米Zoomが8月21日、2024年5〜7月期決算を発表した。売上高は前年比2%増の11.6億ドル。営業利益は同じく14%増の2億ドルだった。

会社全体の成長率が横ばいとなる中、株式市場における評価は低迷。年初来株価は12%以上も落ち込み、時価総額は186億ドルとなった。決算発表後の時間外株価は執筆時点で2.9%ほどの上昇となっている。

安定したキャッシュフローにより、現

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ブラジル成人の56%が利用するデジタル銀行「Nu」貸付拡大で利益も株価も上昇中

ブラジル成人の56%が利用するデジタル銀行「Nu」貸付拡大で利益も株価も上昇中

中南米を席巻する次世代デジタルバンク、Nu Holdingsが目覚ましい成長を続けている。2024年4〜6月の売上高は28.5億ドル(前年比52%増)、純利益は4.9億ドル(同117%増)へと拡大した。

創業者CEOのダビド・ベレス氏はゴールドマンサックスなどを経て、セコイア・キャピタルでパートナーを務めた経歴の持ち主。2013年にNubankを創業、今ではブラジル成人人口の56%がアカウントを

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ショピファイ、決算後株価急騰。オフライン、B2B、越境などテーマにさらなる成長へ

ショピファイ、決算後株価急騰。オフライン、B2B、越境などテーマにさらなる成長へ

Shopifyが8月7日、2024年4〜6月期決算を発表。売上高は前年比21%増の20.5億ドル。営業利益は2.4億ドルだった。発表当日の株価は18%高と急騰した。

ハーレー・フィンケルスタイン社長は「今回の突出した成果を説明するのが待ちきれない」と興奮した様子で語った。同社は一年前に物流事業の減損損失を計上、巨額の営業赤字に陥っていた。その後は黒字化し、拡大基調を続けている。

物流事業を除け

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伝説的CEOが再興戦略を進めるウォルト・ディズニー、株式市場が悲観的な理由

伝説的CEOが再興戦略を進めるウォルト・ディズニー、株式市場が悲観的な理由

ウォルト・ディズニーの株価が低迷している。

コロナ禍ではテーマパーク事業が大打撃を受け、前CEOの肝いりで動画配信サービス『ディズニープラス』を打ち出した。有料会員を急激に伸ばしたものの黒字化は遠く、やがて株式市場も失望させた。

2022年末には前々CEOのボブ・アイガーが復帰し、経営の立て直しを進めてきた。筆者の気のせいかもしれないが、同社の開示資料は見た目と構成がNetflixに似てきた。

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ウーバー、需要堅調で増収増益。自動運転との提携期待も高まる

ウーバー、需要堅調で増収増益。自動運転との提携期待も高まる

Uberが8月6日、2024年4〜6月期決算を発表。売上高は前年比16%増の107億ドル。営業利益は同じく144%増の8億ドルだった。

配車サービスとデリバリー事業がともに好調で、トップラインが拡大。収益性も改善したことで、ダラ・コスロシャヒCEOも「超力強い結果だ(super strong results)」と自慢げだ。

コスロシャヒCEOは、市場関係者にとって「二つの大きな疑問」を想定。ア

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スーパーマイクロ決算、売上急伸も利益率低下、肥大化する「AI工場」の行く末やいかに

スーパーマイクロ決算、売上急伸も利益率低下、肥大化する「AI工場」の行く末やいかに

スーパーマイクロコンピュータが8月6日、2024年4〜6月期決算を発表。売上高は53億ドル(前年比143%増)と急伸したが、営業利益は3.4億ドル(同51%増)にとどまった。

スーパーマイクロが主に手がけるのは、生成AIを大規模に取り扱う際に必要となるサーバーなどのハードウェアの製造販売。もっとも重要な部品であるプロセッサはNVIDIA等から仕入れるため、そもそも利鞘は薄くなりやすい商売だ。

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パランティア、決算好調で時間外株価急騰。CEOの愛国心あふれるポジショントーク

パランティア、決算好調で時間外株価急騰。CEOの愛国心あふれるポジショントーク

ソフトウェア企業のパランティアが8月5日、2024年4〜6月期決算を発表。売上高は前年比27%増の6.8億ドル。営業利益は同じく十倍に増え、1億ドルを突破した。

株価はこの一カ月で一割強の下落だったが、決算発表後の時間外株価は執筆時点で12%の上昇。下落分を取り戻すことになりそうだ。

「過去の台本はもうワークしない」そう豪語するのは、パランティアのCEO、アレックス・カープ氏だ。「これまで(過

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Amazon 2Q決算:ジャシーCEOもAI戦略を熱弁、「一つの製品が牛耳る」未来はない?

Amazon 2Q決算:ジャシーCEOもAI戦略を熱弁、「一つの製品が牛耳る」未来はない?

Amazonが8月1日、2024年4〜6月期決算を発表。売上高は前年比10%増の1,480億ドル、営業利益は同じく91%増の147億ドルだった。

アンディー・ジャシーCEOは「いくつもの方面で前進を続けているが、AWSの加速よりも顕著なものはないかもしれない」と主張。多くの企業がITインフラをクラウドに移管し続けるのに加え、生成AIをめぐる機会が成長を後押ししている。

足元の増益は、コロナ後に

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