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デザインを拡げる

少し前のnote記事「Designing culture 10 グッドデザインの未来」で特集した、公益財団法人・日本デザイン振興会(通称:JDP)の新パーパス。

KESIKIが伴走しながら、「デザインを、一人ひとりの力に。」というパーパスを軸に、JDPの事業方針や行動指針などを定めました。

その発表を記念して、11月「デザインの可能性を拡げつづけるために、日本デザイン振興会ができること」と題したイベントが開催されました。

デザインの可能性を拡げるために、これからどんな行動を起こしていくべきか、様々なゲストからの視点も交えたトークディスカッションの様子を、ダイジェストでお届けします。

(イベント全編はこちら!)


自ら考えて試行錯誤すること


はじめは、JDP理事長・深野弘行さんからの
「これまで、JDPは組織として何を目指すのか、あまりオープンな議論ができていなかった。デザインへの関心や期待が高くなっている今、課題を見つけて、2030年までに優先して達成すべきこと、そのために必要な組織文化を掲げた。これを皮切りに、もっとデザインの可能性を拡げていきたい」
と、オープニング挨拶からスタート。

その後、今回のパーパス制定プロジェクトを率いた、JDP事業部長・津村真紀子さんと、KESIKI CDOの石川俊祐による、パーパス制定の裏側を語るトークセッションが始まりました。

津村さんは、「サポートするための組織として長年やってきているので、自分たち自身がどうしたいか、未来をどうしていきたいかということを考えたことがなかった」と振り返ります。

KESIKI石川は、「私たちが言葉を考えるのではなく、JDPのみなさんが元から持っている想像する力や、デザインに対しての信念を、言葉として引き出していく作業だった」とコメント。

「KESIKIが実践するデザインアプローチは、みなさん側にいかに自分から考え、手を動かす体験をつくれるか、というところにカギがあると思っています。これまでやったことがないことに対して、小さな成功体験やわくわくするような時間を作ることで、少しずつ本音や主体性が生まれていく。

カルチャーデザインは、パーパスを作るだけではなく、組織の中にいる一人ひとりが、今までなかったマインドやスキルを、自分で手に入れることが大切なんです」(KESIKI 石川)

津村さんの印象に残っているのは、全員参加のワークショップで、部署の違う人たちと会話する中で「この人こんなこと考えていたんだ」と気付かされたことだそう。

初めはみなさんおとなしい雰囲気でしたが、全員がフラットな場で自分の考えを仲間と共有することで、自分も自由に意見を言っていいんだ、という自信がついて、議論も活発になっていきました。

「いくらセミナーで言われても分からない。自ら考えたり、試行錯誤したことで、眼の前の仕事が違う結果になった、という経験が必要なんです。その機会をつくれるのが、デザインの一つの役割だと思う。人間性や働くことの意味なんかにも繋がる大事なことですよね。」(KESIKI 石川)

デザインを届けるべき人たちは?


次に、JDPがパーパスの実現を目指し、2030年までを目安として注力する3つのプロジェクトについてどう取り組むか、KESIKIの九法崇雄がファシリテーターとなり、第一線で活躍するゲストを招いた「公開作戦会議」を行いました。

まず1つめの「Design Playground」(デザインで遊ぶ)は、子どもから大人まで「デザイン」との距離が遠い人に対して、わくわくする体験によっていかに気軽な接点をつくるか、という取り組み。このプロジェクトに関して大切なのは、そもそもどんな人にアプローチするか、ということ。

そこで、KESIKI九法から投げかけた問いがこちら。

JDP常務理事・矢島進二さんは「小学校4年生までの子どもたち」と回答。
「いろんなことをピュアに受け止められるのは10歳ごろまでと言われている。学校教育でデザインを教える時間っていうのは限られてしまっている。先生もどう教えたらいいか分からないと思うので、JDPとしては何かしら協業をすることで実際にデザインをする体験を含めて機会を提供していきたい」と構想を語りました。

パノラマティクス主宰・齋藤 精一さんの回答は、「デザインに気づかずにデザインを使用している人々」
その理由は、「デザイン業界の人達だけで議論することに限界があると思っている。誰もが、それをデザインだと知らないだけで、自然とデザインを使っている。それがデザインであるということに気づいてもらう必要があるのではないか」とのこと。

経済産業省 商務・サービスグループ デザイン政策室長の俣野敏道さんからは「今現在生きている人だけでなく、未来に生まれてくる子どもたち、地球や自然のことも考えて議論していくと良いのではないか。JDPのパーパスからもそんなメッセージを感じた」との意見も出ました。

デザインが必要になる分野


JDPの注力プロジェクトの2つ目は「Design Institute」(デザインを探求する)。JDPのこれまでのアーカイブやネットワークを活かして、よりデザインを様々な分野で応用していくための調査や研究をしていくというもの。この活動に際し、もっとデザインが必要になる分野・テーマについて、それぞれの意見を伺いました。

事業構想大学院大学学長/JDP理事の田中里沙さんは、「起業・スタートアップ」と回答。
「デザインは、思考や概念を形にできるという力がある。起業家や経営者のビジョンや試行錯誤のプロセスもデザインで伝えていくことができれば、よりいろんな人の共感や協力を得られる。ある程度形になっていないとデザイナーに相談しちゃいけないと思っているのかもしれないけれど、ゼロベースで相談してもいいと思う」と話しました。


JDP矢島さんは「準公共分野」
「教育や医療など、これまで行政が主体で取り組んできたセミパブリックの領域にデザインが必要。デジタルやクリエイティブが導入されている。若いデザイナーが入っていったり、すでに兆しはあるので、そこをより加速させられたら」と語りました。

HAKUHODO DESIGN代表/JDP理事の永井 一史さんの回答は「心」「SDGsの次の新しい指針としてIDGs(インナー・デベロップメント・ゴール)ということが言われ始めている。究極的には、人の心が大切なのではないか。Gマークに”心のデザイン”というカテゴリーができたら面白いかも。哲学や宗教が持っていたものに限りなく近いと思う」と話しました。

日本のデザインを世界へ


3つ目のディスカッションのテーマは「Design from Japan」(デザインを世界に発信する)。日本のデザインを世界へと発信していくためのカギはという質問に対して、様々な意見が交わされました。

経産省・俣野さんは、「デザインミュージアム、デザインカウンシル」と具体的なアクションを提案。
「これが日本のデザインだよね、という共通認識をカウンシルで取りまとめつつ、ミュージアムで世界へとブリッジしていく。JDPがうまく旗振り役をしながら、官民連携して議論していくべき」と話しました。

JDP矢島さんも「まだ日本のデザインの魅力が、共通認識として明示できていない」と、俣野さんの課題に共感。
「海外から見た日本のデザインのイメージは、従来のクルマや家電だけではなく、アニメ、映画、コンテンツ、民芸などに、すでに少しずつ移行してきている」と話します。

事業構想大学・田中さんは「地域の文化」にヒントがあるのではないかと言います。
「日本と一括りに言っても多様。各地域に眠っている伝統工芸や文化を、若い人の感性で掘り起こし、デザインして、世界に発信していける可能性がまだまだある」

HAKUHODO DESIGN・永井さんは、日本のデザインの価値は「心遣い」だと話します。
「近年のGマーク受賞デザインを見ていても、明らかに心が存在しているように思う。また、MoMAはMUJIのデザインを“マイクロ・コンシダレーション”(細やかな心遣い)と表現したそう。お辞儀の文化や電車が時刻通りに動くこととか、そんなところがやっぱり日本らしさだと思う」

斎藤さんの回答は「アニミズム」
「八百万の神、ものを大切にする心。サーキュラーやサステナビリティって昔から日本にある考え方だし、配慮や忖度もいい意味で日本らしい文化。ものに対して魂を感じることができるということは、まさしく日本の強み」と語りました。

日本のデザインの未来について、様々な角度から議論が交わされた密度の濃い時間でした。JDP、そしてKESIKIを含め今回のゲストや参加者が一緒になってデザインを拡げていくというチャレンジの第一歩となったことと思います。

KESIKIも、「デザインを一人ひとりの力に」というパーパスに共感し、今後もJDPと共に日本のデザインを考え、アクションしていきます。

これからの進展にも、ぜひご注目ください。

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