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短編小説。

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2022年7月の記事一覧

しあわせ。

しあわせ。

「いや!すごいだろ!」
「あははは!なにそれ!」
今日も他愛もない話で盛り上がる。あなたの隣で笑っていられるだけで幸せだった。
「あれ?次の授業なんだっけ?」
「…」
「ん?ねぇ、聞いてる?」
返事が返ってこなかったから、ふとあなたの方に目を向けた。

そこには、教室の端で女の子と笑い合う“あの子”を見つめる君がいた。

あぁ。そうか。
本当は分かってた。あなたがどれだけ“あの子”が好きなのかも。

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永久花~Dried Flower~

永久花~Dried Flower~

「なんでスマホばっかみてるの」
「は?別に良くない?」
いつからこうなってしまったのだろう。
「よくないでしょ。私とこうやって会ってるのに」
「だって別に2人でいても喋らねぇもん」
他愛もない会話をしていても、気がつけば口喧嘩をしてしまっていた。

ごめんね。
私じゃない方があなたはよかったのかも。

ずっと言おうと思ってた。
私たち、もう無理だねって。

そう。2人は終わった。
1秒にも満たない

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ワンルーム

ワンルーム

「今年の夏は、一緒に花火見に行こうか」
「いいね!行こう!」
―あの時の君の笑顔を、君との約束を、僕は果たすことができなかった。

***

僕の春は終わった。
これから始まる暑いこの季節を、君と迎えることは叶わなかった。
「もう…会うこともないのか」
君1人がいないだけなのに、部屋がものすごく広く感じた。

窓を開けた。窓

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セブンスター

セブンスター

わかってる。どれだけ手を伸ばしても届かないことも。私になんて振り向いてもらえないことも。

***

「あ!先輩!お疲れ様です!」
「おぉ、おつかれさまー!」
今日もいつもの場所にあなたを見つけた。

「ちょっと先輩、またたばこ吸ってたんですか?」
「なんだよ。だめか?」
私が咎めるような視線を向けても、気にせず胸ポケットから

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あとのまつり。

あとのまつり。

僕が大切にしたいと思うのは君だってことに気づいたのは、君を失ってからだった。

***

雨が降っていた。僕らのこれまでを、全て洗い流してしまうように。
「私ね、疲れちゃった。もうダメみたい。」
そう言って消えそうな笑顔を浮かべ、君は部屋を出た。君の最後の言葉が、部屋に1人残された僕の頭の中にこだまする。

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しんでれらぼーい。

しんでれらぼーい。

ねぇ、私さ、高望みしてたのかな。
「私だけを見ててほしい」なんて、贅沢だったのかな。

***

「好きだよ。」
「え?今なんて…」
「だから、君が好きだよって。」
「え、あ、ありがとう。」
「彼女になってくれないの?」
「よ、よろしくお願いします。」
ずっと好きだったあなたからの突然の告白。そんなの断れるわけないじゃない。

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