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心の重力

私は障害者福祉施設で働いています。

障害をお持ちで、施設を利用され、就労に向けて頑張っている方々と過ごす中で気をつけていることがあります。

それは「微笑み」です。

相手がどんなに早口でも、自分のペースで話し、相手が何度同じ話をしても、丁寧に聴くようにしています。

ゆっくりと、どっしりと。

支援者として障害者と対峙するとき、障害者も支援者を見ています。

彼らはとても敏感です。

忙しい素振りをすれば近寄ってきませんし、表情が曇っていれば自分が何かしたのではないかと落ち込んだりもします。

信頼に足る人物だと思ってもらわなければ、相手にもされません。

それは一般的な社会と同じ構造なのだと思います。

人間関係の構築には、信頼関係の構築が必須。

この当たり前の関係を築くことが困難なケースがあります。

それは私たちの身体が重力に引かれているように、心や精神も重力に引かれているからこそ起こり得ることなのです。

心の重力とは何なのか?

最後までお付き合いいただけると幸いです。

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私たちの心は、目に見えません。

しかし、質量は在ると思いませんか?

落ち込んだときは「心が沈む」感覚があり、嬉しいときは「心が浮く」感覚を抱いた経験はないでしょうか?

仮に、心にも重力が働いていると考えるのなら、私たちは常に心が一定以上沈まないように堪えていると考えることが出来ます。

これが「心を保つ」状態だと言えるでしょう。

心に重力が働いているのなら、「心が沈む」のも当然であり、それを解明する必要がなくなります。

つまり、ネガティブ思考やマイナス思考に陥るのは「心が重力に引かれているからだ」という説明で済んでしまうのです。

下向きのベクトルが働いていることが標準であるならば、「心を保つ」状態自体が、実は素晴らしいメンタルバランスであり、「平穏が幸せだ」とする見解にも整合性が生じます。

「0」が標準なのではなく、重力加速度のような力が私たちに「ー(マイナス)」の負荷を与えているのが標準なのです。

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他者との関係についても、考えてみましょう。

好意を抱く相手には心が惹かれます。

苦手な相手には心も距離を作ります。

相互に好意を抱く関係性であっても、重力が増してしまえば、ともに負荷を感じるようになるでしょう。

…これは「共依存」といった関係性に代表される状態でしょう。

反対に、相互に嫌悪感を抱きつつも、重力が逓減する関係性もあるでしょう。

…これは「好敵手(ライバル)関係」などが挙げられるでしょうか?

では、障害者と支援者の関係性において、どのような状態が良いのでしょうか?

私は、支援者側の「心を保つ」能力が関係性を左右すると考えています。

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「心を保つ」には、いくつかの状態が考えられます。

常に「0」から動かないようにすること、相手に心を動かされても平常に戻ること、そして、自ら心を動かしながらも平常を保つこと、です。

彼らはとても敏感です。

「心を保つ」ことに意識していては、十分な支援を受けていないと感じる方もいるかもしれません。

無意識に、自分の心に絶対軸、絶対座標を定めておかなければ、彼らとは向き合えないと私は感じています。

人と接するということは、何らかの力が心に作用することになります。

揺さ振られ続けると、心は平穏を忘れ、保つべき絶対軸、絶対座標を見失います。

対人関係ストレスによるメンタル不調とは、心にかかる重力を感じ取る力が損なわれた状態なのではないでしょうか?

あくまでも想像上の話となってしまいますが、自分の心の重さと、その心を引く力を感じ取ってみてはいかがでしょうか?

力を量る感覚が優れている人が、ストレスに対するレジリエンス(耐性)の高い方なのだと思いますし、そのような能力が、障害者支援をはじめ、介護職や営業職など、人と接する業務に就いている人には必要な技術なのだと思います。

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ということで、最後までお読みいただきありがとうございました。

今回の投稿は以上です。


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