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【コラム】ウクライナ戦争1年半 永住希望者へのさらなるサポートを

ウクライナ侵攻が始まり1年半の節目も「特別な日ではない」

 雇用保険などとの関係から、「人とヒトの幸せ開発研究所」の開業日をいつにするか、ずっと悩み続けてきました。思いついたのは、ウクライナ侵攻の1年半の節目である8/24にすること。ウクライナ支援は、この1年半、私の大きなテーマであり、これからも支援を続けていきたいと考えていました。ウクライナの独立記念日(1991年)でもあり、何か関連した日にしたかった。これに合わせ、何か避難民とイベントなどできないか、とも考えましたが、ウクライナの友人からはこんな返答でした。

I don't think it needs to be linked to this date…here any dates with a war are terrible, everyone is waiting only for the date of Victory
この日付とリンクさせる必要はないと思う......ここでは、戦争が続いている日はどれもひどいもので、誰もが勝利の日だけを待っている。

 記者時代も、どうしても「節目」を意識してしまいがちですが、当事者にとっては「特別ではない、ただの一日」。本当に長く、苦しい日々を送る人たち。一日も早い平和の日が来ることを祈っています。

 避難の渡航費や生活費、NPOの活動助成など、ウクライナ支援を続けてくれている日本財団が、半年の節目に避難民へのアンケート結果を公表しましたので、今回はその数字から見えてきたことを書き記したいと思います。


「できるだけ日本に長く」が増加


 避難民への生活費支援などを2000人に対し支援を続けてきた日本財団は、過去3回のアンケートを実施。第1回(2022年6月13日~7月27日、260人回答)、第2回(2022年11月28日~12月12日、750人回答)に続き、今回が3回目( 2023年3月4日~6月16日、1077人)となります。2回目と3回目は、詳細なデータがHPにアップされており(日本財団HP、【日本国内における支援】の調査・研究をタップください)、比較することができました。

 あまり変化がないのは、就労と日本語。
 就労について、第2回で「働いていない」と答えたのが60.9%に対し、第3回は57.5%と微減。この半年で、少し就労が進んだのでしょう。「仕事を探していない」人も、41.6%→39.4%と少し減り、いまだに仕事をできているのは4割程度ということが分かります。

 また、日本語についても、「ほとんど話ができず、⽇本語が聞き取れない」が46.9%→41.8%と、少し改善を見せたものの、依然として最も多くの回答となっています。「少し話ができ、簡単な⽇本語のみ聞き取れる」も35.7%から38.9%と微増。日本語学校に通う奨学金や、様々な支援、地域日本語教室などで学ぶ方が増えているのかもしれません。

 一方で、「帰国意思」は大きな変化を見せています。これは第1回のアンケート結果も公表されており、「ウクライナの状況が落ち着くまでは、しばらく⽇本に滞在したい」と答えた方が、第1回は65.1%に対し、第2回40.8%、第3回39.4%と徐々に減少を見せています。

 さらに特筆すべきは、「できるだけ長く日本に滞在したい」が、第1回はこの設問が設定されていないものの、第2回の24.7%から、第3回は33.1%と、3人に1人が「長期滞在」の意思を示していることです。

より長期の滞在を視野に きちんと就労のサポートを

 もちろん、回答者数のずれがあり、単純比較はできませんが、この3回のアンケートから見えてきたのは、ウクライナ避難民の中でも「戦況次第ですぐに帰国したいので、仕事や日本語には関心がない」層と、「戦況が長引き、永住も視野に長期滞在を検討を始めた」層の、2極化がより顕著になったのではないかということです。

 すぐに帰国したい方たちは、長期の滞在を見越していないので、日本での安全な暮らしを最優先されていると思われます。現に、アンケートの「給付⾦、⽣活物資の提供以外で、必要な⽀援は何ですか」の設問で、「仕事の紹介、職業訓練」の40.2%を抑え、「遊び・観光」が45.3%と最も多いことからも、平和な生活を望まれる方が多いことが推測できます。

 一方で、長期滞在を考える人が増えたことは、さらにより丁寧な支援をしなければいけないと考えます。ずっと言い続けてきましたが、やはり就労と日本語です。

 日本社会は、日本語力がない外国人が働こうとすると、どうしても単純労働ばかりになってしまいます。日本語力も、よくわからず「とりあえずN1(日本語能力検定で、5段階で最も高い能力)で」という企業が多い。一度、問題例を解いて、日本人でもN1は難しいということを理解してほしい! しかも、現地ではハイキャリア(医者や弁護士など)にいた方も多く、単純労働に抵抗がある方が多いのも事実です。

 ウクライナ人は、突然の戦争勃発に、日本へ避難することを想定していなかった方が多いです。たまたま見つけた避難民受け入れプログラムが日本で、日本語の勉強など、これまで想定もしていなかった方たちです。技能実習生や留学生は、ある程度本国で日本語を勉強してきますが、ウクライナ人の多くは、「ゼロ初級」と呼ばれるゼロからの日本語学習。日本での日本語教育は、直説法と呼ばれる、「日本語で日本語を教える」ことが一般的で、なかなか習得も進んでいないのも事実です。

 私も、「仕事をしたいけど、なかなか日本語が上達しない」「なかなか日本では私に合う仕事が見つからない」などの相談を多く受けてきました。帰国希望者と長期滞在希望者には、「公平性」にとらわれて一律に同じサポートをするのではなく、それぞれにカスタマイズしたサポートを考えるべきではないかと考えます。

 長期滞在希望者が増える今、「それぞれの個性を生かし、日本語力がなくても働ける場」を、日本社会全体で考えなければいけないのではないでしょうか? 同時に、できればロシア語やウクライナ語で日本語を学べる場(オンラインでも)も整備する。これはウクライナ避難民のみならず、これからさらに多様化する外国人材を受け入れるインフラとして、絶対に必要なことだと考えます。

4月に開いた避難民による料理イベントは、多くの参加者にご来場いただいた

 私も、「人とヒトの幸せ開発研究所」として、戦争後を見越し、様々なアイデアを避難民とともに練っています。また形になれば、ぜひお知らせします。

サポートをお願いします! ウクライナ避難民の定住化や、終戦後に向けた復興、外国人材受け入れの生活環境整備など、基金として活用させていただきます。