見出し画像

『教育の投資効果』

何故私立の医学部は授業料が高いのか?
そう疑問に思われる方も多いはず。
そりゃ一人前の医者を育てるのにそれだけ費用が掛かるに決まってる。または、実験や実習が多いから高額機械を多く揃えないと教育できない。なんて、理解されてる方もいらっしゃるでしょう。
もちろん、それも理由の一つです。でも、もっと分かりやすい理由は、
卒業後に得られる収入の期待値に基づいてる
ということです。言い換えると、
医学部卒業後に払った学費以上の収入が得られる」からということです。
これは市場経済の原理に則ってるわけで、当然ながらその金額は入学希望者にとって見合った金額なのです。景況もありますが、軒並み医学部授業料が高騰してるのは医学部人気を反映した、需要が引っ張るものと考えてもいいでしょう。

医学部という分かりやすい事例から始めましたが、教育に掛けるお金は『投資効果』を持ってます。少し下品な言い方をすると、教育は「割りと率の高い」商品だと思います。
「家庭教師が何を手前味噌なこと言ってやがるんだ!」とお叱りを受けそうですが、そういう営業ベースの話ではないので最後までお付き合いください。



進路に迷ってる高校生と話をする時、
どうせ勉強しないなら専門学校でも良い
って結論に行き着くことがあります。そして、
自分は専門学校でも良いけど親が許さないから困る
ってことになるのです。
さて、こういう時、
どうして専門学校ではダメなのか?
という押し問答にどう対応しますか?


現実の社会を実際に経験して、「大学も有名大学に行かないとあまり意味がない」と実感されてる方も多いでしょう。または、「有名大学を出ても使い物にならん奴は使い物にならん」なんて思われてる方もいらっしゃるでしょう。実社会は個々人の資質や取り巻く環境に依るので、学校に対する考え方は様々なものになってきます。実は、そこが少し進学に対する考え方を捻じ曲げることになります。
少しでも有名な学校、高い偏差値帯の学校へ進学させたいのは親心ですし、その為に塾に通わせたり補助的な出費を惜しまない、これは意識的にせよ無意識にせよ、投資です。ですから、今日はこれには言及しません。進学という人生の岐路に立った時、様々な事情で進学へ消極的になってしまうことがあります。その場の雰囲気に任せて短絡的な結果を導いてしまうことも多く、そういう場合について少し考えてみましょう。

" 親の負担、それを負担に思う子供 "

日本は国立大学でも授業料は年間50万円を越えます。高校は国からの支援金も拡充され授業料本体への負担はかなり軽くなったと言って良いでしょう。とは言え、諸費用が全く無いわけではなく、子供を高校に通わせることには相当な家計からの出費が必要です。大学で一人暮らしさせるとなるとだいぶ覚悟しなければなりません。こうした家計における経済的事情は進学の決定に大きく作用します。もちろん、無い袖は振れないわけですから家計を逸脱した進学計画を立てることはできません。ただ、そうした経済事情をボトルネックにしてしまうとあまり建設的な考えに至らないと思うのです。
日本の一般家庭は、
親の経済的負担において子供が勉強する
という構図で成り立ってます。その為に親の経済力と子供の学力が比例すると言われます。また、未だに学歴社会であり、中卒より高卒、高卒より大卒。無名校より有名校、偏差値はより高い学校を卒業した人間が社会的に優遇される構造にあまり変化はありません。親はこの構造を現実社会で分かってるからこそ子供に勉強をさせようとする。親が子供の教育に熱心になるのはむしろこの一点からと言っても過言じゃないような気がします。
親の大きな負担、子供がそれを理解しない筈はありません。子供自身も常にそれを意識しながら生活してます。「親の心子知らず」とは言われるものの、決してそんなことはありません。小学生はいざ知らず、中学生ともなると塾や家庭教師といった自分自身のプラスアルファの出費を意識しています。成績が芳しくない子供は常に針の筵(むしろ)の心境です。この針の筵の上に長く居ると、そこから解放されたくなるのは自然です。親の負担が自分への負担となり、その罪悪感が子供の心を蝕みます。勉強に対する嫌悪感が生まれる瞬間です。他者への同情という極めて真っ当な心の作用ではあるのですが、出てくる結果が良くありません。こうなれば、勉強の意欲が無くなるどころか、将来への展望もなくなり、それこそ思考停止を迎えます。現状をどうするかで紛糾し、将来の話もままならない。そうして「勝手にしろ!」って短絡的な結果になりがちです。
大学へ行く余力がありながら専門学校を志望する。
高校を中退する。
または、受験直前に進学塾や予備校を辞めてしまい投げ槍状態になってしまう。

こうした状況は得てして親子のコミュニケーション不全から生まれます。この不全に陥ったコミュニケーションをどう打開するか?そこを『投資』という着眼点で進学を考えてみませんか?

" 勉強させる投資と勉強する投資 "

投資』とは数期先の生産増強の為に投下する資本のことです。有形無形の何かと交換する為の資本(お金)ではないので、特に家計に於いては特別な支出のように捉えられがちですが、生産力を向上させなければならない企業会計ではごく当たり前な支出です。例えば、専門学校と大学では通学期間の長さもあり大学の方が明らかに費用が掛かります。大学では本人が勉強するしないに関わらず学費は掛かります。即戦力の技術を身につけ、学費も掛けずに社会人になれる専門学校は魅力的に見えますが、現実では大卒と専門学校卒の待遇の差は歴然としてます。これは正に社会に出てくるまでに本人に幾ら掛かってきたのか、
つまり「投下された資本」が、如実に現れるわけです。
本人の努力如何に関わらず掛けられたお金次第というのはいかにも冷たい現実のように見えますが、それが資本主義社会の現実なのです。

(私自身は理想家なのでこうした現実を受け容れ難いのですが、理屈と現実がシビアにマッチしてる事実は認めざるを得ません)

資本は現金だけが資本ではありません。投下される労働力も資本です。勉強という労働も投資です。これはもっとわかりやすいですよね。勉強すればするほど投下される資本が大きいわけで、見返りも大きいわけです。もちろん、この手の理屈は言葉は違えど子供には日常的に言い含めてる内容だと思います。それがなかなか通じないから忸怩たる思いを抱かれている方も多いでしょう。
私は子供に対して、こうした投資の観点を強く訴えます。私の場合、第三者的な話ができるので、お金を使う親の立場と労働力を行使する子供の立場を同時に話すことができます。様々な要因でやる気が起こらなくなってる子供でもこの投資の理論を理解することで少なからず心境の変化が生まれます。私は、投資の結果に何が待ち受けてるのか、そのシビアな現実をかなり詳しく子供たちに話します。現実の日本社会は階層化が進み、気がつけば人間はその階層に振り分けられている。一度その階層に属すれば個人の力でなかなか別階層へ移動するのが難しい。正社員や派遣社員、フリーターの待遇格差と就業ステータスを自力で変化させることの難しさは、この階層社会の分かりやすい例ですね。
若者は夢を見がちではありますが、本気で夢を追う子供の将来設計は多少無理があっても容認できます。残念ながら、進学が家庭内の問題になる子供は現実から目を背けがちです。それと同時に、親の方もシビアな現実を脅しの材料に使いがちで、聞き手に効果的なメッセージにはなりません。こうして、家庭内の会話で持ち出される「現実」という言葉ははむしろ非現実的なものにしかならないからコミュニケーション不全に陥るのです。
私は同時に、
教育における親の負担は当然である
という日本の常識に対しても疑問を抱くよう子供に訴えます。先にも述べた通り、アジア社会の教育事情において、教育に関する費用は親が負担するのが当たり前です。それは決して世界標準ではありません。子供が自分で奨学金を得て進学することが主流な文化圏もありますし、国の負担で教育を得られる文化圏もあります。決して日本の奨学金制度は手厚いものとは言えませんが、自力型の進学も不可能ではありません。また、少なくとも親の負担を軽減させることはできるので、進学における精神的対等性を持つことができます。ここまで、親子で話ができるようになればもう決してコミュニケーション不全とは言えないでしょう。

実は私は二枚舌です。上記の内容で子供と話すこともありますが、
親が子供の教育の負担をするのは当然だから、甘えられる時は甘えておけ!
ってことも私の常套句です。相反することなんですが、こうしたことを言う状況は似通ってます。やはり、子供が親の存在を負担に思っている状況ですね。子供と親との関係の違いによって使い分けてます。いずれにせよ、教育の機会を失うことが無いように、投資という観点で説明しています。

ほとんどの家庭で経済的な話題を子供と話し合うことはないと思います。しかし、費用だけの話だけではなく包括的な経済の話は決して不可能ではありません。親子間で経済の会話も悪くないもんですよ。
ただし、絶対に感情的な言葉はご法度です!



要は話し方によりますよ、ってことなんですが、それでも現実の厳しさを若者に押し付けることには変わりがありません。本来、私が書いたことはなんの解決策ではないと思います。費用と機会を含めた教育へのアクセスを拡充し、様々な教育を受けた様々な人材を広く受け容れる社会が構築されなければなりません。とかく諦めがちですが、そうした社会変容を促すのが我々現実社会の社会人の役目であり、今現在、教育を受けている子供たちには改革の当事者意識を覚醒させてあげたい、私はそのつもりで子供たちと接してます。

#教育 #受験 #子育て #医学部受験
#不登校 #家庭教師 #学校 #進学








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?