shoot for the stars #シロクマ文芸部

「流れ星だ！」
見上げた空に、ひとすじの光が流れていった。

ケンとコウはバッテリー。
ケンがピッチャーで、コウがキャッチャー。
野球が大好きなふたりは、今日も学校帰りに河原で練習をしていた。

「ケン、もうやめようよ。手が痛いし、暗くなってきた」
コウがまわりを見ながら言うと、まだまだ投げたりないケンは、空に向かって、思いっきりボールを投げた。

◇

驚いたのは、空を気持ちよく飛んでいたツバメだ。
やってきたボールを見て、慌てふためいたが、身をかわしてなんとかよける。
羽根をかすめて、ボールはまっすぐに、空高く上がっていく。

のんびりと浮かんでいた雲も驚いた。
やってきたボールを見て、慌てふためいたが、二つに分かれてなんとかよける。
雲の間を通り抜け、ボールはまっすぐに、空高く上がっていく。

夜になって出てきた月も驚いた。
やってきたボールを見て、慌てふためいたが、満月から三日月に変わってなんとかよける。
欠けた月を通り抜け、ボールはまっすぐに、高く上がっていく。

月を通り抜けてきたボールを見て、星も驚いた。
慌てふためいたが、横に動きながらなんとかよける。

◇

落ちてこないボールを待っていたコウが、空を見ながら叫んだ。
「流れ星だ！」
それを見たケンは、手を合わせて祈る。
「もっと速いボールが投げれますように」

小牧幸助さんの企画に参加させていただきました。
＊以前書いた「空飛ぶストレート」というお話しを少しだけ修正した作品です。