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サッカー選手と遺伝子との関係

以前「スポーツと遺伝子」の関係性に関して簡単ではありましたがご紹介をさせていただきました。

“スポーツと遺伝子のお話”

今回は、ちょっと踏み込んで「サッカーと遺伝子」の関係性に関して面白い研究結果がありましたのでご紹介させていただきたいと思います。

・運動能力の遺伝率
・ACTN3(αアクチニン3) R577Xとは
・サッカー選手と遺伝との関係性

トレーニング、食事、睡眠、メンタル、競技知識などなど...。
当たり前の話ではありますが、スポーツのパフォーマンスには様々な要素が関係してます。
その要素の一つとして“遺伝子”も大きく関係しています。

「運動能力の遺伝率=●●%」

運動能力は「遺伝的要因」「環境的要因」この2つの要因によって構成されているわけですが「遺伝的要因」がどれくらい関係しているかご存知でしょうか。

例えば、交通事故。
交通事故は遺伝的要因は一切関係なく環境的要因にて起きるものですので、100%環境的要因にて起きる事象となります。
また単一遺伝子疾患と呼ばれる1種類の遺伝子の変異が原因で起こる病気に関しては、100%ではなくともほとんど遺伝的要因にて起こりうる病気であるというふうに言われており、遺伝的要因が非常に高いと言えます。

同じDNAを持つ一卵性双生児の研究(双子研究)により、このような考え方で、運動能力の遺伝的要因、環境的要因を調査したところ「66%が遺伝的要因である」という風な研究結果が出ています。
つまり、運動をする上で「遺伝子」との関係性は切ってもきれないものであるという事が言えるでしょう。
これには正直私自身も驚きでした。

参考|De Moor MH et al, Twin Res Hum Genet, 2007

「ACTN3(αアクチニン3) R577Xとは」

突然難しい言葉が出てきて「???」が頭に浮かんでいるかもしれません。
難しいお話ですが、重要なのでちょっとだけこちらの「ACTN3(αアクチニン3)R577X」に関して触れさせてください。「ACTN3(αアクチニン3)R577X」とは一つの遺伝子であり、運動能力に関係する遺伝子です。
タイプII筋線維(速筋線維)の配分に関連した遺伝子であり、タイプIIB(タイプIIx)の割合が多い「RR型」タイプIIA繊維の多い「XX型」その中間型である「RX型」の3つの型に分かれています。
速筋繊維の多さに関わる遺伝子となっており、パワー系アスリートを比較すると「RR型>RX型>XX型」というように「R」を持つタイプのアスリートが比較的多いという傾向も見られているのが現状です。
大きな力を出すためには、多くの速筋繊維が必要となるわけですが、速筋繊維は皆同じ割合持っているわけではなく、遺伝子型によって割合が異なるというわけでせす。スポーツをする皆さんは非常に重要な事なので、しっかり理解していただけると良いかなと思います。

「サッカー選手と遺伝との関係性」

さて前置きが長くなりましたが本題である遺伝子とサッカー選手との関係性です。
結論から言うと、ポディションごとに遺伝子型が分かれていたと言うのが研究の結果にて立証されております。
上記でご説明した「ACTN3(αアクチニン3)R577X」遺伝子『RR型』の割合が、FW>MF>DFの順になっていたと言うことです。

ちなみに、こちらの研究では、Jリーグおよび大学トップレベルチームに所属するフォワード(FW)、ミッドフィルダー(MF)およびディフェンダー(DF)を調査(男子:159名)し、男子選手においてこの傾向があると言うことが分かっているようです。

非常に面白い結果ですよね。
仮説ではありますが、初めてサッカーを始めた小学生の頃、最初にポディションを決める場合、必然として足の早い選手がゴールを奪うFWになるケースが自然だと思いますので、その傾向がこの結果として出ているのかもしれません。
しかしながら、理解としてお伝えしたい事は『「RR型」でなないから将来プロのFWになれない。』と言う事では決してありません。自分の遺伝子タイプを理解し、タイプにあったTRを積むことでプロになれる可能性は十分高くなりますのでその点お気をつけください。


※参考文献
論文|サッカー選手におけるACTN3 R577XおよびACE I/D多型とポジション特性との関連|https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspehss/68/0/68_132_1/_article/-char/ja/#article-overiew-abstract-wrap(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspehss/68/0/68_132_1/_pdf/-char/ja)

論文|筋力トレーニングにおけるトレーナビリティは遺伝的特性に左右されるか? ~ACTN3 遺伝子多型による検討~ 菊池 直樹

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