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[すこし詩的なものとして]0094 遠くで聞こえる

妙に静かで
木の床をコツコツと鳴らしながら
人がひとりひとり吸い込まれていく

吐息と咳払いが響く
季節が到来するように
今年一番の寒気が訪れたらしい
誰もがため息まじるに少しの諦めをもってたたずんでいる

遠くで聞こえる
小気味よい行商の声
甲高い子どもの嘆き
すべては無関心に責任を食いつぶす

恥は忘れられ
恥は君らに追いつけない
そうやってあいまいに
ただ笑って不敵に生き続ける
他者を踏みつけながら

もう終わりにしよう
尖ったナイフをその胸に
ひと刺し
もうひと刺し
すべての後悔と
すべての罪を塗り込めた剣肌を
何度も何度もあきれるくらいに刺し続ける

キノコの胞子は飛び回り
僕らの体に付着する

ぽこぽこ
ぽこぽこ

おはよう
こんにちは
こんばんは

もういいよ
もういい

結局恥はまた上塗りされる
遠くで聞こえる諦めの声
子どもはまた泣きじゃくり
誰かが誰かを騙し
恥はもう君たちを追い抜いた

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生活を維持するために、僕は食べて、寝て、仕事をしている。
右向けと言われて右を向き、左向けと言われて左を向く。
少なくともそこに意思は存在するようでしていない。
じゃあ君はなにをしたいんだ。
そんな問いに答えられなくなって数十年。
人の波とはそういうもので、すべてがさざ波のようにゆるやかに流れていく。上を向くと、澄んだ青空が広がっている。それを見ると、よし生きようと思うのは、なぜだろう。そこには意思が存在する。
もう少し時間が経てばわかるのだろうか。

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