地球から離れてどうだった?『宇宙から帰ってきた日本人』を読みました。

経験したことがない体験の一端を知れるのは読書のよいところです。
宇宙飛行を経験した日本人は12人だけです。その12人が何を語るのか気になって、読みました。宇宙飛行を「出張」だととらえる人がいたり、人生がかわったり、その大なり小なりのインパクトがおもしろかったです。その感想を綴ってみます。

宇宙から見る地球

本書では、今まで宇宙に行った12人の日本人に対してインタビューを行っています。どのインタビューでも共通しているのは、「地球を宇宙から見た感想」でした。

その感想は似ているようで、バラバラでした。

宇宙に行くことは、特別な体験でしょう。10年以上訓練を積んで、宇宙飛行に臨んだ方もいました。そして、宇宙から、地球をみました。しかし、見た感想は違ったのです。「感情は、準備できない」ということでしょうか。

youtubeで地球を宇宙からみた映像を探してみました。
実際に宇宙から見るのは違うと思いますが、このような地球を宇宙飛行士は見ていると思うと、感情が追い付かないような気がします。
圧倒的な映画を見た後は、映画館を出るまで、感想がいえないみたいな。

本書から、地球を宇宙から見た感想の部分を引用します。

大西卓也
大西はソユーズでの2日間の航海で、空と勘違いするような地球の海の青さを窓の外に見続けた。それからISSに入って、キューポラなどから地球の姿を再び仰ぎ見て感じたのは、「地球は大きいな」という思いだったという。(p155)
油井亀美也
「私は逆に地球は本当に小さいと感じましたね。宇宙に行っていちばん大きく自分の中で変わったのは。地球というのは本当に私たち人類を守ってくれる母なる大地なんだ、という思いが実感として胸に生じたことでした。」(p170)

大きさという観点でも、感想が違います。
「地球は」という主語を使って語れるのは、宇宙飛行士ならでは、だと思いました。宇宙にいって離れることでしか実感できない感想です。

そして、「美しい」では終わらないあたりに、知性を感じます。
「すごい」を使わずに、「すごさ」を伝えることって難しいです。

「自分の気持ちに正直」+「語彙力が多い」+「言葉の組み合わせと感情のずれを知っている」=「伝わることば」
ですかね。

ほんと、宇宙飛行士って「すごい」んだなって…

一方で、「地球」「人類」「人間」など大きすぎる視点にたてる人はまだ、少ないようです。

土井隆雄
「~略~宇宙からは人間が作り出す文化は見えません。そこに国境というものはなく、地球という海と陸地の織り成す素晴らしい惑星がただただ存在していました。しかし、夜になると、一転して今度は街が見え始めます。灯りが点々としている様子が見えるんですね。」(p225)

「夜の世界にみえる光が、人の営み」と宇宙からわかるということでしょうか。だとすれば、宇宙人は、地球に見える光に興味をもつかもしれません。

「明るい面には見えないけど、暗い面にみえる光はなんだろう?」
by宇ちゅうジン

印象に残ったエピソード

本書を読んで、印象に残ったエピソードがあります。1つは、毛利さんの地球に帰ってきて、水を飲んだシーンです。

「地球で待機している宇宙飛行士が冷たい水をコップで出してくれるのですが、その水がすごく美味しく感じられるのです。つまり、地上でミネラルウォーターを飲んたときのその美味しさとは、生命そのものがもたらすものでした。」(p130)

宇宙飛行士は人工的に作られた構造物の中で宇宙にいます。すべてが人工的で、地球のものによせてつくられています。
だから、地球で自然に近いものに接した時に、生命を感じるのだと思います。「当たり前」が違うと、感じ方が変わる好例です。

少し想像してみます。

1年間宇宙にいて、地球に帰ってきたとき、何をかんじるでしょうか?

・太陽の光がまぶしい。
・空気ににおいがある
・不規則な音が多い
などなど。
嗅覚や聴覚ってかなり、情報量をもっていることが予想できます。
反対に、宇宙では、嗅覚や聴覚に頼ることは少ないのでしょうか。

「雨のにおい」も恋しくなると思うと、
地球でほんと、ドラマチックです。

おわりに

先日、民間企業が有人宇宙船を打ち上げました。
国が宇宙産業を独占する時代ではなくなってきているようです。
いつか、価格が下がって、宇宙飛行がハワイに行くくらいの感覚になるかもしれません。そのとき、人は何に感動するのか、楽しみです。

「教科書でみたことあるな」なのか
「地球って、こんな表情しているのか!」なのか、
どうなるのでしょうか。

「~略~その意味では芸術家の方々を宇宙に送ってみたいですよね。プロのカメラマンが行ったら何を感じるのか。それこそ村上春樹さんが宇宙に行ったら、何を思うのでしょう。その最初の一文に興味があります」p154

当たり前の外側にいって、その体験の一端を知れたとてもいい読書でした。

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。

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