KentoMinamino

弁理士・博士(生命科学)/2020-2021年度弁理士会バイオ・ライフサイエンス委員会委員長 知財実務に関する情報や、バイオ系特許・ベンチャー周りの情報を書き留めていきます。

KentoMinamino

弁理士・博士(生命科学)/2020-2021年度弁理士会バイオ・ライフサイエンス委員会委員長 知財実務に関する情報や、バイオ系特許・ベンチャー周りの情報を書き留めていきます。

マガジン

  • 欧州特許

  • バイオベンチャー概要

  • 医薬品関連特許の検討

  • バイオベンチャーの知財戦略(標的タンパク質分解技術)

    PROTAC、SNIPER等の標的タンパク質の分解システムに関するベンチャー企業の知財の情報を収集及び分析します。

最近の記事

特許は叩くと固くなるのか?

特許は叩くと固くなるという実しやかな噂がある。 例えば、情報提供による権利化阻止に失敗し、特許権が成立した場合、又は異議申立による特許権の取消を狙ったが特許権が生き残った場合、特許権が潰しづらくなり、かえって困るといった話しである。 元審判官等の特許庁の出身の先生で、審判部内で維持決定された事件について、無効にはしにくいよね…といった話しを伺ったこともあるので、まんざら嘘ではない可能性も…? しかしながら、これらの権利化阻止手段及び権利取消手段が無効審判に影響を与えるかは検

    • 配列表フォーマットの移行(ST.25→ST.26)

      1.概要2022年7月1日から、配列表のフォーマットが、現行のWIPO標準ST.25からWIPO標準ST.26に全世界で一斉に変更されます。 これに伴い、2022年7月1日以降に行なう出願では、WIPO標準ST.26に準拠した配列表の添付が必須となります。 また、WIPO標準ST.26に対応した配列作成ソフトは、WIPOからの提供のみとなります(3.参照)。 2.対象となる出願(1)通常の出願・国際出願 2022年7月1日以降に行なう特許出願および国際出願については、WI

      • 欧州統一特許の運用開始

        1.まとめ(2022年3月10日時点) 2.欧州統一特許の制度概要・制度開始時期 ドイツの批准書の寄託時期によりますが、制度が開始されるのは、2022年末~2023年頭になる可能性が高い状況です。 ・手続 統一特許の付与を求める場合、欧州特許公報の公開後、1ヶ月以内にその旨を請求する必要があります(単一特許規則 (18))。 当該1ヶ月以内に、特許全体の翻訳文を提出する必要がありますが、英語で出願している場合、対応不要です。 また、英語で出願を行なっている場合、その他のE

        • 欧州統一特許規則(仮訳付き)

          GitHubを使えば、noteに表を埋め込めると聞いてお試しで。 対訳を埋め込むには、noteは幅が狭いですね。 REGULATION (EU) No 1257/2012 OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL

        マガジン

        • 欧州特許
          1本
        • バイオベンチャー概要
          1本
        • 医薬品関連特許の検討
          2本
        • バイオベンチャーの知財戦略(標的タンパク質分解技術)
          2本

        記事

          Beam Therapeutics(ゲノム編集)

          1.会社概要社名:Beam Therapeutics Inc 設立年:2017年 所在地:Massachusetts Cambridge, America 上場/非上場:米国NASDAQ上場(2020年2月) モダリティー:核酸医薬(ゲノム編集技術)/細胞医薬 2.コア技術CRISPR/Cas9システムをターゲティングシステムとして用い、CRISPR/Cas9に連結させた塩基編集酵素により塩基編集を行なう技術をコア技術とする。 CRISPR/Cas9システムは、Broad研

          Beam Therapeutics(ゲノム編集)

          中国のパテントリンケージ制度

           2021年6月1日に中国専利法第4回改正法が施行される。今回改正法の施行に伴い、日本及び米国と同様に、中国においてもパテントリンケージ制度及び医薬品の薬事承認に伴う特許権の存続期間の延長制度が導入されるため、手持ちのパテントリンケージ制度の情報を整理した。  トランプ大統領の圧力により、パテントリンケージ制度をしぶしぶ導入したという感じが滲み出ている制度設計であり、運用次第であるが、新薬医薬品メーカー、特に、バイオ医薬品を販売するメーカーにとってはメリットの薄い制度となって

          中国のパテントリンケージ制度

          令和2年度のバイオ委員会の答申書

          本年度は、バイオ・ライフサイエンス委員会(バイオ委員会)主催の研修会ができなかったため、弁理士会の委員会活動の宣伝もかねて本年度の答申書のテーマについて簡単にご紹介します。 本年度の活動成果については、次年度の研修テーマとなる予定ですので、興味のあるテーマがあれば研修で直接聞くことができるかも! ・バイオ委員会の活動内容バイオ・医薬関連の国内外のプラクティス、法改正、新技術に関連する特許、バイオベンチャーの知財戦略の調査および研究を行なっています。 部会のテーマは、喫緊の課

          令和2年度のバイオ委員会の答申書

          mRNA-1273(SARS-CoV-2ワクチン、Moderna社)

          (特に構成は練っていません。) 1.mRNA-1273の概要昨年からSARS-CoV-2が世界中で猛威を振るっており、治療薬とともにワクチンの開発が望まれていた。そして、米国では、2020年12月11日にBioNTech社/Pfizer社のmRNAワクチンBNT162b2について緊急使用許可され(1)、同年12月18日にModerna社のmRNA-1273についても緊急使用許可された(2)。 両ワクチンは、従来のウイルス又は抗原タンパク質を免疫原とするワクチンとは異なり、S

          mRNA-1273(SARS-CoV-2ワクチン、Moderna社)

          Macugenに関する特許

          1.製品の概要一般名:Pegaptanib モダリティー:核酸分子(アプタマー) 標的分子:VEGF165 承認年度:米国2004年;欧州2006年;日本2008年 開発元: NeXstar Pharmaceuticals(現Gilead Sciencesと合併)→ EyeTech Pharmaceuticals(OSI Pharmaceuticals、アステラス製薬により買収) 作用機序:VEGFは、血管新生、血管透過性及び炎症を惹起する細胞外分泌型のタンパク質の一種であり

          Macugenに関する特許

          標的タンパク質分解誘導技術

          現在販売されている医薬品のモダリティーは、低分子化合物又は抗体等のタンパク質が多くを占めている(売上ベースで約8割)。これらのうち、低分子化合物は細胞膜の透過性に優れ、標的タンパク質の酵素活性を阻害できることから、細胞内外の酵素タンパク質を標的とし、抗体は、高分子であり細胞膜の透過性が乏しいものの、標的タンパク質に特異的に結合できることから、細胞外のタンパク質を標的としている。 他方、現状のモダリティーでは、細胞内に存在し、かつ酵素活性を有さないタンパク質を創薬の標的タンパ

          標的タンパク質分解誘導技術

          Arvinas社の特許戦略(PROTAC)

          1.会社概要社名:Arvinas Inc 設立年:2013年 所在地:New Heaven, America 上場/非上場:米国NASDAQ上場(2018年9月) モダリティー:低分子化合物(標的タンパク質誘導技術) 2.コア技術Yale大学のDr. Craig M. Crewsらが開発した、タンパク質分解誘導キメラ分子(Proteolysis Targeting Chimeras:PROTAC®)技術をコア技術とする。PROTACは、標的タンパク質誘導技術の1つである。な

          Arvinas社の特許戦略(PROTAC)