Beam Therapeutics(ゲノム編集)

1.会社概要

社名:Beam Therapeutics Inc
設立年:2017年
所在地:Massachusetts Cambridge, America
上場/非上場:米国NASDAQ上場(2020年2月)
モダリティー:核酸医薬(ゲノム編集技術)/細胞医薬

2.コア技術

CRISPR/Cas9システムをターゲティングシステムとして用い、CRISPR/Cas9に連結させた塩基編集酵素により塩基編集を行なう技術をコア技術とする。
CRISPR/Cas9システムは、Broad研究所のDr. Feng Zhangらが開発した技術である。また、CRISPR/Cas9システムに、APOBEC、AID等のシチジンデアミナーゼと組合わせた塩基編集システム(Base Editors)は、Broad研究所のDr. David R. Liuらが開発した技術である。このため、Beam社は、主に、Broad研究所で確立された技術をベースに活動を行なっている。
Base Editorsは、DNAを対象とした技術であるが、RNA編集技術を有する英国ベンチャー(Blink Therapeutics社)を合併し、現在は、DNA及びRNAの両者を編集可能な技術を保有していると推定される。
Beam社は、Broad研究所(Editas Medicine)に加えて、神戸大発ベンチャーであるBio Palette社から、シチジンデアミナーゼとしてAIDを用いるTarget-AIDのヒト治療用途でのラインセンスを受けている。

CRISPR/Cas9システムで変異を入れる場合、変異により生じる変化は予測できない。他方、Base Editorsは、DNAの切断に伴うゲノム修復機構を利用せず、DNAの塩基を変化させることにより塩基異常の修復システムを活性化し、C→T等の塩基の変化を生じさせる。このため、従来型のゲノム編集技術とは異なり、目的とする変異の導入が可能となっている。ただし、塩基変換酵素の制限から、任意の塩基の変化が誘導できるわけではない。

Beam社は、エレクトロポレーション、脂質ナノ粒子(LNP)、又はアデノウイルスベクターを用いた遺伝治療、ゲノムDNAの編集による細胞の改良等に当該技術を適用している(SEC Form 10-K(2019)参照(以下、同様)。

3.提携及び資金調達

2018年5月に8700万ドル(約87億円、Series A)、2019年5月に1億3500万ドル(約135億円、Series A)を調達し、2020年の上場により2億700万ドル(約207億円)を調達している。
2018年5月に、Blink Therapeuticsを合併した。

4.パイプライン

Beam社の標的疾患は、遺伝性疾患であり、他のゲノム編集技術をコア技術とするベンチャーと同様に、鎌状赤血球症及び βサラセミアを最先の開発品とし、その他に肝臓の代謝関連酵素を標的とした遺伝子治療薬の開発を行なっている。
また、細胞の改良技術としては、CAR-Tを対象とした研究開発が進展している。
Beam社のパイプライン(2021年7月4日現在)は以下の通りであり(Beam社HPより抜粋)、BEAM-101(鎌状赤血球症及び βサラセミア)について、Phase 1/2 studyが実施されている。

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5.特許ポートフォリオ及び特許戦略

(1)Base Editorsの基本特許
Base Editorsの基本特許については、Broad研究所及びBio Palette社からライセンスを供与されている。

(2)その他特許
Beam社として、27件の国際出願を行なっており、Base Editorsの改良技術、Base Editorsを用いた治療薬、Cas9の改良タンパク質、CAR-T細胞関連技術、TCR-T関連技術等がから構成されている。

開発品を保護する医薬用途特許となりうるのは、下記出願である。
Beta thalassemia、sickle cell disease:WO2020168133A
T-cell Acute Lymphoblastic leukemia:WO2021062227A
Alpha-1 Antitrypsin Deficiency:WO2020168135A
Glycogen storage disease type 1A:WO2020168088A
Stargardt disease:WO2020168051A

(2021/07/04最終更新)


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