欧州統一特許の運用開始
1.まとめ(2022年3月10日時点)
2.欧州統一特許の制度概要
・制度開始時期
ドイツの批准書の寄託時期によりますが、制度が開始されるのは、2022年末~2023年頭になる可能性が高い状況です。
・手続
統一特許の付与を求める場合、欧州特許公報の公開後、1ヶ月以内にその旨を請求する必要があります(単一特許規則 (18))。
当該1ヶ月以内に、特許全体の翻訳文を提出する必要がありますが、英語で出願している場合、対応不要です。
また、英語で出願を行なっている場合、その他のEU各国の言語の翻訳文を任意で提出することも可能であり、例えば、統一特許に参加していない国の翻訳文を提出することも可能です。
なお、権利化までの手続は、変更ありません。
・各国での有効化との関係
EPO経由で手続した場合、統一特許の参加国については、下記(1)、(2)のいずれも選択可能。
(1)統一特許
(2)各国での有効化(現在の欧州特許)
ただし、統一特許と欧州特許(EPCルート)又は各国特許(各国出願ルート)との二重保護は、原則認められていない(各国特許については、例外あり)。
統一特許で保護される国は、次項の批准国になり、それ以外の国については、現在と同様に各国での有効化の手続を行なう必要あり。
なお、統一特許に参加できるのはEU加盟国だけであるため、欧州特許条約に加盟しているが、EUに加盟していない国は、今後も各国での有効化が必要になる(例外:GB)。
・批准国(2022年1月時点)
オーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン
(ドイツ:批准書の寄託待ち)
統一特許に参加可能な国は、EU加盟国。
・年金費用
3カ国で有効化する場合、年金費用は、(各国特許)>(統一特許)となる。
7~8カ国ぐらいが、年金費用でのメリットが得られる境界。
・裁判管轄
統一特許の裁判管轄は、統一特許裁判所及び各国裁判所の両者となる。
ただし、オプトアウトを提出することにより、各国裁判所のみとすることが可能。
オプトアウトについては、訴訟が開始されていない限り、撤回も可能。
・その他
問い合わせが増えているため、順次アップデート予定です。
3.参考情報
JETROリリース(2022年1月21日)
統一特許裁判所(UPC)協定の暫定適用が開始、UPC設立に向けて大きく前進
単一特許規則(英語)
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/en/ALL/?uri=CELEX:32012R1257
(最終更新日:2022年3月10日)