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「セオリー」の使い方

考えてみると、9割8分は成功するのが守備。
ということは、論理的に正しい形があると考えたほうが筋は通りやすい。(中略)
確立で言えば、守備と違って4割打てるバッターはまずいない。
ほぼ確実に6割以上は失敗するということだ。
ということは、絶対的に正しい論理など存在しないのではないか、そう考えたくなってしまう。
(『稚心を去る』より)


日ハム・栗山監督が著者の『稚心を去る』を読みました。


きょうはその感想、第3回です。

第1回:「目先の結果」と「未来への投資」、大事なのはどちらか?
第2回:「人生のターニングポイント」なんて存在しない


野球には、大きく分けて『守備』と『打撃』があります。

それで、守備は基本的に成功確率が非常に高いです。

ピッチャーはそうそう簡単にはヒットを打たれないですし、『守備率』という、守備機会に対してどの程度ちゃんと処理したか(=ミスをしなかったか)という指標は、プロの選手であればほとんどの選手が9割以上あります。


一方で、打撃はものすごく難しいです。

打率は3割あれば、超優秀と言われます。

イチロー選手が日米通算4,000安打を達成した際の記者会見で、

こういうときに思うのは、別にいい結果を生んできたことを誇れる自分ではない。
誇れることがあるとすると、4000のヒットを打つには、僕の数字で言うと、8000回以上は悔しい思いをしてきているんですよね。
それと常に、自分なりに向き合ってきたことの事実はあるので、誇れるとしたらそこじゃないかと思いますね
(引用:イチロー4000安打 失敗と向き合い、逆境を糧に

というコメントは、特に野球ファンの方なら印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

あのイチロー選手ですら打撃の成功ではなく失敗に言及するくらい、打撃はとても難しいのです。


栗山監督は、守備と打撃のこの成功率の大きな違いを指して『守備には論理的な正解があるけど、打撃には絶対的に正しい論理など存在しないのではないか』ということを書かれています。

言い換えると、打撃に関しては『正解は人それぞれだ』ということですね。


そしてこの『一般的な成功率に応じて物事への取り組み方を変える』という考え方は、野球に限らず世の中のいろんな場面に応用できるのではないでしょうか。

もう少し厳密に言うと『一般的に成功率の高いものは、セオリーに則り、低いものは(最初は模倣でも良いが)究極的には割り切って、自分に合ったやり方を取捨選択する』ということです。


まず、成功率の高いものは、世に溢れているセオリーに則っても構いません。

その世に溢れているセオリーで、先人たちも成功してきているので。

栗山監督も、本中にて『そもそもセオリーは、最も確率が高いからこそセオリーなのだ』と述べています。

例えば、運転免許の合格率は7割くらいとまあまあ高いので、教習所で先生の講義を受けて、テキストの内容をちゃんと読んでいれば、大抵の人は合格できます。

市販されているテキストを別で買って独学したり、カーレーサーの元へ足を運んで運転の極意を聞きにいったりする必要はありません。


一方で、例えば新規事業が成功するのは、正確な統計はないですが、10個に1個とか、100個に1個と言われています。

基本的には成功しないからこそ、とにかく数打って(たまたま)当たったものを残していくという方針をとっている企業も多いです。

もうそれくらい当たらないものなら、そもそも世に溢れている新規事業立案の際のフレームワークって役に立つのかという話になってきます。


あとは、芸能人とかアイドルとか漫画家とか歌手とかも、スターになれるのはすごく一握りだって聞きます。

だったら本屋さんに並んでいる『売れる漫画家のなり方』みたいな本は、本当に意味あるのかと疑問になります。

そもそも、その本を書いてるあなたはなんぼのもんじゃいって聞きたくなります。


もちろん、『成功率が低い物事でも、まずは世に溢れているセオリーを実行して初めてスタートの土俵に上がれる』という考え方もあります。

『学ぶ』と『真似る』は同じ語源とする説もある通り、まずは新規事業でも芸能人でも歌手でも、セオリーに従ってみるというのが有効な手段のひとつではあります。


ただ、セオリー通りにやってたらやっぱりうまくいかない確率のほうが高いのも事実で、徐々にやり方が見えてくるなかで、自分に合ってるなと思うやり方にマイナーチェンジさせていくことを厭わないことが大事だなと思いました。


ということで、成功率の高低に応じて、セオリーと自分に合ったやり方の配分をうまく分けていこうという話でした。

あと、大事なのは、『成功するやり方をする』んじゃなくて、『このやり方を成功にするんだ』という気合いと根気も大事だなと思いました...精神論になってしまいますが...!



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