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「目先の結果」と「未来への投資」、大事なのはどちらか?

優勝よりも、育成が優先される年なんてあるわけがない。
もし、3年後に優勝しようと思ってやっているチームがあったら、そこは絶対に3年後も勝てない。
野球はそんなに甘いものじゃない。
(『稚心を去る』より)


プロ野球・日本ハムファイターズで監督を努める、栗山監督の著作『稚心を去る』を読みました。

栗山監督は今年、日本ハムの監督としては歴代最長の8年目の指揮をとっており、過去7年間でAクラス5回、優勝2回、そして日本一1回という、まさに名将と呼ぶにふさわしい成績を残しています。

これまでインタビューでのコメントを通して、すごく哲学のある監督だなと気になっていたので、今回、本を読んで栗山監督の頭の中をもう少し覗かせてもらおうと思いました。


これから数回に分けて感想を書いていきますが、初回のきょうは『目先の結果』と『未来への投資』についての話をします。

プロ野球ではよく『育成の年か?勝利を目指す年か?』なんて質問が、記者から監督に対してされることがあります。

前年最下位に沈んで監督がクビになり、まだチームの十分に戦力が整っていないであろう状態で、新しく就任した監督が聞かれる、みたいなパターンが多いです。

2年契約だから、まず1年は育成の年としてじっくり若手を育てて、2年目に勝負をかけるといった具合です。

もちろん、この質問に対して『今年は育成の年です!』なんて明言する監督はいないんですが、まあ正直、完全に育成に振り切るなんてことはなくても、多少のグラデーションの結果として例えば同じ実力だったら若手を使うくらいのことは十分にありえます。

特に栗山監督は若手を積極的に起用するので、記者さんたちもついつい聞きたくなってしまうのでしょう、『育成ですか?勝利ですか?』と。


しかし、栗山監督はこの問いに対して、本中で『けしからん!』と一蹴しています。

そして『来年も再来年も育てるし、勝つんですよ』と。

本気で優勝を狙って必死に戦って、それでもダメだった経験がワインの澱(おり)のように沈殿して、それが積み重なって、層になって、ようやく勝てるチームになる。
「育成」という言葉を、優勝できないことの言い訳、逃げ道に使ってはいけない。


まず大前提として、ここまで『勝利』と『育成』が同列のように語られていますが、あくまでも両者は『目的』と『手段』の関係です。

勝利という目的のために、育成が手段として有効だから、選手を育てるのです。

にもかかわらず、本来は手段なのに目的化されてしまった育成は、本当の『育成』ではありません。

そして、そうやって目的化されてうまくいくほど、育成は甘いものでもないのです。

そもそも、育成しようと思って、思い通りに育つんだったら、選手は誰一人欠けることなく、全員順調に成長しているはずだ。
そう思ってやっていても、そうならないから難しいのだ。


勝つために、育てる。勝とうとするなかで、育てる。勝って、育てる。

練習で1000本スイングするよりも、大事な試合で打った1本のヒットのほうが大きな財産になる。


そしてこれらの話は、野球だけに限定されず、すべての職種や人生プランにおいても言えることではないかなと感じました。

例えば個人のキャリアで考えてみれば、勝利は仕事での成果、育成は新しいスキルとします。

やはりそうすると、野球の話と同じように、いまは新しいスキルを磨く時期、いまは成果を出す時期と、ぼくたちはそんな明確に分けることはできません。

今月も目標の数字があるし、来月もあります。しかし再来月の目標を達成するためには、新しいスキルが必要になるかもしれません。

まずは全力で今月の目標数字を達成するために動く。そのなかで、積極的に新しいスキルも試していく。

家で机に向かって2週間やるより、営業先のプレゼンでその新しいスキルを1回使ってみたほうが、圧倒的に伸びが早くなったり、現時点での成熟度をつかめたりします。

逆にもしかしたら、新しく身につけようと思っているスキルが、意外と役に立たなかったり、自分には向いていなかったりすることもあるかもしれません。

でもそれは、家で1人で黙々とやっているだけではわかりません。

そのやり方でどんなスキルでも習得できるなら、全員が何でもこなせる万能人になってしまいます。

でも現実にはそうならないから、新しいスキルを身につけて成果を出したり、昇進したりすることが大変なのです。


だから仕事で成果を出すために、新しいスキルを身につける。

成果を出そうとするなかで、新しいスキルを身につける。

成果を出して、新しいスキルを身につける。


後半の話はあくまでも一例ですが、こんな感じで栗山監督はの『勝利』と『育成』の関係性に対する考え方については、人生のいろんな場面で応用できるのではないでしょうか。

きょうのnoteを読んでくれている方の、なんらかの参考になればうれしいです!



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