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遠藤、また試合するってよ

と、昔あった映画のタイトル風に告知してみたよ(見てはいない)
やっぱりまた試合に出ようと思います。もう辞めると既に2回宣言してる引退詐欺師なんだけど、結局また戻ってきてしまうのは格闘技の中毒性ゆえか、それとも他にアテがないからか。

去年の10月にKO負けして試合はもういいやと思っていたんだけど、喉元過ぎれば熱さを忘れるというわけか、試合前の辛い練習や試合で倒された苦しさだけはすっかり忘れて気がついたらまた闘いたくなっていたのが今年の初めだ。
少しずつ練習を再開していた矢先に試合の話があり、7月なら出てみるかと承諾した。

キックボクシングに向いてないのは重々承知だし、勝とうが負けようがファイトマネーは雀の涙のままだし、チャンピオンを狙えるわけないことは自分でもわかってる。「絶対負けねえ」とか自信たっぷりに言えるような実力も、若さ故の勘違いも、見栄を張る気も、今の僕にはもうない。
社会不適合者だから人脈はないし仲間も少ないしチケット売れないし、人や企業に媚びてまで応援される気は一切ないし、だから人のために頑張るだなんて言えない。……でも、こんな自分を応援してくれる数少ない仲間の存在はやっぱり嬉しい。感謝です。
最近は決められたルール内で優劣を競うスポーツの勝敗自体に対する価値を見失っているし、そもそも今の僕は生きる理由さえ見失いかけている。
僕に残された闘う理由は、格闘技が好きだからでしかない。

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試合が決まった。7月7日、七夕の日曜日。
相手はキャリアの長いベテラン選手。試合の動画を見た限りだと、僕とは対照的にパンチよりキックが上手そうだ。
試合は昼夜2部興行で開催され、僕は昼の部のセミファイナル(多分)になった。
11:30開始で15:00終了のセミファイナルだから、14:00くらいになるんだろうか。

60kgで試合をしていた相手と65kgでやりたい僕と、間をとって体重は62.5kgに決まった。
前回は67.5kg。5kg減は大きい。実は15歳の時にアマチュアボクシングの試合に初めて出た頃から遡っても過去最軽量の契約体重だ。
35歳にして過去20年間のうち最軽量で試合をするのだから、僕がいかにスマートな体型を維持しているのかがわかる(笑)
減量は心配だけど知識と経験は増えたし、持てる知識を総動員して身体を仕上げてみたい気持ちもあるから丁度いいかもしれない。

試合でもないと減量なんてしないからね。明確な目標設定があると頑張れるのは人の性で、その点にスポーツのパワーと有用性はある。
競技性に対する興味は失っても、試合が決まれば勝敗にこだわるエネルギーが自然と生まれてくる。純粋に強さを追求して日々鍛錬している武道の達人の熱量よりも、ルール上の強さとはいえ真剣勝負のリングで勝利を掴むために日々努力する競技者の熱量の方が遥かに上回るように見える。そこに競技の意義を感じる。
僕も男の子なんで、いくら理屈をこねても負けたくないね、やっぱり。

あまりモチベーションを感じないような淡々とした書き方に見えるかもしれないけど、僕的にはそんなこともなくて、鬱屈とした日々に対する怒りと不満を全部リング上で爆発させてやりたいと燃えている。
僕は世界を変えたいんだ。自分には世界を変える力はないとわかってしまったって、目を瞑ってやり過ごすほど器用には生きられない。

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ロシアのウクライナ侵攻とパレスチナ・イスラエル戦争による死者は今日までに数十万人にのぼる。
地球上の過半数を超える生物が棲む熱帯雨林は毎分東京ドーム2つ分も消失し続けてプランテーションに変わっていき、生息地の消失と密猟によって多くの野生動物が絶滅の危機に追いやられている。
プランテーションのカカオ農園ではチョコレートの味を知らない子ども達が、一年を通して児童労働をさせられている。
途上国に建てられた工場では移民や少数民族が強制労働させられて、生産された製品は先進国の何も知らない人々へと渡っていく。
人のエゴで生み出された愛玩動物が毎年数千万頭も世界中で殺処分され、狭い畜舎で管理された数百億の畜産動物は日の当たらないケージの中で生涯を過ごして屠殺されていく。
たった8人の大富豪が世界の下位半数と同等の富を占め、その裏では8億人もの人が飢餓に苦しみ5千万人が意思に反した労働や結婚を強いられる奴隷になっている。
今なお世界の女性の5人に1人は、年端もいかない少女のうちに児童婚によって強制的に結ばれている。

……こんな世界で自分の幸せなんて願えねえよ。社会問題を気にせず善人ヅラした奴らは全員世の中舐めてんじゃねえ。
蟻の一穴すら見出せない己の無力も、世界を変える努力や勉強をしてこなかった怠惰も、何も考えずにヘラヘラ生きてる奴らも気に入らねえ。
心の中で仄暗い感情だけが渦巻いている。上手く説明できないけど、闘いたい気持ちはある。そして、世界を変えたいという壮大な理想とかけ離れた新宿の片隅でリングに上がることさえ緊張と恐怖を感じる、自分のちっぽけな心にもちゃんと気がついている。大言壮語する器じゃないこともわかってる。
現代社会はマクロな情報にいつでもアクセスできるが、ミクロな自分にできることは何もない。群れの中で暮らす一匹の動物だったはずの人間は、いつしか群れが大きくなりすぎて存在価値は砂丘の一粒に変わっていた。でも僕は、好き勝手な生き方にも振り切れない。中指を立てることさえ諦めて生きたいとは思わない。

頭の中がぐちゃぐちゃで、いつも自分の無力さに打ちひしがれているけれど、そのフラストレーションも全部まとめて爆発させたい。せめて弱い自分だけでも倒したい。舐めんじゃねえ。
無力ではなく微力なんだと日々を積み重ねて、ハチドリのひとしずくを落としていくしかない。自分なりの精一杯をやれるかどうかだ。いざ、覚悟。

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