復興まちづくりのプロセスC-2-01

復興まちづくりのプロセス〜仙台沿岸部の南蒲生地区の例〜その2

 仙台沿岸部の南蒲生地区の復興まちづくりのプロセスについて、連続して投稿しています。

 前回のポストでは、「#1:応急・復旧期」として、都市デザインワークスとしてのサポート当初の2012〜2013年頃の様子について書きました。

 今回は、2014年から2015年頃について書こうと思います。

■#2:現地再建過渡期(2014〜2015年)

 この頃は、現地での再建を望む方々のリフォーム工事なども進み、次々と元の暮らしを取り戻していった時期でした。
 夕方や夜の時間に、会議や打合せ等で現地に赴くと、少しずつ家々の灯りが増えていった事を今も思い出します。そういう光景を見るにつけ、なんとも嬉しい気分にも、なぜかホッとした気分にもなりました。
 復興部を中心に、基本計画をに沿って様々な取り組みが活発化しました。
 中越への視察なども行い、活動と並行してイメージをさらに膨らませていました。

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●アクションプラン
 2012年に作成した「基本計画」を、具体的なアクション(活動)としていくために、2014年には「南蒲生復興まちづくりアクションプラン」を作成しました。
 既に取り組んでいること、今後取り組みたいことなどを、基本計画の三本の柱に紐付けて整理しました。
 この作成もワークショップ形式で行いました。
 これには、中越への視察も大きなヒントになったようです。

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●集会所の建設
 兵庫県からの支援で、津波で流失した町内会の集会所が再建できることになりました。
 町内に「建設委員会」を設け、進め方を検討。この組織を決定期間としました。
 まず、従前の集会所の使い方を、使用団体、間取り、備品等についても細かく聞き取った他、どのような頻度で何に使っていたのかを聞き取り、カレンダーにしました。(これにより、不必要な機能や間取りを望むことが避けられたのではないかと思っています。)

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 次に、どのような集会所にしたいか、言葉とイメージの抽出を行いました。
 誰でも気軽に立ち寄ることのできる集会所であることがイメージの中で最上位となり、

 「ふだんづかいの集会所」

 というコンセプトが出来上がりました。

 これと同時に、必要な間取りや、使い方のイメージを具体化し、「設計条件」を作成。集会所建設委員会により小さな設計コンペが行われました。
 委員会の審査により設計案が選定され、出来上がった集会所がこちらです。

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 この案では、施工過程の一部(最後)に、子供達が参加できる黒板と壁塗りのワークショップが提案され、実際に町内の住む大勢の子供たちが参加しました。
 「自分ごと」「自分たちのもの」「みんなのもの」であることが意識できる仕掛けの一つとして用意されたものでした。

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 完成後も、「ふだんづかい」の集会所として、今でもしっかりと機能しています。
 当初は、畳、和室の無い集会所に、町内の老人クラブの方々などの戸惑いもあったようですが、その後はスリッパとテーブルで快適に満足して使用している様子とのこと。


●津波避難訓練など「安全・安心」に関する取り組み

 現地での再建が進み、「コミュニティ」が仮設住宅から現地に移ると、町内会では行政の各部署や消防、地域の小学校の協力を得て、いち早く津波避難訓練を定期的に実施しました。
 基本計画の3本の柱の最初に据えられた「安全・安心」は、震災と津波を経験し、誰しもまちづくりの「最優先事項」である共通認識があったと思います。
 もちろん、この津波避難訓練は、現在でも定期的に続けられています。

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■このフェーズでのポイント

 さて、このフェーズにおいてのポイントは以下の3つかと思います。

●現地で再建されたコミュニティとまちづくりの活発化
 この2年間では、現地での再建が進み、町内のコミュニティが仮設住宅とその集会所から、現地での活動が徐々に目立つようになりました。
 様々な属性が所属する復興部を中心に企画、活動(アクション)が活発化しました。
 また、外部からの「復興支援」も、この頃までは多く行われていました。復興部はそうした方々の窓口にもなっていました。

●基本計画にもとづく具体的なアクション
 基本計画の内容を「実行」していくためのプラン「アクションプラン」の作成は、着実な実行を促しつつ、現地での活動を「ブレない」ものとします。
 計画を「絵に描いた餅」にしない。思い描いた復興まちづくりを具体化・具現化していくための一つの方法です。
 もちろん、実施できているものもあれば、そうでないものも出てきます。これを毎年年度末にチェックして、地域・行政・コンサルの三者で共有しました。

●まちづくりの「拠点」となる集会所の再生
 現地でのコミュニティ、「拠り所」の完成(再生)により、まちづくり活動の転機となったことは、後になりよくわかりました。
 従前の町内会活動や農業団体の集まりなどに加え、仮設住宅で新たなつながりの中生まれた企画や集まりなども、この集会所が受け皿であり、一つのステージにもなりました。
 コミュニティ施設の役割の重要性を再認識できました。


■コンサルタントの役割

 このフェーズにおいての、コンサルタントの役割を(かなり)大まかに。

●「手が届く」アクションプラン
 アクションのためのプランは、なるべく現実的なもの、これは既に取り組んでいるものも含めて、「少し頑張れば達成できる」というようなものを多く採用しました。
 ちょっとした工夫としては、既に取り組んでいるものには「既」、優先度からみてすぐに取り組むべきものには「すぐに!」というアイコンをつけて整理しました。
 また、仮のカレンダーを表示し、年間の実施スケジュールとタイミングをイメージしやすくしました。

●「カタチづくり」の支援
 まちづくりにおいて、「前提条件」をつくり、整理しておくことは非常に重要です。つまり、主役である地域の方々が、何を求めていて、一方で、それがどんな条件や制約があるのか、それらをブレンドして整える。
 過大な欲求や要求でないこと、そのジャッジメントもコンサルタントの役割の一つです。
 集会所の設計の場面でも、言葉やイメージを形に落としていくための「前提条件」を作ることに大きな意味がありました。
 また、この時には、準備段階に周辺地区の集会所の見学会をして、地域の方々の参考にしてもらう機会をつくったり、コンペの実施の際は進め方や審査の方法アドバイスなど支援も行ったりもしました。

●活動のチェック、まちづくりの検証、課題の読み取りと把握
 前出の通り、基本計画やアクションプランをもとに、町内の活動の様子を、地区の課題等と共に整理し、検証。毎年度、共有していました。


■まとめ

 ここで書いた通り、現地での再建が進み、コミュニティが仮設住宅から現地へ。まちづくりが活発化した時期でした。これらは、主に町内の復興部のメンバーが中心となり、様々な関係各所と調整し、各種助成金なども上手に活用しながら進めていました。
 2015年の集会所の建設(再建)も大きなトピックとなり、以降、町内外の「拠り所」となりました。

 現地での生活の再建と共に活発な活動が続きつつ、次のフェーズには大きな転機が。

(つづく)

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 次回は「#3:ポスト復興のまちづくり期(2016〜2017年)」について書きます。




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