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脂質異常症と言われたものの。

 脂質異常症という言葉が使われるようになってずいぶん経ちました。以前は「高脂血症」という言葉が使われていたのですが、健康診断などでこれらの言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

これは当院でもよく見かける光景なのですが、健康診断を終えられた方と先生のやり取りで、このようなことが良く聞かれます。

先生:「脂質異常症です。」
受診者さん:「どうしたらよくなりますか」
先生:「運動と脂っこいものに気を付けて」
受診者さん:「毎日歩いているし、脂っぽいものは食べないようにしているんだけどなぁ・・・」

そうか。さて、お互いにどうしようか・・・。
という空気が診察室に流れてしまうようなこともしばしばです。

ところで、今回は「脂質異常症」のお話をしようと思うので少し詳しくお話したいと思います。健康診断や人間ドックでは「LDL(悪玉)コレステロール」、「HDL(善玉)コレステロール」、「中性脂肪」といった検査項目で脂質について見ています。
それぞれの言葉は、CMなどでもたまに見かけますね。ではこれはいったい何なのでしょうか。

コレステロール

善玉・悪玉など色々ありますが、そもそもコレステロールとは、人間の体のいろいろな部分の材料なのです。具体的には、細胞を覆う膜の材料だったり、食事を食べた後に消化をする役割に一旦を担う胆汁の材料だったり、ホルモンの材料・・・といったところです。体のあちこちで材料として活躍しているのがコレステロールなのです。

悪玉コレステロール

健康診断や人間ドックで「脂質に注意して」といわれるとまずこの数値が引っかかってしまう方は多くいるのではないでしょうか。
名前に「悪」とつきますが、実際には体に必要な量(健康診断では60~120㎎/dlを基準にしています)であれば体に悪さはしません。彼らの役割は、先程お話した、体の材料であるコレステロールを運搬することです。大事な役割をしているのに理不尽な名前を付けられてかわいそうに・・・と思うのですが、それではなぜ「悪玉」と呼ばれてしまうのでしょうか。それは彼らが増えすぎてしまった時、体に悪さをする可能性があるからなのです。この悪玉コレステロールは、基準値より増えてしまうと血管の壁にへばりついたり、塊になってしまって血管を詰まらせてしまう物質になってしまうのです。太い血管であればなんとか血液は流れることが出来ますが、細い血管でこれが起きると血液が流れなくなってしまいますね。この細い血管ですが、残念なことに心臓や脳など大事な臓器にたくさん入っているのです。その為、詰まってしまうと、よく皆さんが耳にする「心筋梗塞」や「脳梗塞」など大きな病気となってしまいます。増えすぎてしまうと悪者になってしまうけれど、普段はいいやつ。これが悪玉コレステロールなのです。

善玉コレステロール

こちらは「善」とつくので、何か体によさそうなイメージですね。どのような善い行いをしているのか紹介しましょう。彼らの役割は何を隠そう(?)、体で余ったコレステロールの回収をしています。血管にへばりついたり、詰まってしまうコレステロールの回収をするので、先程の心筋梗塞や脳梗塞のリスクを回避してくれる役割をしているということになります。

中性脂肪

中性脂肪も増えすぎると、「脂質に注意して」と病院などで言われる項目です。中性脂肪は体の大切なエネルギー源です。内臓脂肪という、すぐにエネルギーとして使える形で体に貯蓄します。また、体を保温や、守るためについている皮下脂肪の成分でもあります。通常、健康診断や人間ドックでは中性脂肪の基準値を30~149㎎/dlとしています。それを越えてしまうと過剰にエネルギーを体脂肪という形でため込みやすくなり、肥満などの体重増加からくる体調の変化にもつながってきてしまうのです。


さて、いろいろな脂質についてのお話をしましたが、それぞれを正常な状態に保つには、(つまりは大きな病気を予防することにつながるのですが)どうしたらいいのでしょうか。
主に私たちが日常で出来ることは2つです。食事コントロールと運動。体に入れる脂質を調整すること、体にある脂質を燃やすことが必要です。

脂質を多く含む食品について


肉の脂身、肉加工食品、バターやラードなど動物性油脂、乳製品、卵、洋菓子などは血中の中性脂肪や悪玉コレステロールを増やしやすい食品といわれています。中性脂肪、悪玉コレステロールが気になる方にお勧めなのは、脂質の少ないタンパク質である魚や大豆製品を積極的に摂ることや、野菜、果物、海藻などを選ぶことです。私たちが保健指導する際には、このようなお話もしますが、ご受診者様もすこし分かりにくそうな表情される方が多いので、比較的、脂質の少ない調理方法を用いる和食を推奨したり、1日に1皿の野菜のメニューを摂ることをお勧めしたりしています。


運動量と基礎代謝

脂質の燃焼に体を動かすことは不可欠です。この体を動かすことには種類があり、心臓を動かす、呼吸するといった活動や、日常生活で歩く、座る等の動作をすること、そして敢えてエネルギーを燃焼させる行動をとるものの3種類があります。
体が自動的に消費するカロリーや、日常の動作で消費するカロリーを「運動している」ととらえてしまうと脂質は減らすことが出来ません。大切なのは敢えてエネルギーを燃焼させる行動をとることです。よく、ご受診者さんから「通勤でいつもたくさん歩いているんだけどなぁ・・・」といったお話をお伺いします。「いつも」の行動をとることは脂質を減らすことではなく、維持する行動となります。脂質の数値の改善をするには+αが求められるわけです。いつもたくさん歩いているのを遠回りしてさらに加えて歩いていただいても良いですし、帰宅されてから軽い運動を自宅で実施されるのもいいかと思います。

おわりに

健康診断や人間ドックを受けた後、「生活改善を」といわれて戸惑われる方も多いかと思います。「今日の」、「今週の」、「今月の」ご自身の生活と比べて、少しでも多く体を動かす、食事を変えてみるということが「生活改善」に繋がっていきます。
人間ドックや健康診断を受けられたらおしまいではなく、是非、今後の生活の役に立てて頂けたら幸いです。

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