人生、フルーツ。 | 日日是好日
月に一回更新する「日日是好日」。
今回は、ある一本の映画との出会いから始まった。
◇◇◇
『人生フルーツ』。東海テレビの制作するドキュメンタリー映画で、第10作目になる。予告を見て、前から見たいなぁ見たいなぁ、と思っていたら新年のはじめにテレビで流れた。
そこで見て、思わず泣いてしまった。
丁寧な暮らし…それは最近とても注目されるようになったと思う。本屋に向かえば暮らしを楽しむ方法は溢れ、北欧の暮らしと結びつき心豊かな暮らしをあらわす「ヒュッゲ」という本もたくさん見かけるようになった。
この映画の主人公である津端夫妻(修一さん、英子さん)は、まさにその”丁寧な暮らし”の体現者だった。雑木林に囲まれた自分の家の庭に、たくさんの野菜や果実を育て、何十年と同じ道具を使い、煮物もケーキも作ってしまう。(どれもおいしそう…!)
その暮らしぶりは、あくせくした今の僕たちの心に、ジワっと沁みてくるようだった。
惜しまれながらも撮影中に、主人の修一さんは亡くなってしまう。ある日昼寝に行くといって、そこから戻ることはなかった。丁寧な生き様だったからこその、最後だと僕は感じた。その場面も、その先の英子さんの暮らしも映画はせまっていく。
自然に寄り添い、その生と、死をありのままにとらえる姿に、僕は心を奪われてしまった。
この映画のナレーターをつとめる樹木希林さんが、劇中でしきりに言葉にしていたことがある。
風が吹けば、
枯葉が落ちる。
枯葉が落ちれば、
土が肥える。
土が肥えれば、
果実が実る。
こつこつ、ゆっくり。
人生、フルーツ。
僕はこの言葉が好きで、何度も心のなかで復唱している。同じようなことを、少年ゴウセルも言っていた。
雨は水の循環の一過程です。地表から蒸発した水は、空気中の塵などを核に雲をつくり、降った雨は地中にしみこみ、川となり海へ流れ、そしてまた天に昇ります。
この世のものは、なんでも循環しているそうです。植物や虫、動物も、生きるために他のものを食べ、死んだら土に還る。ぐるぐると絶え間なく、営みは繰り返される。(中略)
僕が本を読み、君が聞く。君は喜び、僕は勉強になる…僕たちも循環しているんですよ。
(七つの大罪 / 本を読むひと)
こう繋げてみると、意外にも僕らは循環していることを気づけていないんじゃないかと思えた。
「僕が僕が、私が私が…」
自分さえ良ければいい、という考えをもつ人がいる。周りを考えず、ただ自分だけのことを考えるのは、僕らは関係し合っていて、周りをより良くしていくことが、周り回って、自分自身も良くしていくことを、どこかに忘れてしまっている。
だから今日も、追われる日々かもしれないけれど、忘れずに、想おう。
◇◇◇
読むおともに。
♪坂本美雨 with CANTUS feat FOLKLORE「in aquascape」
この空に包まれると 私達は海辺の砂
最後まで守ってくれる あなたがいる
この音を思い出せば 記憶へ繋がる
その愛に気付くことが この星を美しくしてゆく 何もかも見てきた海 解くことのできない宇宙
自分のはかなさを 感じて 拡がる
新しい朝が来れば 露が満たしてくれる
その声を聞くために 水に帰るように目を閉じて この音を思い出せば 記憶へ繋がる
その愛に気付くことが この星を美しくしてゆく
写真:natsuki
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