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組織モデルとして利用される「ナドラー=タッシュマンの整合性モデル」についての個人的まとめ

安斎勇樹先生のnoteで大変興味深いことが書かれていましたが、その中で取り上げられている「ナドラー=タッシュマンの整合性モデル」ついて詳しく取り上げてみたいと思います。


安斎先生のnote記事はこちらです。非常に興味深い内容です。

このnote中で、このように結論づけています。

組織の構成要素を整合させ続けることで、社会的価値の探究と、自己実現の探究を両立させること

MVV開発、制度構築、カルチャー醸成……いずれも「組織づくり」の本質ではない。前時代の「整合性モデル」と、その限界

この結論を導く過程として、ナドラー=タッシュマンの整合性モデルがよくできたたモデルであることを認めつつも

「メンバーが「自ら学んで変化していく過程」が一切想定されていない」
本来日本企業が持っていた、従業員を大切にする視点や精神的側面が抜け落ちてしまっている」

MVV開発、制度構築、カルチャー醸成……いずれも「組織づくり」の本質ではない。前時代の「整合性モデル」と、その限界

という点から、これまでの組織づくりの目的である「生産性を上げること」から、「社会的価値の探究と自己実現の探究の両立」を目指すべき、と提案しています。

ナドラー=タッシュマンの整合性モデル(Nadler-Tushman congruence model)とは

さて、ここで出てきた、ナドラー=タッシュマンの整合性モデルとは一体何でしょうか?これも良い説明がnoteにありましたのでご紹介します。

こちらも簡単に説明すると、ナドラー=タッシュマンの整合性モデルとは、組織のパフォーマンスを高めるためのフレームワークとして1989年にDavid A. NadlerとMichael L. Tushmanによって提唱されたものです。
(図自体はOrganizational Frame Bending: Principles for Managing Reorientation(1989)が引用されますが、提唱されたのはPerspectives on Behavior in Organizations(1977)が最初のようです)


NNadler, D. A. & Tushman, M. L. (1989). Organizational frame bending: Principles for managing reorientation. Academy of Management Perspectives, 3(3), 194-204.

このモデルは、組織の各要素が互いにどのように影響を与え合い、全体としてどのように機能するかを理解しするもので、ここで取り上げられている要素が整合性を持っていると、組織は高いパフォーマンスを発揮することができ、逆に、これらの要素が整合性を欠いていると、組織の効率や効果性が低下する可能性がある、というものです。

このモデルの限界は様々な場所で議論されている

しかし、このモデル自体が30年以上も前に作られたもので、現代の経営環境には合わないという指摘はさまざまな場所で見られます。NadlerおよびTushman自身も、このモデルを提唱した際にモデルに限界があると認めています。一般的に挙げられているモデルの限界を列記します。

  • 組織力学を捉えづらい
    組織は静的な存在ではなく、常に変化しています。しかし、整合性モデルはある一定の時間点での整合性を重視するため、組織の変化のプロセスやその背景にあるダイナミクスを捉えるのが難しいという指摘があります。

  • 外部環境の変化に追従できない
    組織外部の環境は迅速に変化しており、これに対応するための組織の適応能力や柔軟性が求められます。しかし、整合性モデルは主に組織内部の要素に焦点を当てているため、例えば競合状況や技術の革新、社会的・政治的変動など、外部環境の変化に対する応答が不十分であるという批判があります。

  • 複数の整合性を捉えられない
    実際の組織では、複数の戦略や目標が同時に存在することが多く、これに伴い異なる整合性が求められる場合があります。しかし、モデルは一つの整合性のみを考慮しているため、これに対応するのが難しいという指摘があります。

  • 静的なモデルである
    モデルは「整合性」を強調していますが、これはある瞬間の組織の状態に焦点を当てる傾向があり、組織の変化や進化、ダイナミクスを捉えるのが難しいとされています。

  • シンプルすぎる
    モデルは組織の要素を簡略化して考えるため、実際の組織の複雑さや多様性を適切に捉えるのが難しいとの批判があります。

  • 一般化の難しさ
    ある組織や状況での整合性が、別の組織や状況での成功を保証するわけではないという限界があります。

  • 人間の要素の軽視
     組織を構成する個人の感情や動機付け、能力といった人間の側面が考慮されていないという批判もあります。(安斎先生はここを指摘されています)

それでもナドラー=タッシュマンの整合性モデルは役に立つ

組織の理解や改善を試みる際に、ナドラー=タッシュマンの整合性モデルは一つの貴重な手がかりとなることは間違いありません。しかし、その利用にあたってはその限界を理解し、他の視点やフレームワークと組み合わせる柔軟性が求められます。
とはいえ、限界はありつつも「ナドラー=タッシュマンの整合性モデル」は現在の組織状況を整理するには非常に良いフレームワークです。皆さんの組織開発の現状を整理するのに役立つものと思います。

組織は常に進化し続けるもの。それゆえ、私たちは常に新しい知識や考え方を取り入れ、より良い組織を目指していきましょう。

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