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【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-全体像編-


弊社はOKR・評価管理が可能なSaasを提供していますが、SaaS提供をしていく中で特にスタートアップの方から人事制度に関するご相談を多く頂きます。

人事制度は機密性が高い情報を取り扱うことから、各社の情報はあまり公開されておらず、ブラックボックスになっているため、いざ取り組もうと思っても何をすれば良いか分からない状態になっています。

弊社では、代表・役員を始め組織・人事コンサルタント経験者が多く、実際に人事制度設計を多数支援してきた経験もあります。

そこで未経験の方(特にスタートアップ)でも人事制度が作成できるように作り方について詳しくお伝えしていきたいと思います。

本人事制度設計マニュアルは、以下5パートに分けて作成しております。

①スタートアップ人事制度設計マニュアル-全体像編-
②スタートアップ人事制度設計マニュアル-等級制度編-
③スタートアップ人事制度設計マニュアル-目標管理編- 
④スタートアップ人事制度設計マニュアル-評価制度編- 
⑤スタートアップ人事制度設計マニュアル-報酬制度編- 

今回は、”全体像編”として細かい作り方に入る前に、まずは人事制度の概要や人事制度設計をしていく上での全体のステップについて触れていきたいと思います。

人事制度についてのコンサルティングのご相談はこちら⇩

1.人事制度とは?

人事制度とは、従業員の能力や会社への貢献度について評価を行い、適切な処遇を決定する仕組みです。

詳細は後述しますが人事制度には基幹となる等級制度、評価制度、等級制度の3つがあります。

これから人事制度を作る場合には、少なくともこの3点について検討していく必要があります。


<人事基幹制度>

図1

2.人事制度の目的

人事制度の導入目的は様々ありますが、企業として業績(成果)向上に最適なマネジメントを行うこと=経営戦略を実行すること、社員がモチベーション・エンゲージメント高く働けるようにすることの2点が重要だと考えています。

人事制度は最も重要な経営資源の一つである「人」に関するルールであり、経営理念や経営戦略は、人事制度を通じて従業員に浸透していきますので、きちんと会社の想いを言語化して設計していきましょう。

3.人事制度を導入する適切なタイミングは?

特にスタートアップの方は人事制度をいつ作り始めるか悩まれると思いますが、これまで様々な企業の人事制度設計・運用に携わってきた中で、20人以上の規模になったタイミングが1つの目安だと考えています。

10名未満であればまだ社長・経営陣との距離も近く、誰が何をしているか・どんなパフォーマンスを出しているかは一定見えると思います。
そのため、かっちりとした制度を作らずとも社長・経営陣自ら従業員と定期的にコミュニケーションを取ることで納得度を一定担保することが可能です。

しかし、20人を超え始めると、組織構造が少なくとも3階層になり自分と全く関わらない人が出てきたり、社長・経営陣が直接関与が少ない従業員が出てき始めるため、上司に評価を移譲する必要が出てきます。

そうなると、客観的な軸で全員が決められたルールに基づいて評価をされる仕組みが併せて求められるようになるのです。

また、この20名以上になってくると、リファラルなど見知った関係での採用だけでなく、媒体などを通じた全く関係性のない方も入社し始め、様々なバックグラウンドの人が集まってきます。

そのため、これまで阿吽で通じていた企業のコアな価値観も少しずつ薄れてくるタイミングとなるため、企業理念や価値観を浸透させる意味でも人事制度が必要になってきます。


4.人事制度の作成プロセス

いよいよ人事制度設計に取り掛かろうとする際、具体的に何から考え始め、設計していけばよいのかイメージが沸かない方も多いかと思います。

ここではまず一般的な段取りを紹介しつつ、より具体的なポイントを整理したいと思います。(※等級・評価・報酬の詳細については別記事で説明いたします。)

人事制度設計・導入の一般的な段取りは以下の通りです。

<人事制度作成のステップ>

図2

多少の解釈は違えど、制度設計のプロセスを情報収集していると似たような說明になっていることが多いかと思います。

一方、人事制度設計は詳細な検討事項もたくさんあるため、ポイントをあげると切りがありません。なので、今回は後でつまづきやすいポイントを3つご紹介します。

<具体的なポイント>
①目指すべき姿・人事制度ポリシーを明確に定義し、ベースポイントを作る
人事制度設計途中の企業様にご相談を受けることもあるのですが、”何を目的に人事制度を設計するか”が明確でなく、落ちている情報をなんとか繋げながら等級・評価・報酬制度を決定しようとしているケースが意外と多くなっています。

前述の人事制度の目的を果たすためには、以下図のように人事制度は単発のものではなく、企業の目指す姿(MVV)から経営戦略など全て繋がりを持って設計する必要があります。

<目指す姿(MVV)と人事制度の関連性>

図3

その中で人事制度ポリシー(人事制度)はとても重要で、会社の目指す姿を踏まえて人事制度は何を目的としていくかを明確に定義しておく必要があります。

人事制度ポリシーが明確だと、後段の等級・評価・報酬を設計する上でも人事制度ポリシーがベースポイント(立ち戻れる場所)となり、メッセージをぶらさずに設計することができます。

人事制度ポリシーが何かイメージがつかない場合は、以下のようなイメージで設定してみると良いでしょう。

図8

②段取りとしては区切られているが、常に制度全体の流れや動きをイメージしながら検討する
制度の目的やポリシーが明確になったあと、各制度を切り出して考えてしまいがちですが、実際はどういうサイクルでどんな評価体験をつくっていくのかという全体像をイメージしながら、具体化していくことが重要です。

例えば、人事制度ポリシーでは”挑戦”をテーマにしているのに、評価項目には挑戦に関わる内容がなく、挑戦をしても報酬の変動もない、といった形でちぐはぐにならないように注意が必要です。

そのため、②~⑥はゆるやかに頭の中では同時並行でイメージをしつつ、詳細を詰めていく項目は順番通りに進めていくのが良いでしょう。

③シミュレーションの期間をしっかりと持つ
制度の検討時には理屈上うまく決まっているはずのものでも、実際に仮評価で運用してみると思っていた結果とは異なっているということはよくあります。

なので、かならずシミュレーションをしましょう。シミュレーションを実施することで評価のロジックがより明確に頭に入ってくるので、検討が漏れているケースや社員で個別対応が必要になりそうな人などの発見につながることもあります。

また、スタートアップにおいては組織拡大で都度変更しなくてはいけない部分も出てくると思いますので、実運用しながらフィードバックを基に徐々に制度もブラッシュアップしていく運用型が望ましいと思います。

-等級制度作成-概要-

等級制度は人事制度の骨格となり、等級により後段の評価・報酬制度も大きく変わっていきます。また、等級が設定されると社員の方が会社の中でどのようなキャリアパスを描けるかが決まるため、エンゲージメントにも大きく影響する要素です。

まずは会社が提供したい体験や社員への期待を言語化し、それに合わせて等級の数やキャリアパス・それぞれの定義を作成していきます。

例えば以下のような観点で等級制度を選択します。

<等級制度の観点>

図4

これらを選択した上で、各等級で明確な定義を定め、社員が認識できるようにすることも重要です。


等級制度の詳細については、以下でご説明いたします。

【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-等級制度編-


-評価制度作成-概要-

評価制度を作成する上では、人事制度ポリシーや等級制度の内容を踏まえて、適切な評価項目を選択していくことが重要です。

例えば、以下などが評価で使われる観点となります。

<主な評価の観点>

いさいいしあ

また、評価制度は、目標管理制度とも密接に連携しているため、多くの場合目標と併せて検討が必要になっていきます。

評価制度・目標管理制度を設計する上では、評価が処遇の決定のためだけのものにならないようにすることが重要です。

例えば、目標管理をKPIとしKPIの達成度だけで評価を行うと、成果主義というメッセージは出せる一方で、従業員としては「会社のためだけに働かされている」意識にもなり兼ねないため注意が必要です。

対応として、目標設定で従業員のキャリア支援にもつながる目標を設定していくなど、企業としてのメッセージを打ち出しながらも従業員のエンゲージメントも高められるように設計していきましょう。

一方で、評価項目が多すぎても複雑な評価制度となり、従業員の理解度が下がり形骸化してしまう可能性があります。

真に伝えるべきメッセージに沿って評価項目を検討していくよう注意しましょう。

評価制度・目標管理制度の詳細はそれぞれ以下で説明していきます。

【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-評価制度編-
【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-目標管理編-

-報酬制度作成-概要-

報酬制度は従業員にとっても関心が高く、メッセージが伝わりやすい部分でもあります。

例えば、基本給を設定する上でも、”成果給”となれば「成果を上げて欲しい」、”勤続給”であれば「長く働いて欲しい」といったメッセージになるため、慎重に検討が必要です。

また、報酬と聞くと基本給・手当・賞与といったお金をイメージしますが、トータルリワードという考えがあり実は金銭報酬だけでなく、表彰ややりがいのある仕事の提供といった”非金銭報酬”もあります。

人事制度設計の中では、金銭報酬を中心に取り組みますが、非金銭報酬は企業の色が出る部
分でもありますので、非金銭報酬も意識しながら設計していくことが重要です。

<報酬の全体像(トータルリワード)>

図6

報酬制度の詳細については以下でご説明いたします。

【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-報酬制度編-


-評価シミュレーション実施-概要-

評価シミュレーションでは、設計した等級・評価・報酬を現在の従業員に当てはめて仮評価や報酬決定を行うことを指します。

事前にどのような動きになるかを想定しておくことで、検討漏れや個別論点となる部分をあらかじめ見つけておきます。

例えば、新しい等級別の報酬水準を決定した後に実際に今いる社員を当てはめてみると、以下のように新しい水準には当てはまらない人が出てくることがあります。

その場合、当てはまらない人の給与をレンジ内に制度開始時点から寄せるのか、移行期間を設けて徐々に寄せていくのか?が新たな検討ポイントとなります。

<給与シミュレーションイメージ>

図7

このようにシミュレーションで当てはめないと見えづらい部分もありますので、開始前に必ずどのような影響があるのか確かめてみましょう。


-人事制度説明・人事制度運用開始-概要-

人事制度の設計ができたら、いよいよ従業員の方に説明が必要です。

単発的な説明だけでなく、従業員の方がいつでも見返せるように、従業員説明資料やマニュアルを作成し、公開しておきましょう。

特に評価者となる管理職層に対しては評価の目線がぶれないよう、評価者研修やデモを行うことも効果的でしょう。

管理職が理解しないと人事制度が浸透しなくなってしまうため、丁寧に説明・サポートしていくことが必要です。

また、前述の通りスタートアップにおいては状況変化に応じてチューニングが必要になってくることが多いため、導入後も定期的にフィードバックを受けてブラッシュアップすることを心がけましょう。

5.人事制度は内製できる?

これまで人事制度作成に向けて概要をお伝えしてきましたが、ご相談頂く中で「そもそも人事制度は内製できますか?」というご質問を良く頂きますので、そちらについて触れていきたいと思います。

この問に対する回答としては、「内製は可能」です。

仮に未経験であっても、知識をキャッチアップしていき、体制*を作りながら行えば時間はかかるかもしれませんが、問題なくできると思います。
*人事や管理役員が設計中心者、経営陣が意思決定者等の体制を組む

人事制度を全て作るまでにかかる期間は内製だと半年〜1年程度が目安です。

この期間は専属で人事制度を創る人が1人はいる想定のため、兼務しながらだともう少し時間がかかる可能性もあります。

スタートアップの専任を作るのは難しいと思いますので、その場合は0.3〜0.5人月程度のリソースを複数確保することが良いでしょう。

では「なぜプロのコンサルタントに外注するのか?」という疑問もあるかと思います。

弊社含めプロにご相談頂く理由は、様々な企業の事例が蓄積されていて、短納期でこれらを作れるからです。

人事制度を導入したいと思うタイミングから半年〜1年かけてしまうと、全く状況が変わってしまいうまく機能しないことも考えられます。(特にスタートアップ)

また、人事制度を作ったことのある人が社内にいない場合、そもそもの作り方からキャッチアップが必要となってしまうため、そこまで工数をかけられない場合もあると思います。

一方でプロのコンサルタントに依頼をすると、設計範囲にもよりますが2か月~半年以内に完成することができます。

作成手順も一から学ぶ必要がないため、早く手間をかけずに作成できるのが最大のメリットといえるでしょう。

最初の問いに戻ると、内製自体は可能となりますが、制度リリースまでの期間、社内のリソース、ナレッジの状況を鑑みて、内製か外注を選択すると良いでしょう。

6.人事制度を作るときに押さえておく知識・情報

内製が可能とお伝えしましたので、最後に人事制度を内製する上で押さえておくべき主な知識・情報をご紹介します。

 ● 人事・労務周りの法律の基礎知識(特に降給・降格などの不利益変更)
 ● 就業規則や雇用契約
 ● 現場や経営陣のヒアリングなどを通じた組織課題
 ● 等級・評価・報酬の基礎知識
 ● 人事制度の事例 等


例えば、人事・労務周りの基礎的な法律を知らず報酬制度を作ってしまうと、実際はその制度を運用すると不利益変更となってしまうため、リリースできない...といったことになりえません。

そのため、設計の段階から一定の知識が求められます。
(もちろん、顧問契約している社労士の方などと協力して進めることも可能と思います)

もし内製する場合は、上記の知識・情報を抑えて作成していくとスムーズかと思います。

7.最後に

今回は人事制度の全体像について纏めさせて頂きました。
人事制度は人材確保、育成、組織文化醸成などさまざまな企業課題を解決に導く糸口となるはずです。本記事の内容が、皆様のお悩み解決にお役立ていただけたら嬉しいです。

また、更に細かい等級・評価(・目標)・報酬の作り方については以下にまとめていますので、興味持って頂けたら是非ご覧いただければと思います。

【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-等級制度編-

【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-目標管理編-

【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-評価制度編- 

【100社以上支援したコンサル集団が語る】スタートアップ人事制度設計マニュアル-報酬制度編- 


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