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ストックオプションの評価方法をわかりやすく説明

みなさん、こんにちは!

今回はストックオプションの評価方法(ブラック・ショールズ式)についてわかりやすく理解してもらいたいと思って記事を書くことにしました。
計算式を紹介しているサイトはよく見るのですがその考え方を書いてあるサイトは少ないかと思います。
ざっくりイメージを掴んでもらうことが目的なので数学的な説明は、極力避けてます!


ストックオプションとは

自社の株式を一定の期間内(権利行使期間)においてあらかじめ決められた価格(権利行使価格)で購入することが出来る権利のことです。

近年ではベンチャー企業が役員や従業員の勤労意欲向上のためにこの制度を利用するケースが多いです。ストックオプションを役員や従業員へ付与すると、将来的にIPOやM&AなどのExitの際に数千万円や億単位の利益を手に入れることが出来る可能性があります。

具体的には下記の手順になります。
①ストックオプションを行使することによって権利行使時の株価より低い金額(権利行使価格)で株式を取得することができる
②取得後にすぐ売却することによって権利行使時の株価と権利行使価格との差額の利益を得ることができる

具体例を用いて説明しましょう。

1か月後に1株を100円で購入することが出来るストックオプションの権利者がいると仮定します。さらにその1か月後に1株の株価が120円になったとします。このときに権利者はストックオプションの権利を行使すれば100円で株を購入することが出来るため、購入後にすぐ120円で売却すれば20円の利益を得ることが出来ます。株価が120円のときのストックオプションの価値は20円と考えることが出来ます。


ストックオプションの評価方法

ストックオプションを発行する際にこの権利の金額がいくらを評価する必要があります。将来の権利行使時に得るであろう利益の現在価値を求める作業になり、通常は専門家(公認会計士や専門の評価会社)へ依頼して評価を行います。

評価を求める計算式は下記の通りです。

下記のパラメータさえ設定できればこれらをエクセルに入力するだけで計算は可能です。実務ではどのようにパラメータを決定するかについて情報を集める作業が大変です。

①行使価格:権利行使時の払込価格
②予想残存価格:権利行使の想定期限
③基準株価:権利割当時の株価
④ボラティリティ:将来株価の変動性
⑤予想配当利回り:将来株価に対する配当利回り
⑥リスクフリーレート:無リスクの利子率


評価方法の考え方

今回の本題ですがどうして上記のような式になるのでしょうか。

計算式を文字に置き換えると下記になります。

オプションの公正価値 = 株価 × オプションプレミアムの変化度 ー 権利行使価格(借入金と想定)  × オプション期間に応じた割引率

株価から権利行使価格(後述の説明で借入金として考えます)を引き算しています。これはストックオプション自体が有している非対称性から解放することを目的としています。

権利行使時に得る利益について具体的な数値を使って考察しましょう。

行使価格が100円のオプションがあった場合に、株価が150円であれば50円の利益を得ることが可能です。しかし50円のときはどうでしょう。わざわざ50円のものを100円で買う人はいないのでオプション行使はされずとのことのオプション価値は0円になります。

つまり、
P ≧ 100 の範囲:M = P - 100
P ≺ 100 の範囲:M = 0
というグラフになり、100円部分を分岐点として直接の傾きが異なるため1つの算式で処理することが出来なくなってしまいます(数学的にいうところ非対称性が存在しています)。

この問題を解決するためにストックオプションを現物株式と借入金に置き換えて考えます。現物株式は株価0円のときは0円ですし、100円のときは100円なのでストックオプションのような非対称性はありません。借入金についても金額と期間に応じて金利が増えるだけで非対称性はありません。この置き換えによって非対称性がなくなりストックオプションを一つの算式で表現できるようになります。

理解を深めるために2項モデルを使った具体例を紹介します。
現在の株価が100円、行使価格105円のストックオプションを借入金(利率2%)に置き換えます。さらに行使までの期間の株価変動率20%と前提します(2項モデルでは特定期間経過後に上がるか下がるかどちらかの状況になっているものとして扱います)。

株価が上がる場合:120円
株価が下がる場合:80円

次に行使時のストックオプションの価値を求めます。

株価が上がる場合:15円(120円 - 105円)
株価が下がる場合:0円  (80円 - 105円 ≺ 0円のため権利行使無し )

ここで現物株式の数をX株、借入金をY円とするとこれらは下記の条件を満たす必要があります。

株価が上がる場合:120 × X - (1+2%) × Y = 15(円)
株価が下がる場合:80 × X - (1+2%) × Y = 0(円)

この方程式を解くと下記の数値になります。
X:0.375(株)
Y:29.41(円)

ストックオプションの評価額は株式の現在価値から借入金を引いた金額となるため下記の金額になります。

100 × 0.375円 - 29.41 = 8.09(円)



まとめ

以上がストックオプションの計算式に関するざっくりした考え方でした。
あとは今回では言及していない株価の変動性や時間的価値などを考慮するために前半に紹介した計算式となっています。

今回は一般向けというよりだいぶ専門家向けの記事になってしまった感がありますが。。。笑

最後まで記事ご覧頂きありがとうございました。

またお役立ち情報を投稿させて頂きます(^^)

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