見出し画像

「日が昇るたかまど山」ってどんなトコ?

日が昇る たかまど山に
さわやかに 草木はのびる

中高生のころ、ことあるごとに歌った「学友の歌」の冒頭。
奈良を歩いていると、街の東南に高円山(たかまどやま)がよく見えます。
毎年8月15日には「奈良大文字送り火」が行われるのもこの山。
つまり高円山は、奈良にとって、僕にとって、非常に馴染み深い存在なんです。
しかし僕は、いまだに高円山に登ったことがなかった。
そんなわけで昨日、行ってみることにしました。


この日も奈良の街からは高円山が見えています。
頂上付近に木がなく、野原になっているのが高円山です。

画像19

登山口付近ですでに結構な標高があります。
街から見ると、ここも「山の裾野」に見えているかもしれない。

画像3

登山口はかなりあっさりしています。
特に大きな案内板があるわけでもなく、舗装された道の脇にひっそりとある感じ。

画像3

よく見ると「大文字山登山口」という小さな板が貼ってありました。

画像4

ここから木々が鬱蒼と生い茂る登山道へ出発です。

画像4

ところで、「道」ってどれ?

画像5

登山開始5秒で道に迷いました。
一緒に行った友人によると、ここは「左」が正解とのこと。
「右」が正解ですよ、と言われたら信じてしまいそう。

この山にはいわゆる「分かりやすい登山道」というのはなくて、「先人が歩いた足跡」が頂上への道となっているようです。

画像6

画像7

小川を越え、倒木をくぐりながら頂上を目指します。

写真では分かりづらいですが、かなりの急勾配が続きます。
特に休憩できる場所もないので、一心不乱に登りました。

画像9

森の中を歩くこと40分…。

うおおおおおおおおお!!!

画像10

「大文字火床」に到着しました。
大文字送り火で「大」の字が灯されるところで、下から見たときに高円山の目印になっているところでもあります。

ここは開けているのでとても景色がいい。

画像11

奈良の市街地が一望できます。

ですが、ここはまだ「頂上」ではありません。
この辺りには「奈良奥山ドライブウェイ」という有料道路が整備されており、その途中に「頂上展望所」があるのです。

一旦火床を後にし、頂上展望所へと向かいます。

画像12

この道はあまり傾斜がなく、登ったり下ったりという感じです。

火床から歩くこと20分…。

画像13

頂上展望所に到着しました。
自然の中を歩いていたら、唐突に人工の道路が出てくるのでちょっとびっくりします。

さて、どんな眺めが待っているのか?

画像13

確かに景色はよく見えます。
けれどもあまり開けているわけではないので、僕は火床からの眺めの方がお気に入りかなあ。

頂上展望所には歌碑があるため、歌碑巡りが好きな人にはおすすめです。

画像17

写真では歌碑の文字がほとんど読めませんが、書かれているのは高円山にちなむこの歌でした。

高円の秋野のうへの朝霧に妻呼ぶ牡鹿出で立つらむか
大伴家持(「万葉集」巻20-4319)

涼しくなってくると朝に霧が立つんですよね。
僕は飛火野のイメージが強いですが、霧が立つ野原で佇む鹿の様子は印象的です。
1300年前の家持も、同じ様子を思い浮かべていたのでしょう。
秋は鹿の恋の季節(交尾期)であることもポイントです。

広いところで昼食を食べたかったので、火床に戻ります。

腰を下ろすのにちょうどいい木陰もありました。

画像15

隣の若草山がよく見えます。
高円山(432m)は若草山(342m)を見下ろせる数少ない場所かもしれません。

画像17

奈良市街を望む。
平城宮跡や生駒山、京都府の南部が見渡せます。
こう見ると奈良って広いですね。

画像17

昼食を買ったコンビニのある交差点が下の方に小さく見えました。
こんなに遠くまで来たのか…。

南の方も見てみました。

画像18

葛城山、金剛山は見えている気がします。
大和三山は、かろうじて畝傍山が見えるかといったところでした。

鹿と遭遇することはありませんでしたが、鹿のフンは各所に見られました。
家持の歌の通り、この辺りにも鹿が来ているのは間違いないようです。

画像20

火床で2時間近く過ごし、下山しました。

登りが急勾配だったので下りはどうなるかと思いましたが、転げ落ちるように勢いよく下りてきたので、20分ほどで登山口に帰ることができました。


この日、他の登山者とは1度も会うことがありませんでした。
インターネットでも情報が少なく、真夏の平日ということも影響したかもしれません。
道が険しく分かりにくいので、1人で登るには厳しい山だと思います。

しかし、火床から見える景色は他では見ることができないものです。
なにより奈良にとっては大切な「日が昇る山」。
人混みは避けたいけど外出したい。
そんな今こそ、高円山に足を運んでみてはいかがでしょうか?


【おまけ】

画像21

火床からスマホのパノラマ機能を使って撮りました(使いたいだけ)

この記事が参加している募集

#一度は行きたいあの場所

52,269件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?