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僕はシューカツを知らない

大学入ってすぐに「家業を継ぐ」って決めた僕は、シューカツをした経験がない。皆がシューカツをしている大学生活の最後の一年、僕は取引先に挨拶行ったり、僕なりの入社準備らしきものをしていた。

時間が流れて自分が求人する側になったときも、小さなものづくり企業は新卒採用なんてしたことがないし、求人そのものが毎年出せるわけでもない。だからシューカツの常識も知らないし学校とのコネクションも全くない。圧倒的に経験が少ない弊社は、恥ずかしい話だけど本当に「内定ってどうやって出せばいいの?」ってレベルだ。

だから数年前、はじめての採用活動にあたって、とにかく考えた。普通のシューカツのレールに乗る人は、たった10人の地方の零細企業になんて辿り着かない。残念だけど僕らの会社は、「シューカツ」とラベリングされた棚の、ずーっと奥の方にしまわれる。
だったら、棚を変えればいい、と考えた。「ものづくりの会社に行きたいけど、就活サイトでは希望するような会社は見つからない」という学生さんは必ずいるから、そういう人の探しそうな棚探しから始めてみる。
すると、そっちの棚は空きだらけで、費用も手間もかけずにその棚の特等席を取れたりする。そこは小さな棚だけど見にくる人はいるし、少なくとも、大きな棚の奥の方よりは目につきやすい。むしろ、わざわざその棚を覗きにくるような人は初めから確度の高い人が多い。つまりこれは、マーケティングで流行った概念に当てはめれば、まさしくブルーオーシャンだ。

シューカツを知らない僕には、この考え方が正しかったのかどうか分からないけれど、こうやって数年前に見つけた棚が「四季の美」というサイトだった。


このサイトのおかげで経験ゼロの弊社にも、ちょっと焦るくらい応募や問合せが来て、始めて新卒の採用に繋がった。
技術の担い手を探している工芸関係の人はぜひ覗いてほしい。

そして、もし「ものづくりをしたいけど求人情報が見つからない」ともやもやしている学生さんがこれを読んでいたら、一度いま探している棚から離れてみて、探す棚から変えてみてもいいかもしれない。ここ数年で間違いなく棚そのものが増えたし、アクセスもしやすくなっている。職人と呼ばれる人たちの情報発信も、SNSをはじめツールが増えたおかげで充実してきている。
それはつまり、僕らの会社も以前ほどはいい場所を取りづらくなってきた、という事だけれど、ものづくりを志す若い人の道が開けて工芸全体が盛り上がることは凄くいい事だと思う。だから、産地のこと、ものづくりのこと、工芸のことを知って、選んでほしい。
そして、たくさんある魅力的なものづくりの中で、どうしてもウチみたいなものづくりがいいなって惹かれる人がいたら、ぜひ一度、職場見学からでもお越しください。

最後にひとつ。菊井鋏製作所は、いっしょに僕たちのハサミ作りを未来に繋いでくれる方をお待ちしています。


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