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Kelly: 海外旅行でのレストランの選び方

イタリアやスペインなどの南ヨーロッパを旅行する際は、午後3時ごろに開いているレストランには気を付けた方が良い。時差ボケや普段の疲れもあり、休暇中の最初の数日は朝が遅い。それによって朝ごはんも昼ごはんも時間がずれてくる。この少々のズレのせいで、美食の街フィレンツェにもかかわらず、のびのびのスパゲッティを食べさせられることになる。

アルノ川の向こうに美しい彫刻を施した建物が並ぶ景色を望める最高の場所が、台無しである。アルデンテには程遠く、乾燥のオレガノでごまかしたパスタなのか焼きそばなのかわからない一皿は、昭和の学校給食を彷彿させた。

考えてみれば午後3時から6時までは、シエスタ、すなわち昼寝の時間帯である。通常ランチタイム終了後からディナータイムの始まるまでは、ほとんどの店が閉まる。その時間に営業しているお店は、ほぼ観光客向けや多国籍のお店だ。実際そのレストランのキッチンでは、イタリア語ではない言葉が飛び交っていた。

美食の街を旅しているのに、朝モタモタしていたせいで、初日の昼食は散々だった。海外旅行には付き物、問題はレストラン選びである。日本の有名ガイドブックなどに載っているレストランには、もちろん日本人観光客が殺到する。こう言ったほとんどのレストランでは、日本語のメニューが置いてあったり、写真付きだったりとわかりやすいのだが、観光客目当ての金儲けに走っているので正直、全くおいしくない。

だから私は毎回ホテルのスタッフに聞いてみる。英語のメニューがあるレストランだと有り難いが、それよりも彼らが普段行くレストランを教えてもらう。さらに、そのレストランで彼らが注文する品も聞いておく。美食の街フィレンツェでも、ホテルのスタッフにおすすめのレストランを教えてもらい、予約をしてもらった。

そのレストランはホテルから5分ほど歩いたところにある、頭をなでるとお金持ちになるというイノシシの像の反対側にあった。帰国後に分かったことだが、噂によるとこのイノシシ、どうやらレプリカらしい。本物は2004年からバルディーニ美術館にあるらしいが、実はそれも元をたどればコピーだとか。その時は不衛生だなと思いつつも、とりあえず頭をなでまくっておいたのだが、確かに私は今、お金持ちではない。偽物だということをとりあえず証明。

レストランに入ると、イケメンのイタリア人のお兄ちゃんが、「ホテルのスタッフから連絡をもらっております」と丁寧にあいさつし、席へ案内してくれた。席に着くと、私はイタリア語で書かれたメニューとのにらめっこ合戦が始まった。

必死に解読しようと眉間にしわを寄せている私の顔があまりにも怖すぎたのか、隣に座っていた夫婦が「おすすめを教えましょうか」と声をかけてくれた。フィレンツェに来たのだからステーキを食べたほうが良いとか、聞いたことのない名前のオーブン料理など、彼らのお気に入りを詳しく説明してくれた。そのうちのいくつかは、ホテルのスタッフが言っていたものと発音が似ていた。ありきたりな料理より、現地のイタリア人が言うのだからと勧められるまま、彼らの言うように注文した。出てきた料理はどれも絶品で、それまでに食べた事のない料理だった。ステーキ以外の料理の名前は、発音が難しくて覚えていないが、トスカーナ名産のポルチーニ茸のパスタ、パンと野菜の煮込み料理、白いんげん豆のサラダなど、「癖のない日本人好みの味付け」というより、その土地らしさの美味しいものは世界共通なのだと実感した。

このダンディなイタリア人男性と美しい黒髪のベトナム人女性の夫婦は、ハノイ在住で、イタリア料理のレストランを経営しているらしい。年に二回、旦那様の故郷フィレンツェに食材を調達しながら休暇を満喫していた。二人ともとても親切で、素敵な人達だった。帰り際、「ベトナムに来たら是非寄ってね」と名刺をくれた。そして二人はアンティーク調のおしゃれな自転車に乗って美しいフィレンツェの街中に消えていった。

それから何年か経った後、仲良しの友達とベトナムへ旅行をすることになった。計画中、帰りの乗り継ぎ便の接続がスムーズにいかず、ハノイの空港で10時間もあることに気が付いた。それなら街へ出て少し観光しようと、冒険好きの友達の提案で、乗り継ぎの10時間でハノイの街を観光することになった。「ハノイ」と聞いて、この夫婦を思い出し、スーツケースのポケットに入れっぱなしだった名刺を探し出し、ネットで住所を確認し行ってみることにした。

ハノイは南のホーチミンとは全く異なり、テレビドラマで見る戦後の昭和のような、砂誇りの中にも市場が並び、狭い街中をひっきりなしにバイクが行きかう、騒がしくもどこかノスタルジックな街だった。空港からタクシーに乗り、運転手任せでもらった名刺の住所まで連れて行ってもらった。レストランに着くと、そこは全くの別の空間だった。排気ガスが熱風であおられた外の空気を全く感じることなく、真っ白のテーブルクロスにワイングラスが並び、鐘の鳴る音を聞きながらアルノ川沿いを歩いているかのような、満たされた穏やかな気持ちにさせられた。

中に入ると、黒髪の美しい女性が出てきて、席へ案内してくれた。一瞬でそれがあの女性だと分かった。奥に目をやると、ワインの並んだカウンターバーの向こう側に、あのダンディなイタリア人男性がいた。私はドキドキしながら、注文を取りに来てくれたその女性に声をかけ、フィレンツェでの出来事を話した。すると彼女は覚えていたらしく、興奮し大きな声でカウンターにいた旦那様に向かって叫んだ。偶然にも彼も私を覚えていた。そして私たちは、その出会いにスパークリングワインで乾杯した。そこで食べた料理は、あのイタリアで食べた料理と同じく絶品だった。

同じ名前の野菜でも、育てる土壌が違えば、味や見た目は異なる。その土地には、その土地の育て方があり、食べ方がある。地元の人たちにおすすめのレストランやその土地の郷土料理を教えてもらうことは、新しい発見であり、旅の醍醐味である。一緒にいる人たちと楽しいひと時を過ごすことによって、その一皿はさらに美味しさを増し、写真で撮ることよりも鮮明な記憶として残る。

Kelly's Tips:

  1. 南ヨーロッパ(シエスタがある国)では、2時から6時までの間に空いているレストランで、味の期待はしない

  2. ホテルのスタッフに行きつけのお店を聞く、そこでのおすすめや有名料理の名前を紙に書いてもらう

  3. ホテルのスタッフに予約を入れてもらう

  4. 西洋圏では、写真のあるメニューを置いてある店はさける(観光客狙いで、高くてまずい可能性大)

  5. 入ったレストランが気に入ったのであれば、そこのスタッフのおすすめの地元のレストランを聞く

Have a wonderful trip!
Love,
Kelly

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