大人の甘えは自己成長のチャンス
「甘える」ことは良くないことだ、というイメージがあります。
子どもならいいけれど、若いうちなら許されるけど、という方もいるでしょう。
では、いい年の大人は「甘えてはいけない」として、甘えたい気持ちを捨てることはできるのでしょうか。そもそも、甘えることはそんなに良くないことでしょうか。
むしろ、逆ではないかな、と考えます。
大人があえて甘える選択をする時とは、更に成長できるチャンスなのです。
1.子どもの甘え方
子どもが甘えるのはよくあることですよね。
なぜでしょう。
それは子どもは自分一人ではできないことや分からないことがたくさんあるから、大人や他の子どもの力を借りなければ出来ないからでしょう。
または辛いことや悲しいことに対して自分一人で対処することが出来ず、感情を持て余してしまい、例えば親や姉兄に泣きついたりする、など。
いずれも、発展途上ゆえの経験不足・知識不足・スキル不足が理由です。
2.大人が甘えることがマイナスに見られる理由
一般的に「甘える」というと、発展途上の子どもの「甘える理由」が想定されるため、経験も知識もスキルもあるはずの大人が、それが無い子どものように「甘える」と、
努力不足
覚悟不足
頼りない
と思われて「大人のくせに」と、甘えを拒否されてしまいます。
つまり「甘え」とは、子ども特有の行動原理、という共通認識があるのでしょう。
3.大人が甘えたくなる時とは?
しかし大人だからといって、自分に起きる出来事や感情の全てに一人で対応できるものでしょうか。
むしろ、大人になって世界が広くなり出来ることが増えたからこそ、想定外の出来事との遭遇率は子どもより遥かに上昇します。
そもそも、大人とはなんでしょう。
年齢でしょうか、収入でしょうか、居住形態でしょうか、家族構成でしょうか。
何をもって大人か、という部分には、誰もが納得する共通認識はありません。
法律として18歳が成人だと言われても、成人したのに、と、全ての甘えを切り捨てるようなことは恐らくされないでしょう。
余談ですが、100歳越えの双子のおばあちゃんが『何歳になったら大人?』という質問に「90歳」と答えていました。そのおばあちゃんの認識からすると、ほとんどの人は大人になる前に死んでしまいます(笑)
4.大人だからこそ甘えることが大事
大人が「今の自分には一人では対処しきれない」と思うような出来事に遭遇し、誰かに頼りたい・甘えたいと考えた時は、実は『世界が広がり活動のステージが上がるチャンス』なのでは、と、私は考えます。
結婚して出産し、初めて母親になった女性。
出産前は会社員としてバリバリ働いていたので、仕事のことならある程度のことはこなせる自信があります。しかし出産も子育ても初体験です。なのに生まれたばかりの子どもは自分にしがみついてくる。自分がしっかりしなければ、という覚悟を持ちつつ、不安でいっぱいです。
この状態で、夫や自分の母親や助産師さんに頼ることは、いけないことでしょうか。
むしろ頼って甘えて、どうしたらいいか知恵を授けてもらい、一時的に夫に家事を負担してもらい、夫婦で協力して子育てする状態こそが好ましいのは自明です。
初めて昇進して部下が出来た20代の男性。
ずっと平社員として自分のタスクばかり追っていればよかった時と比べ、チーム全体の成果やメンバーの負担のバランス、得手不得手などにも気を配らなければいけなくなりました。
しかし『部下を持ったらどうすればいいか』に、明確な答えを持っている20代が何人いるでしょう。
それでも「大人なんだから甘えず自分で考えろ」と上司に突っぱねられたらどうなるでしょう。
部下のためにマネージメントを学ぶ機会が損なわれ、複数の人に影響が出てしまうでしょう。
5.甘えと厳しさのバランスが重要
人は成長するにつれて、甘えられる状態から、少しずつ厳しく接される状態へ移っていきます。
いずれ自立しなければいけない将来を見据えた教育の一環です。
あえて厳しくするのは、意識しなければ本人も周囲も「つい」甘いほうへ流れてしまうことを理解しているからです。
では、ある程度自立出来て、自分で自分に厳しくする習慣が身についた大人であれば、どうでしょうか。
わざわざ周囲が厳しく接しなくても、自然に厳しい道を選択します。
逆に大人は、あえて選択しないと、甘える道を選ぼうとしないのです。
結果として「甘えることができない」上に、他者の甘えも許さない文化が生まれてしまいます。
自分に厳しくする場面と、あえて甘えて(頼って、力を借りて)大きな問題に対処する能力を育てる。そのバランスが大事になります。
大人が甘える時とは、決して自分一人の満足を得るためではありません。
そこには、周囲への責任を含めて、甘えることで自分を成長させ、周囲を守る覚悟があります。
あえて甘える選択ができることこそが、大人の強みなのではないでしょうか。
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