不登校と中学受験(23)
受験後にも続く「親の失敗」
不登校の子どもと一緒に悩んで、もう33年になります。
この間、進学塾でも38年にわたり子ども達を教えてきました。
どちらの立場も見てきました。
中学受験後に不登校になる子どもがいて、その心の傷を長年見てきたので、もう20回以上も連続でお話させていただいています。
中学受験で、なぜ、ここまでご家族が過熱してしまうのか、異常なまでにこだわってしまうのか、ということを塾の側の問題と一緒に考えてきました。
中学受験と、高校受験・大学受験との違いを考えてみた時に、一番の違いは「子どもが親の言うことを聞く」ということだと、私は思っています。
最近は、大学受験にまで親が口を出してくる、受験会場にまでついてくることが、時々、話題になります。
そんなご時世であることは少し横に置いておくとしても、高校受験、大学受験は、親が口を挟める領域が極端に減ってしまうのです。
それは当然で、子ども達も第二次性徴が始まり、体も大きくなり、精神的にも大人になってきています。
特に精神的に自立してきているので、親がどれだけ言っても話を聞いてはくれないことも多いのです。
よく中学生の保護者懇談で、「もう私の言うことなんか聞いてくれないので、先生から厳しく言ってください。」と言われます。
いつも「お母さん、それでいいんですよ。いつまでも言うことを聞いているのはおかしいです。」とお伝えするのですが、どこかで、親の言うことを聞いて欲しいと思っているのがわかるのです。
実は、ここなのです。
中学受験は子どもが親の言うことを聞くことが多いのです。
だから、「私ががんばらないいけない」とご家族がなってしまうのです。
子どもが言うことを聞くということは、下手をすると、「子どもの成績を上げてやれるのは、私しかいない」とご家族がなってしまうのです。
そこに「親が頑張らないと子どもがいい結果を出せませんよ、あなたの責任ですよ!」と中学受験大手進学塾はご家族を煽ってきます。
そうなると、「親として責任がある」となってしまうのです。
だから、「子どもの失敗」は「親の失敗」になるのです。
中学受験に失敗などないのです。
全て経験なのですが、とても経験などと思えないくらいに、ご家族が必死になります。
これがとてつもなく厄介なことなのです。
こうなると、子どもは逃げ道がなくなります。
退路を断たれるので、やるしかありません。
だから、子どもも必死になります。
ここで、子どもはあまり感じていないかもしれませんが、ご家族は、お子さんとの一体感を感じてうれしくなるのです。
そうすると、お子さんの成績が上がって、お子さんがうれしく感じることが、ご家族としても、ものすごくうれしく感じるようになり、そのことがどんどん強化されていくのです。
子どもは、ご家族が喜んでくれるので、もっとがんばろうと思うようになるのですが、いつもうまくいくばかりではありません。
うまくいかなかった時に、ご家族の落胆ぶりを目の当たりにするので、これが子どもにはものすごく辛いことなのです。
ですから、何としてもがんばらないといけないと感じてしまいます。
しかも、ご家族からも「もっとがんばらないといけない。努力が足りない。」と言われるので、自分がどれだけ辛くても、さらに努力をしようとするのです。
こうして、子どもの心が限界に向かって突っ走っていくのです。
中学受験でご家族が過熱すればするほど、やればやるほど、不合格になった時に、もうそれ以上はできない、となってしまうことがあるのです。
受験で見事、合格を勝ち取ったとして、そのあと、全く勉強をしなくなったり、親の言うことに耳を傾けることもなくなったり、ということが起こることが多々あるのです。
お母様に向かって「黙れ、喋るな、ババア!」と面と向かって親を罵る中学生がいます。
これは、男の子、女の子を問わずです。
ただの反抗期ではなく、中学受験の時の恨みが重なったものになっていることがあるのです。
こうして、中学受験の時のことが引き金で、受験後にも「親の失敗」は続くのです。
今度は、子ども達からものすごく距離を置かれてしまうことになるのです。
しかし、本当に怖いのは、こうやってはっきりと出してくる子どもの場合ではないのです。
つづく
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