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『健康優良不良少年』


インド、ヒンドゥー教の聖地バラナシ。ガンジス川の沐浴で有名なこの地がやけに気に入って、10日間ほど滞在していた時の話。

日の出、日没とともに河原で行われるプージャという礼拝を僕は毎日欠かさず見学していた。
ある朝、見学を終えちょっとした堤防の様なところに腰掛け、何をするでもなくぼうっとガンジスを眺めていると、突然背後からHey!!という声が。驚いて振り返ると5人組の少年たちに取り囲まれていた。年の頃は15.6くらいであろうか。明らかにやんちゃそうな雰囲気を醸し出している。彼らはまだまだ幼く見えるが、異国の地で独りの状況で囲まれるとなると、素直に怖い。
スマホをポケットにしまい、チャックを閉め、お金を入れているポシェットは胸の前に移し警戒レベルを引き上げる。

「I name?」「I name?」

リーダー風の少年が(この時僕の脳内は宮城リョータが三井寿を狙ったあの時と同じ回路になっている)やたらと話しかけてくる。
お前の名前何て知らないわと思いながら、警戒しつつ身振りも交えながらコミュニケーションをとると、どうやら「your name?」ということのようだ。インド人、特に若年層は英語話者が多いので戸惑ったが、砂に字を書いたり原始的なコミュニケーションを続けるうちに、どうやら僕に悪さをするために近づいてきたわけではないのだろうと感じ始めた。(僕は警戒心が強いわりに簡単に人を信じてしまう傾向にあるので一番詐欺に遭いやすい性質だろう※https://note.com/keishiro321/n/n908cc2a90fa1

打ち解け始めた証なのか、彼らは1本の煙草を回し吸いする輪に僕を入れたがった(余談だが、インドではタバコはバラ売りのものを買うのが大衆的である)。臭いで大麻でないことはわかったので、断るのも無粋と共に煙を吐く。
煙草を吹かしながら単語単語での会話にはなるが、彼らが「スズキ‼ホンダ‼」と言ってバイクで爆走する動画を見せてくれたり、アラブ系の女性を指差しながら大喜びで「ミアカリーファ!!(世界で最も有名なポルノ女優の一人)」と騒いでいるのを聞いて、万国共通で不良少年達が好きなのはタバコとバイクと女なんだなと痛感する。文化の差異と同様に人間の普遍性にも興味がある僕からするととても面白い発見だった。
PornhubもXvideoもアクセス出来ないインドで如何にしてミアカリーファ(ISILから殺害予告を受けるスケールの大きさは興味深い存在である)を知るのかという一番気になる点は言語の壁で遂にわからなかったが、話すだけでなく、僕のカメラに興味津々の彼らの撮影会が始まったりと、インドのバッドボーイズ達との交流は結果的に大いに満足いくものだった。

しかし、僕は悪ガキ共のどこか憎めない普遍性を感じながらも、日本との大きな違いに気が付いてしまった。

この時、時刻は朝6時前。不良はこんなに早起きはしない。


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