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【本要約】人を動かす

本記事は『人を動かす』(デール カーネギー著/創元社)の要約・解説の記事です。本書では、ビジネスで求められる「人を動かす」ということについて30原則にまとめ紹介しています。ビジネス書の古典として知られる本書は、時間の風化に耐えた普遍的な原則を学ぶことができます。部下を持つマネジメント層はもちろん、ビジネスマンのみならず、豊かな人生を送りたい全ての方におすすめの本になります。

▼はじめに

本書は1936年に出版されましたが、これまで世界で1500万部以上、日本でも累計500万部以上販売されている大ベストセラーです。

刊行されてから80年以上経ちますが、時間の風化を耐え、現在でもビジネスマン必読の一冊として知られています。数年でスキルが陳腐化していく現代で、本書が今でも有効なのか。それは本書が人間の変わらない本質を書いているからです。

だからこそ、未だに一線級のビジネス書として活用されていますし、今後さらに変化が激しくなる世の中でも有効であり続けます。

原題は『How to Win Friends and Influence People』で、どうやって相手の信頼を得て、影響を与える(人を動かす)ことができるかを解説します。

いわゆる「帰納法」的に作られており、過去のあらゆる偉人たちの具体的な事例をもとに、抽象化された原則について紹介されています。全4パートからなり、合計30原則が紹介されています。

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▼誰が読むべきか

まず、分かりやすいのがビジネスで人を動かす立場にある方、チームリーダーやマネージャーなどは必見です。

部下が思うように動いてくれない、チームとして成果を出したい など、人を動かす立場にある方は日々どのようにチームとしてパフォーマンスが出せるかを考えていると思います。そういった方はすぐに活用できるはずです。

さらに、人を動かすというのは、何もタテの関係だけでなく、ヨコの関係でも必要なことです。前回紹介した「採用基準」でもリーダーシップを発揮するのに役職は関係ないと言います。社内や社外の人を動かしていくのに、必要な原則を知ることができるため、全ビジネスマンに有効な本と言えます。

▼30原則を要約すると…

30原則すべて重要で、個別具体的な事例を見ながら理解することをオススメしますが、要約記事なのでぎゅっと絞って紹介します。

ぎゅっと絞ると以下です。

人を動かす.002

 1.相手を批判しない

本書に紹介される最初の原則は「盗人にも五分の理を認める」です。
また、その他にも「誤りを指摘しない」「顔をつぶさない」など、批判しないことの重要性を度々説いています。

人は社会的な生き物で第三者のことを話すのが好きです。雑談の内容も人の噂や悪口に関することが多く、今でもゴシップやワイドショーが多く見られています。
また、相対的に自分の正義を主張したいときや自分が優位に立ちたいときに相手を攻撃することは歴史的にも繰り返されてきたことです。

「人は批判が好き」これはしっかりと見つめないといけない問題です。

しかし、本書では批判をすることのリスクについて触れています。
相手を批判すると思わぬところでそれが自分に返ってきたり、相手が警戒心を抱き、信用を築けなくなるなど、相手にとっても、自分にとっても損しかありません。信用は人間関係の基盤となるもので、信用を築けない人間が良好な人間関係及び社会活動ができるわけありません。

また、人間の脳は主語が認識できないと言われています。
つまり、相手に言った批判や悪口を脳は主語が認識できないため、自分への批判や悪口として捉えます。そうすると、自己肯定感が下がるなど、自身のメンタルに大きな影響を及ぼすことが言われています。

人を批判するときというのは、多くは自分の意見と反対意見にあるときです。
そういう時に人は自分のポジションを守るため、感情的になり批判をしてしまいます。これを防ぐには相対主義の考えが有効でしょう。

相対主義とは、人によって見え方や捉え方は違うという主義です。例えば、コップに一杯の水が入っていたとしてこの水が冷たいか、温かいかはその人の置かれた環境や状況によります。極寒の地であれば、その水は温かいとなるかもしれませんし、逆に砂漠の中であれば冷たいと感じるかもしれません。このように、コップの水が冷たい/暖かいすら絶対的な尺度ではなく、人それぞれの状況や環境によって変わります。時代が変われば、正義も変わるし、法律も変わります。あくまで、今正しいとされていることもその時代の常識であることを念頭に置いて考える必要があるでしょう。

 2.上機嫌でいる

三大「幸福論」の一つを書いたフランスの哲学者であるアラン。
彼は著者の中でこう主張します。

たまたま道徳論を書かなければならないとすれば、わたしは上機嫌ということを義務の第一位におくだろう。(幸福論:P224より)

「上機嫌である」ことが人間の美徳において最も重要だと主張しています。
本書でも、「笑顔を忘れない」「穏やかに話す」など、自分の態度がどうあるべきかについて書かれております。

論ずるまでもなく、「上機嫌」でいた方が人間関係はうまくいくことは皆さんも経験の中で知っていると思います。明らかに常に機嫌が良い上司の方が好かれている人は多いですし、家庭でも機嫌が良い方が円満な家庭を築きやすいです。

以前紹介した『「仕事ができる」とはどういうことか?』でも、仕事ができる人はチャーミングであるということにも触れられていました。まさに、この上機嫌であることが仕事にも直結することが現れているのではないかと思います。

 3.褒める(相手の承認欲求を満たす)

本書の最も重要な部分です。
これまでの「相手を批判しない」「上機嫌でいる」というのは人を動かすために、自分自身はどうあるべきかについての内容でした。いよいよここからは「人を動かす」ということについての解説です。

フランスの軍人ナポレオンといえば、大勢の人を動かし、大変な成果を挙げた歴史期的な人物として知られますが、彼は人を動かすためのを以下のように説明します。

人を動かす2つのテコがある。それは恐怖利益である

現代は、ナポレオンの時代と違い、制限がない(地理的や身分的に)ので、エスケープが比較的簡単にできてしまいます。そのため、「恐怖」を使って「人を動かす」のは、難しくなってきているでしょう。もう一つの利益に着目する必要があります。

では、人間にとって「利益」とは何か。突き詰めると、それは欲求が満たされることだと思います。欲求には様々な種類があります。有名なのは、マズローの欲求5段解説です。

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(参照:https://studyhacker.net/maslow-hierarchy

マズローの欲求5段階説の詳細については参照をご覧ください。
ここに記載のある欲求を満たすことが現代の「利益」であり、本書ではこの中でい相手の「承認欲求」を満たすことの重要性を何度も説いています。

特に、現代では下位の「物質的欲求」は大多数の人が満たされており、ここをテコにするのは難しそうです。SNSの発展にも分かるように、現代で不足している欲求は「精神的欲求」側です。ここを満たしてくれる相手とは誰もが一緒にいたいと思うし、信頼できると思うはずです。

例えば、鉄鋼王アンドリュー・カーネギーは史上2番目の富豪だといわれるほどの人物ですが、彼の墓碑には「おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男ここに眠る」と書かれており、没してなお、周囲の人を讃えています。

ただ、人の承認欲求を満たすというのは何も闇雲に「人を褒めまくる」ような媚びへつらうことではありません。本書ではもっと根幹的な相手の存在を肯定することなど重要なことが書かれています。例えば、「名前を覚える」「誠実な関心を寄せる」「聞き手にまわる」などは直接的に褒めているわけではないですが、相手の存在を肯定する行為です。このことでも、人の承認欲求は満たされると言われています。

 4.相手の立場で利益を考える

この「相手の立場で利益を考える」はビジネスの大原則でもあります。

これも、先ほどのナポレオンの言葉が参考になります。
相手を動かすためにはまずは相手の利益を考える、想像力を働かせる必要があります。また、先に紹介した相対主義の考えも必要で、自分はこれが「利益」になると思っていることも、相手にとっては「利益」にならないこともあります。
あくまで、起点は相手にあり、相手の利益を考える必要があります。

また、相手の利益を考えるためには、相手が何に価値を感じているのかなど、相手を知る必要があります。相手の立場で利益を考えるための根幹には相手への興味・関心が重要です。

▼まとめ

今回はビジネス書の古典でもある「人を動かす」を要約・解説しました。

最後に、総括した感想と補足としては、
【古典を読もう】
ということを挙げさせていただきます。

【古典を読もう】
「人を動かす」を読んでの最初の感想としては、
「え、めっちゃ当たり前のことしか書いていない・・・」ということでした。

多分、普段からビジネス書を読む人間であれば、どこかしらで見たことのあることしか書いていないんですね。しかし、逆にいうと、現代のビジネス書はこういう古典をあの手この手で言い換えているだけで、根本は変わらないということです。
つまり、「大切なことは古典に全て書いている」といえます。

途中、相対主義の話がありましたが、相対主義によると絶対的な尺度はなく、時代によって価値観は変わると言われています。私はこの意見には半分同意で、半分は反対意見を持っています。確かに、時代や環境によって価値観は変わりますが、物理法則のようにもっと根幹的な部分には不変的なものがあるのではないかと思います。古典というのは時代の風化を耐えています。なぜ風化に耐えられているかというと、いつの時代も変わらない人間の不変的な部分が書かれているからではないかと思います。

私のnoteで再三触れてきたように、今後異次元のスピードで変化していく時代に突入します。そんな中で、変化を追っていくことも大事かもしれませんが、「もっと重要なのは変わる時代で、変わらないものは何か」を見極めることです。

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これは、日本のAI企業である「ABEJA」が標榜する考え方です。私はこの図はすごく大切だと思います。今回の話に当てはめると、テクノロジーは変わるもので、リベラルアーツは変わらないものを知るということです。これがどちらかではなくて、両輪回していくことが重要だと思います。

AI時代を生きるためには、より古典を知っていくの重要性を感じています。

今回の記事は以上になります。
ご一読いただき、ありがとうございました。

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