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データの力で社会問題の解決を目指す新団体、DST発足!

錚々たる企業と研究者がタッグを組んで、データの力で社会問題の解決に取り組んでいく団体、一般社団法人「Data for Social Transformation(DST)」の設立会見が、2022年12月16日(金)に都内で行われました!

会見では、DST設立のねらいに始まり、発起人メンバーのうち、以下の皆様によるトークセッションや、発起人の方々からのスピーチなどが行われました。

高島宏平 オイシックス・ラ・大地株式会社代表取締役社長
岩﨑真人 武田薬品工業株式会社 代表取締役 日本管掌
川邊健太郎 Zホールディングス株式会社代表取締役社長Co-CEO
中室牧子 慶應義塾大学総合政策学部教授
宮田裕章 慶應義塾大学医学部教授

トークセッションの様子

会見を通じて、一つの企業、一人の研究者では不可能なデータ活用・研究を推進しすることで、高齢化・人口減少が進む日本が抱える社会問題の解決に向けてさまざまな知見を出していくという、DSTの今後の活動への強い意気込みを感じました。

議論の中では、データを活用して社会問題の解決に取り組む団体として、MITのデュフロやバナジーらが中心となって貧困問題の解決に取り組む「J-PAL(Abdul Latif Jameel Poverty Action Lab)」、ハーバード大学のチェティらが中心となってコロナ禍で民間データをフル活用してさまざまなエビデンスをタイムリーに発信してきた「Opportunity Insights」など挙げつつ、DSTの活動のねらいが語られました。

DSTでは、特に「事前領域」、つまり問題が生じる前に着目して、問題を未然に防ぐことに資する施策を打ち出していくためのエビデンスの蓄積を目指します。医療や介護の分野でも、病気や介護が必要になってしまってからの研究が中心であり、そうなる前の段階で何ができるかについては、さまざまな議論が交わされてはいるものの、エビデンスはまだ不足している状態。そのため、ここに着目して新たな知見を生み出していこうという試みが計画されています。

また、中室牧子先生(慶應義塾大学)からは、

チェティらの「Opportunity Insights」は、米国でコロナの影響を誰がいつどのように受けたかを多様なデータを駆使して検証し、政策に活かしてきた。一方、日本では、十分にエビデンスを蓄積できないまま、コロナ対策や東京五輪等に関する意思決定行ってきたのではないか。
日本では医療レセプトデータを研究利用できるまでには非常に時間が掛かっている現状などをふまえると、国が開示するデータを待つのではなく、民間のデータを活用して公共政策に貢献し、公共財となるデータや分析を提示していきたい。そうして政府にもプレッシャーを掛けていかなければならない。

というねらいも語られました。

すでに始動している第一弾の研究は、「労働」にフォーカスして以下の3つ。

・人事×マッチング理論
・男性育休のベストプラクティスとその効果検証
・介護離職防止プロジェクト

男性育休のプロジェクトに取り組む山口慎太郎先生(東京大学)からは、以下のようなお話がありました。

日本は、家族政策の水準は国際的に見ても低くないどころか、むしろ高い方だが、なぜこれほど少子化が進み、傾向が収まる様子も見られないのか? その要因は、もしかしたら企業内での取り組みに不足が原因ではないか? 取り組みに対する懸念や導入しずらい要因があるのではないか? 
その1つとして、男性の育児休業に着目する。ベストプラクティスと言われる施策を導入し、その効果検証を行うことでエビデンスを蓄積し今後に活かしていきたい。

山口慎太郎先生のスピーチ(右から3人目)

企業や自治体などと協力して、繰り返しフィールド実験を行うことで新たな知見が生まれ、それが企業のマネジメントや政策に資する知見を生み出していくことが期待されます。会場には自治体や企業の方々なども多数参加されていました。

DSTの取り組みはまだ始まったばかりで、発起人メンバーを軸に、研究者や企業の参加もどんどん増やしていきたいという意気込みも語られました。新たなアプローチでビジネスや政策と研究を結ぶ取り組みとして、ぜひ注目していきたいと思います。


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