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データの力で社会の問題に迫る、計算社会科学の挑戦:『経セミ』2022年12月・23年1月号より

『経済セミナー』2022年12月・23年1月号が発売になりました! 今号の特集は「計算社会科学の挑戦」。

サイバー空間、リアル空間を問わず、いたるところにデータが蓄積されるようになり、アクセス可能なデータも爆発に増加しています。また、そのデータを活用するための技術も急速に進歩しており、その傾向は今後ますます強くなっていくかもしれません。

そんな状況の中で、データサイエンスやコンピュータサイエンスなどの分野と、経済学などの社会科学的な分析手法や問題関心の融合で注目を集める分野があります。それが、今号で紹介する「計算社会科学」です。

本号の特集では、データ&計算を軸に、多様な分野の研究者が結集し、社会・経済の多様な側面に光を当てる新分野の躍動をお伝えしたいと思います!

『経済セミナー』2022年12月・23年1月号

■ 計算社会科学の躍動を伝える特集ラインナップ

今回の特集は、巻頭の鼎談と、5本の記事でお届けします。
計算社会科学とは何ぞや? 実際にどんな研究が行われているのかを各所でじっくり紹介していきます。
コンピュータサイエンスの技術がもたらしてくれる知見、多様なデータをどう集めるか? どのように活用すべきか? といったポイントはもちろん、経済学、社会学、政治学、社会心理学などの社会科学の視点から計算社会科学に何を期待するか? どのように向き合っていくべきか? を、各分野の第一線で活躍する皆さまに解説いただきます。

具体的なラインナップは以下の通りです!

鼎談:なぜ、いま「計算社会科学」なのか?
 遠藤薫(学習院大学法学部)
 上東貴志(計算社会科学研究センター)
 鳥海不二夫(東京大学大学院工学系研究科)
計算社会科学におけるデータの収集と活用
 吉田光男(筑波大学 ビジネスサイエンス系)
インフォデミックを計算社会科学で読み解く
 笹原和俊(東京工業大学環境・社会理工学院)
政治学と計算社会科学の融合に向けて
 西川賢(津田塾大学学芸学部国際関係学科)
社会心理を計算社会科学で読み解く
 三浦麻子(大阪大学大学院人間科学研究科)
社会問題の解決に向けたインターネットの課題と可能性
 高野雅典(株式会社サイバーエージェント学際的情報科学センター)

■  なぜ、いま「計算社会科学」なのか?

冒頭の鼎談では、計算社会科学とはどんな学問なのかを詳しく解説したうえで、そこで活用されているデータや技術の特徴など、背景から詳しく解説していきます。また、計算社会科学という分野の誕生から、世界の研究者たちが何を考えてこの分野を創設し、発展させてきたのかを整理しつつ、それが日本でどのように受け止められ、どのように普及しているのかについても議論いただきました。

ご参加いただいた遠藤薫先生の専門は社会学上東貴志先生は経済学(特に経済理論)、鳥海不二夫先生は人工知能技術の社会応用、計算社会科学とさまざまで、社会科学やコンピュータサイエンスなど多角的な視点のもとで、社会に溢れるデータ、それを扱うための技術、分析のための理論の役割についてなど、さまざまなディスカッションで盛り上がりました(構成は以下の通りです!)。

1 はじめに
2 計算社会科学の誕生
3 ターニングポイントはどこにあったのか?
4 経済学と計算社会科学は似て非なる学問?
5 分野を超えた研究を促す
6 いま、どんな社会問題が注目されているのか?
7 計算社会科学に何を期待するか?
8 おわりに

特集「計算社会科学の挑戦」

なお、計算社会科学の国際学会である「International Conference on Computational Social Science」の第1回会議は、2015年にフィンランドのヘルシンキで開催されました。

https://iscss.org/

日本では、2016年に「計算社会科学研究会」が発足し、2021年に「計算社会科学会」に名称が変更されて現在に至ります。鼎談にご参加いただいた遠藤先生は、計算社会科学の会長、上東先生と鳥海先生は副会長を務めておられます。

https://css-japan.com/

計算社会科学の全体像は、鳥海先生編著で同学会のメンバーによって執筆されている『計算社会学入門』も参考になります! 学会ホームページ内にある本書のサポートサイトでは、補足資料やデータセットのリンク集など、さまざまな情報が提供されています。

■ 計算社会科学では何を、どのように分析する?

ここでは、続く特集記事5本の概要をご紹介します。各記事では、その内容はもちろん、有益な情報源や参考文献、参考ウェブサイトなどの紹介も盛りだくさんです。ご寄稿いただいた先生方のご専門もさまざまで、計算社会科学という新分野の躍動を感じていただけるのではないかと思います!

吉田光男先生(筑波大学ビジネスサイエンス系准教授)には、「計算社会科学におけるデータの収集と活用」と題した記事をご寄稿いただきました。
ICTやIoTの発達により、私たちの活動に関する詳細なデータがネット上のみならず、実世界にも残るようになっていますが、こうした大規模なソーシャルデータの特徴や留意点はどこにあるのか? データの種類、収集・活用方法から倫理的課題までを解説いただいています。

笹原和俊先生(東京工業大学環境・社会理工学院准教授)には、「インフォデミックを計算社会科学で読み解く」という記事で、トランプ氏が当選した2016年のアメリカ大統領選挙、新型コロナパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻などで問題となっているフェイクニュースや陰謀論などによる誤情報の氾濫という問題に向き合う研究をご紹介いただきました。
本稿では、社会に深刻な影響を与えうる「インフォデミック」の実態を定量的に理解し、対策を講じるための取り組みの最先端に迫ります(関連するテーマで、笹原先生の以下のご著書も参考になります。ぜひ!)。

3本目の記事は、西川賢先生(津田塾大学学芸学部国際関係学科教授)のご執筆です。西川先生のご専門は政治学。「政治学と計算社会科学の融合に向けて」と題した記事で、多様な方法論が共存する政治学で、いま、計算社会科学がどのように取り入れられているのかを解説。
計算社会科学が、政治学の重要課題にどのような知見をもたらしているのかについて、そこで活用されるデータや分析手法とともに、最先端の研究成果を紹介します。

社会心理学がご専門の三浦 麻子先生(大阪大学大学院人間科学研究科教授)には、「社会心理を計算社会科学で読み解く」という記事をご寄稿いただきました。
2020年1月からスタートした「【大阪大学】新型コロナウイルスに関する心理学調査」という大規模社会調査に基づく研究成果を軸に、コロナ禍での社会心理に関する「スナップショット」を辛抱強く撮り続けることの意義、そこで得られた知見を解説いただきました(調査の主要項目の平均値などは【コチラ】でも公開)。
また、さまざまな大規模データがオープンな形で共有されることの意義と、そこでの計算社会科学の可能性についても議論します。

最後の記事は、高野雅典先生(株式会社サイバーエージェント学際的情報科学センター)による「社会問題の解決に向けたインターネットの課題と可能性」です。
インターネット上では多様な社会問題が可視化・増幅される一方で、インターネットを通じてこそ可能な対策や取り組みもあります。本稿では、ビッグデータと社会科学を接続する計算社会科学が、どのようにインターネットと社会の問題を解明できるのか、また、対策を考えるどのようなヒントを提供できるのか、具体的な研究事例を豊富に紹介しながら解説いただきました(約50本もの研究が、明快に整理されています驚)。
なお、サイバーエージェント様のウェブサイトでも早速ご紹介いただきました!

■ おわりに

以上、『経済セミナー』2022年12月・23年1月号の特集「計算社会科学の挑戦」の内容をざっくりとご紹介しました。タイトルの通り、新分野への期待感、躍動感を存分に感じていただける内容で、経済学をはじめとする社会科学分野にどのようなインパクトがあるのかなど、さまざまな示唆をお届けできると思います。ぜひお手に取ってご覧ください!!

特集に加えて、今号からは新連載として、小西祥文先生(慶應義塾大学)による「新しい環境経済学 実証ミクロアプローチ」がスタートしました! 詳しくは以下のnoteで紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。


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