見出し画像

2023年度 日経・経済図書文化賞 受賞!―廣光俊昭『哲学と経済学から解く世代間問題』

廣光俊昭 [著]『哲学と経済学から解く世代間問題が、
2023年度 日経・経済図書文化賞を受賞しました!

日経・経済図書文化賞は、日本経済新聞社と日本経済研究センターの共催で、過去1年間に刊行された経済図書の中で特に優れた図書に贈られるものです。2023年度・第66回の日経・経済図書文化賞は、以下の5点が受賞しました。

【第66回 受賞作品】
宇南山卓 著『現代日本の消費分析』(慶應義塾大学出版会)
室岡健志 著『行動経済学』(日本評論社)
東島雅昌 著『民主主義を装う権威主義』(千倉書房)
竹林史郎 著『歴史学派とドイツ社会学の起原』(ミネルヴァ書房)
廣光俊昭 著『哲学と経済学から解く世代間問題』(日本評論社)

https://www.jcer.or.jp/about-jcer/bunka

日本経済新聞、および日本経済研究センターのホームページでは、賞の講評、各書籍の審査員による評価、著者の受賞のことばなどが掲載されています。

本書哲学と経済学から解く世代間問題の書評(井堀利宏先生ご執筆)と、廣光俊昭先生による受賞のことばは、以下よりご覧いただけます!

審査委員の井堀先生による書評

廣光俊昭先生による受賞のことばコチラからご覧いただけます

廣光先生による「受賞の言葉」

また、受賞5冊と選考で議論になった主な書籍を含めた、吉川洋先生による「総評」もコチラからご覧いただけます。

吉川洋先生による「総評」

この note では、廣光俊昭 [著]『哲学と経済学から解く世代間問題の内容などをご紹介したいと思います!

■ 担当編集者による紹介

日本では、特に財政・社会保障や自然資源など、現在の世代と将来の世代の間でバランスを考えなければならない喫緊の課題が山積しています。本書は、そのような課題に重要な示唆をもたらす一冊です。

以下は、担当編集者による本書の紹介です。このような重要な課題に挑む本書の特長を明快に解説しています。ぜひご覧ください!


気候変動や公的債務の累積といった超長期的な問題において、異なる世代間の利害はそのように調整されるべきでしょうか。本書は、まだ生まれていない人々を含む異なる世代の間に成り立つべき倫理とその実現方法について、哲学をもって概念化し、経済学をもって展開し、実験によって検証した意欲作です。

本書の最大の特徴は、哲学と経済学を接合させたことです。哲学の関心は、一定の理論的枠組みを参照しつつ、私たちの負う道徳上の義務や価値についての新たな解釈を提示することにあります。他方、経済学は、一定の義務や価値を所与としつつ、それに基づいて行動する人々の相互作用の帰結を明らかにすることに長けています。本書では、哲学的思考を通じ世代間倫理のあるべき構想を提示しつつ、その経済・社会的帰結を経済学モデルにより明らかにしました。具体的には、第2章において、異なる世代間に互恵的関係が成立することを示しました。

第二の特徴は、経済実験の活用です。実験の導入により、哲学と経済学の理論上の可能性に議論を留めず、現実に起こり得ることにまで分析の射程を伸ばしました。具体的には、まず第3章で世代間関係を模した実験室実験を行い、公共的互恵性のもとで世代間協力が可能となるものの、協力の程度は必ずしも十分とはいえないことを示しました。その示唆を制度と政策の提案に活かすべく、第4章では、長期の財政政策の選択肢を被験者に提示し、被験者間で熟議する実験を行い、現世代のみによる熟議は必ずしも望ましい政策決定を促すとは限らないこと、仮想の将来世代との熟議を通じ、現世代の政策選好が変わりうることを示しました。

第三の特徴は、各世代の選好を必ずしも固定的なものとはしないことです。経済学では通常は安定的な選好を前提としますが、本書では選好が内生的に決まる状況を、単に理論的可能性としての指摘にとどまらず、経済実験による実証的裏付けとともに提示しています。

また、ここまでの議論は、現在と将来の出来事を等しく処することを前提としていましたが、第5章では、それが本当に可能で望ましいことなのかという基本的論点についても、アローの「道徳律の相互矛盾」の観点から検討を行っています。結論として、現在と未来の出来事を平等に処遇することは可能で、支持にも値することが導かれました。

行政機関で活躍しながら学術研究に取り組む廣光氏ならではの、理論は現実の政策に活かされてこそ、政策は理論に裏づけられてこそ意味があるという強い信念が垣間見える、比類なき一冊です。

ぜひご一読いただければ幸いです。


■ 各紙・誌での書評も!

本書:廣光俊昭『哲学と経済学から解く世代間問題』は、すでに複数のメディアで書評記事を掲載いただいています。それぞれ、以下でリンク付きで紹介していますので、あわせてぜひ、ご覧ください!

齋藤誠 先生(名古屋大学大学院経済学研究科教授)による書評
週刊エコノミスト』2022年11月29日号掲載

小黒一正 先生(法政大学経済学部教授)による書評
経済セミナー』2023年2・3月号掲載

亀田達也 先生(東京大学大学院人文社会系研究科教授)による書評
社会心理学研究』第38巻第3号掲載

鈴木恭人 先生(独立行政法人住宅金融支援機構監事)
ファイナンス』(財務省広報誌)2023年4月号掲載

https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202304/202304k.pdf

■ 詳細目次

廣光俊昭著『哲学と経済学から解く世代間問題』

第1章 序論
1.1 世代間問題
1.2 研究史における位置づけ
1.3 世代間問題における課題と本書のアプローチ
1.4 各章の構成

第2章 世代間倫理における責務と互恵性
2.1 はじめに
2.2 責務としての世代間倫理
2.3 責務としての世代間倫理の問題点
2.4 世代間における互恵性
2.5 世代間における直接的な互恵性
2.6 結論と残された課題

第3章 公共的互恵性に基づく世代間協力の展開:カントの定言命法を通じた世代間協力
3.1 はじめに
3.2 先行研究と本章の方法
3.3 世代間協力の可能性と困難
3.4 経済実験
3.5 カントの定言命法を通じた世代間協力
3.6 結論と残された課題
補論1 世代間交渉
補論2 世代間問題におけるパーソナリティの役割

第4章 複数世代に関わる政策決定において考慮すべき事項の考察:財政に関する経済実験を通じた検討
4.1 問題意識
4.2 本章のアプローチと先行研究
4.3 財政政策の決定に関する実験
4.4 解釈
4.5 長期の財政問題の解決に向けて考慮すべき七つの事項
4.6 気候変動など複数世代に関わる政策決定全般において考慮すべき事項への一般化
4.7 結論と残された課題
補論3 未来人になることで人々は何を語り出すか
補論4 長期の財政問題の構造

第5章 現在と未来の出来事を等しく処遇することの意義:時間割引について
5.1 問題の所在-ケネス・アローによる「道徳律の相互矛盾」から
5.2 平等処遇原則と両立可能な時間割引
5.3 後続する決定主体の介在
5.4 自然的危険(hazard)
5.5 功利主義からの離反と時間割引
5.6 結論と残された課題

第6章 結論
6.1 総括
6.2 さらなる研究の展望
6.3 おわりに:いまだ生まれざる者を道具としないこと

電子書籍はこちらから ↓


  • 実は、2023年度の日経・経済図書文化賞、日本評論社から2冊を選出いただきました。もう1冊は、以下の note で紹介しています。ぜひあわせてご覧ください!


この記事が参加している募集

推薦図書

サポートに限らず、どんなリアクションでも大変ありがたく思います。リクエスト等々もぜひお送りいただけたら幸いです。本誌とあわあせて、今後もコンテンツ充実に努めて参りますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。