MBAでの学び⑥「ファイナンスはギャンブルである」
私たちはお金に関して、常に意識しているはずです。しかし、実際は多くの場面でお金に無意識になっていないでしょうか。
毎日何かを買ったり、サービスにお金を払ったりしますが、ちょっとした選択が、ずっと先の未来まで影響を及ぼすことがあります。
お金に関する決断はとても大事ですが、無意識のうちに行ってしまいがちです。
ファイナンス理論というのは、そういう毎日の小さな選択をもっと上手にこなすためには役に立つツールになります。また、この理論は時に、大きな事態を引き起こすのを防ぐこともあります。
たとえば、水原通訳の事件のように、大きな信頼と責任を背負っていた人物が、ギャンブル依存により不正な行動に出てしまいましたが、彼がファイナンスに関する知識を持っていれば、どうだったのでしょうか。
この事件を含め、日々の意思決定におけるファイナンス理論の影響を、この記事で掘り下げていきます。
ファイナンス理論とギャンブル
ギャンブルと経済理論、一見無関係に思えるかもしれませんが、実は密接な関連があります。
特に、「リスク管理」と「確率」は、ギャンブルだけでなく、私たちの日常生活における経済活動にも大きな役割を果たしてくれます。
リスク管理:賢くリスクを取る
ギャンブルでは、何をどのタイミングで賭けるかが重要です。投資と同様に、リスクを適切に管理するのが成功の鍵というのは、皆さんも理解できるのではないでしょうか。
例えば、ポーカーでは、いつどのカードで勝負するかが重要ですが、それは投資の世界でも同じです。
「ブラフ」のような高度なスキルも、戦略として有効です。
ブラフとは、あるプレイヤーが悪い手を持ちながら賭けを大きくして、相手を降ろさせることです。それに成功すれば、リスクを取った分だけ大きなリターンを得ることができます。
ブラフは、新しいビジネスに投資する際のリスク管理に似ています。適切なタイミングと情報に基づいて大胆な決断を下すのは「ハイリスク」ですが、成功したときのリターンは大きく「ハイリターン」になります。
「ハイリスク・ハイリターン」は投資の世界もギャンブルの世界も同じなのです。
経済学では、こうしたリスクの取り方を「リスク許容度」と呼び、個々の経済的な選択に大きく影響します。
確率と統計:ギャンブルで勝つ確率を知る
ギャンブルの勝敗はしばしば確率に左右されます。
例えば、サイコロの各面が出る確率は一定ですが、カジノゲームではその確率を知ることが勝つためのカギとなります。
カジノのルーレットは、確率の理解が重要なゲームといえます。
赤か黒に賭ける場合、勝つ確率はほぼ半分ですが、0が出ることでカジノ側に有利な偏りが生じます。
ちなみに、ヨーロピアンルーレットは単一ゼロ(0)を含む37個の数字があり、アメリカンルーレットは二重ゼロ(0と00)を含む38個の数字があります。
以下の表は、ヨーロピアンルーレットとアメリカンルーレットの主要な賭け方の勝利確率を示しています
ここでの「勝利確率」とは、賭けた結果としてその賭け方で勝つことができる確率のことを指します。
この表から、賭け方によって勝利の可能性がどれくらいあるのか、一目で分かります。
また、確率の計算においては、ヨーロピアンルーレットの方がアメリカンルーレットに比べてプレイヤーにとって若干有利であることが示されています。
これらの確率を理解しておけば、どのような賭け方が自分にとって最適かを判断する手助けになります。
私たちは、日々の生活でこのようなリスクに対する一覧表を頭に入れておくべきかもしれません。
確率を理解することは、日常生活での保険の選び方にも活かせます。
例えば、自動車保険に加入するとき、どの保険が最もコストパフォーマンスが高いかを判断するには、年齢、車種などによって変動する交通事故の確率と潜在的な損失を考慮すれば、良い選択ができるかもしれません。
そう考えると、ギャンブルはファイナンス理論の視点から見れば、リスクと確率を学ぶ非常に興味深い場といえます。
ファイナンス理論を活用することによって、私たちは賢い選択ができるようになるかもしれません。
行動経済学とギャンブルの誤謬
行動経済学は、経済行動が常に合理的ではないという観点から、人々の意思決定プロセスを研究する学問です。
ギャンブルにおいて、頻繁にみられる非合理的な行動、いわゆる「ギャンブラーの誤謬」は、経済行動における一般的な誤りの一例です。
ギャンブラーの誤謬
ギャンブラーの誤謬とは、過去の結果が未来のイベントに何らかの影響を及ぼすと誤って考えることです。
例えば、ルーレットで何回か連続して赤が出た後、次も赤が出る確率が高くなると考える人がいます。
しかし、実際には1回のルーレットは独立して回っており、確率は常に同じです。
このような誤解は、投資の世界においても同様に見られます。過去の株価の動きによって、未来の動きを予測できると信じる人々が時々います。
確証バイアス
確証バイアスは、自分の持っている信念や、仮説に基づく情報を好んで選び、それに反する情報は無視する思考です。
ギャンブルでは、数回の勝利が「自分の選択の正しさを証明している」と感じることがあります。
同様のバイアスが、ビジネス決定や政策の選択においても問題になることがあります。
いわゆる過去の成功体験といったものが、それに該当します。
時代も環境も常に変化している中で、再現性の高いビジネスが簡単にできるわけがありません。
しかし、過去の成功体験に縛られるのは、皆さんの組織でも、よくあることではないでしょうか。
損失回避:損失を避けるための不合理な選択
人は損失を非常に嫌います。そのため、損失回避の不合理な選択をして、さらなるリスクを取ってしまうことがあります。
カジノでの損失を取り戻すため、さらに多くのお金を賭けるのは典型的な例です。
この行動は、企業が失敗したと考えられるプロジェクトに、さらなる資金を投じる「サンクコストの誤謬」とも密接に関連していると思います。
水原通訳のケーススタディ
水原通訳の事件は、ギャンブル依存がいかに深刻な結果を招くかを示す衝撃的な例の一つだと思います。
申し訳ないですが、彼の行動はファイナンス理論と行動経済学の観点から、私たちに多くの学びを提供してくれます。
事件の概要
水原通訳は、メジャーリーグの大谷翔平選手の通訳として働いていましたが、私的な賭博のために選手の銀行口座から不正に約1,600万ドルを送金しました。
この行為は、彼のギャンブル依存が原因で起こり、最終的にはアメリカの捜査当局によって詐欺の疑いで訴追されています。
ファイナンス理論の適用
水原通訳のケースでは、リスク管理の失敗が明らかです。
彼は、短期的な利益(ギャンブルでの勝利)を追求するために、長期的なリスク(逮捕されるリスク、信用失墜など)を無視しました。
ファイナンス理論では、リスクとリターンのバランスが重要ですが、彼の判断はこのバランスが大きく崩れていたことを示していると思います。
ファイナンス理論上、「ローリスク・ハイリターン」というものは、この世に存在しません。
高額な当選金を得るには、大きなリスクを許容しなければいけません。
簡単に「儲かる」ものほど、高いリスクを取らなければいけないと、私たちは理解しておくべきでしょう。
行動経済学から見る動機
行動経済学の観点から見ると、水原通訳の行動は「損失回避」と「バイアス」によって説明できます。
彼は過去のギャンブルの損失を回復しようとして、さらなるリスクを冒す行動をとりました。まさに、損失回避の心理が働いていたといえます。
また、自分が状況をコントロールできるという過信が、彼の非合理的な決定を後押しした可能性があります。
つまり、大谷選手からの信頼があったため「なんとかなる」という正常性バイアスが働いていたといえます。
まとめと学び
この記事を通じて、ギャンブルを例にしてファイナンス理論と行動経済学の基本概念を探ってみました。
両方の理論は、ただの学問ではなく、日常の意思決定にも直接的な影響を及ぼすものだと考えます。
ファイナンス理論は、リスクとリターンを適切に評価し、資産を効果的に管理する重要性を教えてくれます。
投資、貯蓄、さらには日々の消費行動に至るまで、この理論は私たちが賢い選択をするのに非常に役立つと思います。
いずれ、ファイナンスについては専門分野なので、分かりやすい記事を書いてまとめていこうと思っています。
また、行動経済学は、私たちが時として非合理な決定を下す理由を明らかにしてくれます。
ギャンブラーの誤謬や損失回避などの概念を理解すれば、自分たちの行動に対する洞察を深め、より合理的な選択ができるようになるのではないでしょうか。
水原通訳の事例からは、損失回避の心理がもたらす大きなリスクを理解できたのではないでしょうか。
今後、皆さんが決断を迫られる場面で、今回の記事が何らかの形で役立つことを願っています。
理論を学ぶことは重要ですが、それを実生活に活かすことがもっとも価値のある行動になると思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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