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社長や取締役が長く会社に居座れるのには理由がある

この間、取締役と執行役員の違いを紐解きながら日本企業は会社の監督者と経営を遂行する人で役割を分けるべきかということについて記事を書いた(下部にリンク貼っておきます)。

今回は取締役と取締役会の関係について多くの企業は課題感がある。そんな課題感をシェアしたいと思って、なるべくわかりやすく書いてみる。

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まずはじめに株式会社における株主は普通は事業には口出しはせず、自分の代わりに会社を運営する責任者を任命する(創業家が経営している会社は別)。その株主に任命される人たちが取締役だ。

取締役は株主から任命された人たちで、多くの場合は業務をスムーズに進めるためにリーダーを代表取締役と言う形で決める。これは一人である必要はないが一人の場合が多い。

取締役は会社の社員ではないので本来は単年度契約ということになる。実際の事業の執行はサラリーマンの頂点といえる執行役員が担うことになる。執行役員社長や事業部門長が会社の事業を引っ張るというのが本来の株式会社の仕組みとなっている。

ところご、大半の会社は執行役員になったあとにその中から取締役が決まったりすることが多いので、取締役も昇格のポストのように扱われている会社が大半だといえる。

執行役員は社員のトップでありながら株主から任命された取締役が専任するので、体の半分は株主側の人たちという言い方もできる。

■取締役と取締役会の関係

どんな会社にも取締役会というものがある。会社にいて「なんか今日は会社に偉い人がウロウロしているなぁ」とか、なんか雰囲気重いという日があればだいたいその日は取締役会があったりするものだ。

株主総会というのは取締役会とはまったく違うイベントで、株主から派遣された取締役が株主に対して業績などを報告する場であって、株主が取締役を選ぶのもこの株主総会で決まる。実務的な意思決定は株主総会ではされず、会社法に則って役員の選出とか配当とかあまり面白くはないことが議題となっていることが多い。

株主総会とは違って会社の実務的な意思決定をするのが取締役会という立て付けになっている。株主から経営を委任された取締役が取締役会を開いて重要な意思決定をしている。

そこまで重要ではない(現場にとっては重要だが)テーマについては経営会議や営業会議、投融資会議など会社の中の仕組みで意思決定をしている。

会社によっては取締役が社外が多いと素人ばかりで意思決定ができなかったり煩わしいという裏の理由があるかないかは会社によって違うが、迅速な意思決定をするために経営会議を別途開いている会社が多いのが実態だ。

■なぜ取締役は長い期間居座れるのか

なんであんな人が何年も取締役やっているだという話は社内の雑談の定番のネタである。給料をいくらもらっているかはだいたい社員も回りめぐって知っているものだし、普段の行いと給料のギャップから大半の取締役はあの人はどうだとかこうだとうか、とにかくネタにされている率は高い。

本来、取締役は株主から任命されている以上は会社の責任を全て担っており、特に代表取締役社長は、取締役会が決めたことを実行し、対外的に会社を代表することが主な役割なので責任は重いはずだ。

ところがそういった緊張感を取締役から感じることはあまりない。自分のプライドや威厳を示さんとばかりに偉そうにしている人はいるし、独特のオーラを発していたり、バリバリできる能力の高い人もいる。周りがヘーコラしてふんぞりかえっている人もいるし、とてもフランクで取締役とは思えないようなできた人もいたりするので実に様々なタイプがいる。

そういった色々なタイプこそいるが、社内的な社長からのプレッシャーは相当あるかもしれないが、何か外部から全員がプレッシャーを受けている感じはどの会社にいっても感じることはあまりない。

立てた計画に対して実績が未達だろうが、色々と不祥事があろうが基本的には続投している例も多い。

どんなに業績が悪くても年がら年中役員コンペでゴルフしたり飲みにいったり海外出張と称していろいろなところに遊びにいったりしていたりする例も多い。残業禁止や経費にはうるさい割に自腹は切らなかったり、自分たちは良いお店にいって役員経費を使いまくったりしている場合も珍しくはない。なにか問題が起きたら担当者を決めたり、責任者にいくらでもなすり付けられる。

結局は取締役もサラリーマン気分で仕事をしていて、社長に従わざるを得ない仕組みができあがっているとしか言えず、オーナー企業ならまだしも、上場企業でも取締役はサラリーマンであって内部から上がってきた人が大半なのだ。

こうなるととても理屈は簡単で、サラリーマンであれば上司に逆らえないという感じで社長が君主で取締役に引き上げてくれた恩義もあることから緊張感は生まれるわけはないのだ。

■なぜ取締役の交代が簡単ではないか

こんな人が取締役かと思う人がいたり、ポストがあくまで待っている幹部が山のようにいて上はポストが埋まっていてなかなか人員の新陳代謝が進まないといった話は山のようにある。

こういった問題がどこにあるか大きく問題は3つある。

1.任期がない

基本的に自分たちで会社のルールに定めない限り取締役には任期がない。よっぽどの不祥事や倒産の危機があれば別だが居座ろうと思えばいつまでも居座れるのだ。

相撲の世界は横綱になると自分で引退を決めるまでやれるという例がよく引き合いに出されるが、横綱も審議委員会はある。

取締役はいったんポストについてしまえば体調不良や自分から辞めると言わない限りは安定しか高い報酬と役員待遇という甘い蜜を吸い続けることができる。

ぼくもそういった待遇を非難しているわけではなく、仕事に見合った報酬であればもっと高くても良くて、社員の憧れや尊敬される対象としていてほしいと思っている。実際にはそうではない人が多いからちょっと批判的になってしまうが、それが多くの日本企業の緊張感のない上層部の状況を示しているといえる。

会社によってはある時期に心ある経営者が任期を自ら3年とか5年とか設定する人がいるが、そういう人がいないかぎり政権交代は実現しない。

2.株主総会がチェック機能を果たしていない

株主総会に出たことがある人はいるだろうか。最低の100株持っていれば株主総会にはでられる。一度出てみると雰囲気はわかるかもしれないが、ほとんど機能していない印象を受けるだろう。

事前に委任票などで採決の必要はないし、かなり儀式的に終わっているのが現状である。事前に決めたテーマしか扱うことはできないし、質疑応答もすべて会社は答えを用意していてただのセレモニーに近い。

大きな問題があって例えばレオパレスとか大塚家具とか、はたまた派手なソフトバンクとかの株主総会であれば別だが普通の会社の普通の株主総会は形骸化しているのが実態だ。

3.経営会議は全権を代表取締役社長が掌握している

これは地味に重要な点である。会社の意思決定については前述の通り取締役では機動力をもってスピーディーに対応できない事実はあって、別途経営会議という意思決定機関を月に一回か二回やっている会社が多い。

ここでの問題は経営会議は社長が全権を握っており誰からのチェックもなく意思決定をできるという点にある。社長の目利きが常に正しいとは限らないし、現場では投資すべきではないと思っている案件も社長の一存で検証不足のまま投資に踏み切ったりしてしまう。

もちろん事前に投資委員会、開発テーマ決定会議などの現場レベルの会議体はあるのである程度スクリーニングされている前提はあるが、現場にあれこれ自分で指示を出すタイプの社長だと誰も逆らえないし、意見をいうことはできないというリスクがあるといえる。

■株主側のチェック機能不全について

このように様々な理由で取締役はポストに長く居座れるし、上場企業でありながら社長も自分の独断で色々な意思決定ができるところに問題がある。

本来は取締役は株主が任命し、取締役会が代表(つまり社長)を決めるという外圧があるはずなので、だらしがないダメな内向きな経営者は排除されるはずだがそうはなっていないのはなぜか。

それは株主側にも問題があるからといえる。

株主がもし株の売買による経済的な利益しか興味がなく、議決権の行使に関心がないと株主総会は完全に形骸化する。

自分が買った株があがるか下がるかにしか興味がなくてその会社がどうなろうと利益だけあげていれば良いという考えを株主や株式市場がしていると会社の中のことにはまったく興味がない状態が生まれる。

また、多くの金融機関が上場会社の株を持っているが一方で銀行から借金をしてもらっている以上強いことは会社にはいえない。

■アクティビストの外圧は劇薬

こうなると株主総会はまったく意味のない茶番になり、そのため取締役は絶対的に安泰な非常に強い立場となり取締役を束ねる代表取締役に権限が集中するという構図が出来上がるのだ。

結局株主が任命する権限があるにもかかわらず株価にしか興味がないということが大きい。

なのでアクティビストやファンドのような積極的に会社を変えようとするを企業が現れる。彼らはダメな会社ほど経営者を変えて構造改革すれば儲かると知っているのでそういう企業を見つけたら狙い撃ちをする。彼らは容赦なく人を整理するし財務を良くするために借金ズブズブの会社にされたりするのだ。

ある意味でこういった企業に目をつけられた時点で、それまでのその会社の経営者は失格と言うこともいえる。会社の価値をあげてしっかり株式市場でリターンをあげていればハゲタカに狙われることはないのだ。

そういったアクティビストを恐るのは会社を私物化する経営者たちであり、敵対する構図にはなるが社員としてはどちらを応援すべきか考えさせられる。

社員や金融機関などは外圧で会社を変えようとするアクティビストとは利益が重なる場合も多い。会社が変われるきっかけになるからだ。金融機関はお金を借りて欲しいと思っているから企業が自社の価値を上げる活動をもっとしてほしいと思っている。

ただアクティビストは劇薬でもあり会社をめちゃくちゃにされるリスクもある。株価をあげるためのファイナンスの改善や会社分割などはやるが、事業の中身までタッチすることはないので、社員にとって本当に良いかは気をつけないと痛い目をみる。彼らはボランティアではなく利益を狙うことを第一に考えているということは忘れてはならない。

■社員が求める経営のチェック機能の実現可能性

このように、外圧が株式市場からない以上、経営者は会社を自由にすることができるという問題点がある。

社長を変えるにはどうしたら良いか。社長が元凶だとしたらどうぼくらは社長を変えられるのか。これは経営企画で働くものや、会社を変えたいと思っているのに社長が理由で変わらない会社の共通の悩みといえる。

経営のチェック機能、内輪の理論だけで将来の価値を毀損していないか、課題を年金問題のように先送りしていないか。

開かれた経営、社内政治に毒されない経営、責任転嫁せず全員で前に向かって進む経営、いざというときは自分から身を切る経営。

結局は経営者の課題意識、取り組み姿勢、オープンさ、公平さ、耳の痛いことも聞き入れる度量などによってしまうのがつらいところである。

ぼくらは日々の提案しかできない。チャレンジすら諦めた人が多い中で志を保つのは難しい。

それでも明日は信じよう。


keiky.

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